第56回日本作業療法学会

講演情報

企画セミナー

[C-1] 企画セミナー1 ロボットと作業療法研究会

2022年9月16日(金) 17:00 〜 18:00 第3会場 (Annex2)

連絡担当:南 征吾(群馬パース大学),司会(コーディネーター):小林 隆司(東京都立大学)

[G-12] 企画セミナー1:重度片麻痺上肢に対する合目的的活動と電気刺激療法の実践 -在宅訪問によるアプローチ-

南 征吾 (群馬パース大学リハビリテーション学部作業療法学科)

 脳卒中重度片麻痺上肢は一般的に, 入院中には十分な機能的な動作の回復には至らないとされています
(Hendricks,2002).重度片麻痺上肢のある人は,回復過程の途中で自宅に退院するため,治療の継続を期待しています.
しかし現実は,挑戦と失敗の経験が繰り返され,手を動かす機会が奪われていき慢性的な重度麻痺側上肢が作り上げられます.我々は,患者やその介護者にさらなる負担をかけることなく,自宅で高度なリハビリテーションを提供する効果的なひとつのプログラムを開発しています.このプログラムは,合目的的活動を基礎とした電気刺激療法です(合目的的電
気刺激療法:purposeful activity-based electrical stimulation therapy, PA-EST).
 PA-ESTは,慢性脳卒中患者の重度片麻痺上肢を中等度の補助的上肢に持ち上げる,もしくは上肢片麻痺を緩和するために考案された短期リハビリテーションプログラムです(Minami et al,2020 a, b).なお,非麻痺側の活動を抑制せず両手動作につなげていき,筋電気刺激も1回に20分以内で1日60分までとし,週3回以上としています.このプログラムの実施の効果について,重度の上肢片麻痺を有する慢性期脳卒中患者の運動機能,麻痺上肢の使用,目標の達成においてストレッチ/エクササイズよりも有効である可能性が示されています.(Minami et al,2021 a)またこの介入は,聴性事象関連電位を用いて評価され,重度上肢麻痺側患者においても,患者をとりまく環境や意図した行動の意思により一定の認知処理速度の向上が示されています(Minami et al,2021 b).介入方法は,大きく3つのStepに分けられ,重度麻痺側上肢の緩和につながっています.この実践方法を紹介させていただきます.
 本セミナーでは,慢性脳卒中の重度片麻痺上肢に対して,本人の動機や習慣,役割を整理しながら,自分の存在をあらわせるような作業に焦点をあてた事例を紹介いたします.これらの実践事例の情報を共有させていただき,慢性脳卒中の重度片麻痺上肢のある人に対する,補助的上肢へむけた介入について,ディスカッションできたらと思います.私たちの実践は重度片麻痺を対象とし,彼らの生活適応力を上げて,CI療法やIVIS療法などの効果的な治療につなぎ,さらに豊かな生活を過ごせる機会を提供できればと考えています.