第56回日本作業療法学会

講演情報

専門作業療法士セミナー

[B-3] 専門作業療法士セミナー8(認知症)

2022年9月17日(土) 09:00 〜 10:00 第2会場 (Annex1)

[G-8] 専門作業療法士セミナー8(認知症):活動の質評価法(A-QOA)を用いた認知症のある人への生活支援

西田 征治1 (1.県立広島大学 作業療法学コース)

 認知症の人は,進行とともに自分の思いを言語化することが困難となるため,作業療法士の多くは,その人にとって意味や価値のある活動を特定することや,作業療法の効果を説明するのに難渋しているのではないだろうか。そこで筆者らは
これらの問題を解決するために,活動の質評価法(A-QOA)を開発してきた。A-QOAは,認知症の人が活動に従事しているときの様子や状態を観察によって評価するものであり,活動からどのような影響を受け,また周囲の人にどのような影響を与えているのかを捉えようとするものである。
 A-QOAの観察項目は5領域21項目である。認知症の人が行っている活動を評価者としてそばで観察する,あるいは支援しながら観察し,活動が終了した後に評価マニュアルを用いて,それぞれの項目を4段階で評定する。合計点は84点満
点となる。これらの粗点を,解析ソフトであるAqoaProに入力するとプロビット値が算出され,その結果から活動との結びつきの強さを数値で示すことができる。A-QOAでは,認知症の人が活動を行う場面を観察しながら,A-QOAの点数に
影響を与えたと考えられる要因(人的,物的環境など)を把握し,観察後に記録する。
 認知症の人のQOLを高めるためのA-QOAの活用方法は主に3つある。1つ目は,支援の初期にその人にとって意味や価値のある活動を特定するための評価として活用する方法,2つ目は支援計画の立案に役立てる方法,3つ目は介入の成果測定として用いる方法である。認知症ケアにおいてA-QOAを活用する利点の一つは,21項目の観察視点を用いることで,活動に従事することによる効果や影響を言語化するのを助けてくれることである。また,標準化された値であるプロビット値を用いることによって,どの程度活動との結びつきが強く,良い状態で活動を行えているのかを,あるいは介入の成果がどの程度あったのかを客観的に示せることである。
 重要な点は,A-QOAを用いて特定された活動をセラピーやグループ活動のみならず,可能な限り日常生活の中に織り込むことである。日々の生活の中にA-QOAの得点が高くなるような活動を生活に織り込むことが可能となれば,その人のQOLをより一層高めることが可能となる。
 本セミナーでは,A-QOAの概要と認知症の人の生活支援のための活用方法について解説し,認知症の人がより良い生活を送れるための作業療法について参加者のみなさんと一緒に考えてみたい。