[OA-1-1] 急性期脳卒中患者における食事場面での麻痺側上肢の使用状況と運動麻痺との関連性についての検討
【序論】麻痺側上肢の生活場面での使用状況と運動麻痺との関連性を把握する事は,麻痺側上肢の使用を促進する上で重要と考える.急性期脳卒中患者における,病棟生活場面において支援の優先順位の高い食事について,麻痺側上肢の使用状況と運動麻痺との関連性を検討した.
【方法】前向き観察研究とし,対象は2018年10月から2019年10月までに脳卒中の診断で当院に入院し,同意の得られた158名とした.患者属性は診療記録より調査した.評価はStroke Impairment Assessment Set(SIAS)の麻痺側上肢運動項目であるKnee-Mouth(K-M),Finger-Flection(F-F)の2項目を用い,入院時及び退院時に実施した.また,Paralytic arm Participation Measure (PPM)の食事項目の評価を入院時と退院時に実施した.PPMは,日常生活において麻痺側上肢をどの程度参加させているか,「している能力」をADL場面の観察によって測定する評価法(渡辺ら,2010)であり,食事項目についてはお茶碗の把持または箸などの操作を評価する.得点は0~3点の4段階であり,得点が高いほど麻痺側上肢が食事場面で使用できている事を示している.統計解析は,1)退院時のPPM食事項目と,退院時のSIASのK-M,F-Fとの関連性,及び2)PPM食事項目の変化量(退院時-入院時)と,SIASのK-MとF-Fの変化量との関連性をSpearmannの順位相関係数を用いて検討した.3)退院時のPPM食事項目の得点毎の患者が,退院時のK-M及びF-Fの得点毎にどのような割合で存在するのか調査した.また,利き手麻痺群と非利き手麻痺群に分けての検討も行った.尚,報告に際し,本人または代諾者の書面での同意,当院倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】1)退院時のPPM食事項目とK-M及びF-Fはいずれも,有意な高い相関を認めた(K-M:r=0.84,P<0.001/ F-F:r=0.89,P<0.001).2)変化量に関しては,K-M及びF-Fと有意な相関を認めたが,相関係数は低かった(K-M:r=0.26,P<0.001/ F-F:r=0.26,P<0.001). 3)PPM食事項目においてK-Eが3点以上でないと上肢が使用されなかったのに対して,F-Fは1点以上であれば使用できる患者が少ない割合であるが存在していた.また,K-M及びF-Fの得点が高い患者であっても,上肢が使用されない患者が少なからず存在し,非利き手麻痺群では利き手麻痺群に比べてその割合が高い事が分かった.
【考察】1)退院時のPPM食事項目とK-M及びF-Fの相関が高いという我々の結果は,脳卒中急性期での加速度計で評価した麻痺側上肢の使用と運動麻痺とは関連性がある(Narai et al,2016)という先行研究を支持する結果であった.2)変化量の相関が低い要因については,入院初期は安静度制限などの環境因子や嚥下障害や意識障害等の影響により上肢機能を十分にADLに発揮できず,上肢麻痺の変化量よりもPPMの変化量が大きくなる場合があるためと考える.3)近位部の運動麻痺が中等度から重度である場合には上肢が使用できず,これは机上にある食器への到達運動に影響を及ぼすためと考える.一方で末梢の運動麻痺があっても,太柄スプーンや介助箸などの自助具を使用する事で上肢使用が可能と考える.また非利き手が麻痺した場合の方が上肢の使用が制限される可能性があり,これは非利き手が麻痺の場合には自助食器等の使用により非利き手でお皿を抑える必要性が少ないためであると考える.本研究結果より,食事場面における麻痺側上肢の使用を促進する方法について検討していく必要がある.
【方法】前向き観察研究とし,対象は2018年10月から2019年10月までに脳卒中の診断で当院に入院し,同意の得られた158名とした.患者属性は診療記録より調査した.評価はStroke Impairment Assessment Set(SIAS)の麻痺側上肢運動項目であるKnee-Mouth(K-M),Finger-Flection(F-F)の2項目を用い,入院時及び退院時に実施した.また,Paralytic arm Participation Measure (PPM)の食事項目の評価を入院時と退院時に実施した.PPMは,日常生活において麻痺側上肢をどの程度参加させているか,「している能力」をADL場面の観察によって測定する評価法(渡辺ら,2010)であり,食事項目についてはお茶碗の把持または箸などの操作を評価する.得点は0~3点の4段階であり,得点が高いほど麻痺側上肢が食事場面で使用できている事を示している.統計解析は,1)退院時のPPM食事項目と,退院時のSIASのK-M,F-Fとの関連性,及び2)PPM食事項目の変化量(退院時-入院時)と,SIASのK-MとF-Fの変化量との関連性をSpearmannの順位相関係数を用いて検討した.3)退院時のPPM食事項目の得点毎の患者が,退院時のK-M及びF-Fの得点毎にどのような割合で存在するのか調査した.また,利き手麻痺群と非利き手麻痺群に分けての検討も行った.尚,報告に際し,本人または代諾者の書面での同意,当院倫理審査委員会の承認を得ている.
【結果】1)退院時のPPM食事項目とK-M及びF-Fはいずれも,有意な高い相関を認めた(K-M:r=0.84,P<0.001/ F-F:r=0.89,P<0.001).2)変化量に関しては,K-M及びF-Fと有意な相関を認めたが,相関係数は低かった(K-M:r=0.26,P<0.001/ F-F:r=0.26,P<0.001). 3)PPM食事項目においてK-Eが3点以上でないと上肢が使用されなかったのに対して,F-Fは1点以上であれば使用できる患者が少ない割合であるが存在していた.また,K-M及びF-Fの得点が高い患者であっても,上肢が使用されない患者が少なからず存在し,非利き手麻痺群では利き手麻痺群に比べてその割合が高い事が分かった.
【考察】1)退院時のPPM食事項目とK-M及びF-Fの相関が高いという我々の結果は,脳卒中急性期での加速度計で評価した麻痺側上肢の使用と運動麻痺とは関連性がある(Narai et al,2016)という先行研究を支持する結果であった.2)変化量の相関が低い要因については,入院初期は安静度制限などの環境因子や嚥下障害や意識障害等の影響により上肢機能を十分にADLに発揮できず,上肢麻痺の変化量よりもPPMの変化量が大きくなる場合があるためと考える.3)近位部の運動麻痺が中等度から重度である場合には上肢が使用できず,これは机上にある食器への到達運動に影響を及ぼすためと考える.一方で末梢の運動麻痺があっても,太柄スプーンや介助箸などの自助具を使用する事で上肢使用が可能と考える.また非利き手が麻痺した場合の方が上肢の使用が制限される可能性があり,これは非利き手が麻痺の場合には自助食器等の使用により非利き手でお皿を抑える必要性が少ないためであると考える.本研究結果より,食事場面における麻痺側上肢の使用を促進する方法について検討していく必要がある.