第56回日本作業療法学会

講演情報

企画セミナー

[C-14] 企画セミナー14 循環器臨床作業療法研究会

2022年9月18日(日) 10:50 〜 11:50 第2会場 (Annex1)

司会1(コーディネーター)村井 達彦(訪問看護ステーション花あかり),司会2(コーディネーター)武田 智徳(埼玉医科大学国際医療センター)

[G-25] 企画セミナー14:持続的な心大血管疾患患者に対する作業療法-SDGsを意識した取り組み―

講師:渡邉 麗子1,生須 義久2 (1.筑波大学附属病院,2.群馬県立心臓血管センター)

 本邦においては持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が注目され久しい。すべての人々がより良く、より持続可能な未来を築くために貧困や不平等、気候変動、環境劣化、繁栄、平和と公正など我々が直面するグローバルな諸課題の解決を目指している。SDGs 17の目標のうち作業療法士にもっとも関係が深いのは「目標3:すべての人に健康と福祉を」であり、地域保健・医療・福祉を通してすべての人に包括的かつ継続的なサービスを提供する必要がある。
 一方、心臓リハビリテーション(心リハ)とは、心大血管疾患患者の再発・再入院・死亡を減少させ、快適で活動的な生活を実現するための長期的な包括的プログラムである。心リハは多くのエビデンスが蓄積され、循環器治療の一つと考えられている。しかしながら現代医療における入院期間の短期化は急性期病院での回復のための継続的な心リハは困難であるうえ、回復期リハビリテーション病棟ではそもそも診療報酬上の適応疾患外である。また、地域や介護分野では心疾患患者や心リハへの知識や技術が不十分であることなどから患者は継続的な心リハを受け続けることが困難と言わざるを得ない。このような状況で令和4年の診療報酬改定では回復期リハビリテーション病棟の適応患者として心大血管疾患患者が含まれることが検討されている。このことに加え、地域や介護分野においても心リハをさらにすすめるためには携わる作業療法士が心大血管患者、特に高齢者や多疾患有病者、重症者の病態やリスクを理解したうえで安全な心リハを提供できる必要がある。そのためには心リハに精通した(心リハ指導士のような)主に急性期病院の作業療法士が回復期や地域、介護で活躍する作業療法士にその知識や技術を継続的に伝承してゆく必要がある。この知識や技術の伝承は分野を超えた横断的な場面に限ったものではなく、施設内であっても先輩から後輩や新人への教育でも重要である。多忙な臨床の中でいかに教育を継続し、伝承してゆくかが作業療法士の質的な維持向上に肝要である。
 本セミナーでは高齢者や多疾患有病者、重症心大血管疾患患者に対して作業療法を実施する際の経験者の思考をリスク管理を交えてお伝えするとともに臨床場面での教育について論じたい。