第56回日本作業療法学会

講演情報

企画セミナー

[C-7] 企画セミナー7 臨床家・教育者のための生活リスク・コミュニケーション研究会

2022年9月17日(土) 16:40 〜 17:40 第2会場 (Annex1)

司会(コーディネーター):大浦 智子(奈良学園大学)

[G-18] 企画セミナー7:作業療法の臨床場面で活用できる新しい危険予測ツールTP-KYTの紹介と活用

有久 勝彦1, 林 亜遊2, 林 辰博3 (1.国際医療福祉大学 福岡保健医療学部, 2.大阪医療福祉専門学校, 3.大阪医療福祉専門学校)

 作業療法場面における医療事故で最も多いのは転倒・転落である。領域別にみても身体障害・精神障害・発達障害、どの領域においても医療事故の発生数1位は転倒・転落であり、その対策は必須となっている。転倒・転落の要因として環境や設備機器の問題はもちろんあるが、それ以上に多いのは「確認を怠った」、「判断を誤った」といったヒューマンエラーと呼ばれる要因となっている。主要な事故の80 ~90%はヒューマンエラーによって起こるといわれているように、作業療法場面においてもリスクを軽減していくためにはシステム面の改善のみならず、作業療法士個人のヒューマンエラーをいかに改善していくかを考えなければならない。
 ヒューマンエラーへの対策として、Kiken Yochi Training(KYT)が医療現場や介護現場にてよく利用されている。危険予知は、患者の安全性を改善する上で重要な役割を果たすが、危険予知に使用される評価のほとんどは、患者が転倒する可能性を数値化するような患者側のリスク要因のみを評価するものであり、医療事故の多くの要因を占めるヒューマンエラーに対する評価とはなっていない。また、KYTについても標準化された効果検証ツールは今回紹介する評価の他に存在していないのが現状である。
 そこで今回の企画セミナーでは、KYTの効果検証ツールとして、タイムプレッシャーの要素を適応させることで医療従事者の危険予知能力を定量化できるTime Pressure-Kiken Yochi Training 効果測定システム(TP-KYT)を紹介する。その中で、脳血管障害やパーキンソン病などの病態から起こるリスクを捉え発見する能力、及び環境の違いから起こるリスクを捉え発見する能力を養う体験を実施する。また、評価のみに言及せず、リスクへの新しいアプローチとして生活リスクに焦点を当てた教育方法についても提案する。参加者は本企画セミナーに参加することにより、医療従事者側の危険予知能力の評価の理解から管理運営としてリスク教育を実践できる手段を学ぶことができ、翌日からの医療安全教育に役立たせることができる。
【シンポジウム企画】
1 TP-KYTの紹介と病態や環境から考えられるリスクを発見する体験 
2 TP-KYTの具体的活用方法の理解 実際の冊子を用いて、医療施設で応用する手段を紹介する。
3 生活リスクに焦点を当てた教育方法の紹介
 学生教育の中で実践した成果について紹介し、職場の利用の可能性について検討する。
 また、これらの報告を基に、協会員から広く意見交換をする場を設ける。