[OA-10-4] 口述発表:脳血管疾患等 10急性期脳梗塞患者に対する転帰先予測におけるTrail Making Test part A の影響
[はじめに]
急性期病院では脳卒中患者の在院日数が短縮化されているため,医療従事者は,転帰先を可能な限り早期に予測し決定する能力が求められている.脳卒中患者は,罹患後に認知機能障害を呈しやすいと報告されており,患者の認知機能評価は転帰先を予測するために重要であると考えられる.急性期脳卒中リハビリテーション(リハビリ)においては, スクリーニング評価として簡便かつ短時間で認知機能を評価する必要があり,Mini-Mental State Examination (MMSE) は本邦においても広く使用されている. しかし, 全般的な知的機能を評価するMMSE は, 「前頭葉」や「側頭葉前方」領域に由来する認知機能低下に対する感受性はあまり高くない.今回我々は, 脳機能障害の低下を示す最も鋭敏な認知能力の1つであることが知られる「認知処理速度」という概念に着目し, 急性期から実施可能性が高い,Trail Making Test part A(TMT-A)が自宅退院を予測する上で有用な情報となるのではないかと考えた.
[目的]
急性期脳梗塞患者における転帰先予測において, 認知処理速度評価ツールであるTMT-Aが与える影響を検討すること.
[方法]
本研究は当院倫理委員会の承認を経て実施した. 対象は,2019年4月から2020年11月の間に当院Stroke Care Unit病棟に入院した急性期脳梗塞患者327例のうち,除外基準に該当する患者を除いた164例とした.除外基準は,リハビリ初期評価のMMSE及びTMT-Aの評価が困難な者,入院加療中に神経症状の増悪を認めた者とした. 統計学的解析は,自宅退院群と非自宅退院群の2群間における基本属性,身体機能や認知機能を比較する目的で,対応の無いt検定及びカイ二乗検定を実施した.次に目的変数を自宅退院の可否とし,説明変数として, 年齢, NIHSS, BRS, 同居人数を共通する変数とし, その説明変数にMMSEを加えたものを model 1, TMT-Aを加えたものを model 2, MMSEとTMT-Aを加えたものを model 3として,強制投入法にてロジスティック回帰分析を行った.
[結果]
年齢の中央値は70歳,64.0%が男性であった.入院時のNIHSSの平均は4.8点であった. 自宅退院群と非自宅退院群の2郡間比較では, 自宅退院群にて在院日数, 初回離床までの日数, NIHSS, TMT-Aの試行秒数がより小さい値であり, MMSEがより高い値であることが, 統計学的優位性(P<0.05)を持って示された. また,ロジスティック回帰分析から自宅退院に影響する因子として,model1では,BRS(P<0.001)が,model2では年齢(P=0.021),BRS(P<0.001),TMT-A(P=0.009)が, model3では,年齢(P=0.021),BRS(P<0.001),TMT-A(P=0.024)が抽出された.またホスマー・レメショウの検定は,model1はP=0.992,model2はP=0.505,model3はP=0.528であり, 正判別率は,model1は83.5%,model2は85.4%,model3は84.8%であった.
[結論]
急性期脳梗塞患者において,リハビリテーション初期評価におけるTMT-Aの試行秒数は転帰先に影響を与える可能性が示された. また,TMT-AがMMSEとは異なる,自宅退院に影響を与える脳機能情報を提供する可能性も確認できた
急性期病院では脳卒中患者の在院日数が短縮化されているため,医療従事者は,転帰先を可能な限り早期に予測し決定する能力が求められている.脳卒中患者は,罹患後に認知機能障害を呈しやすいと報告されており,患者の認知機能評価は転帰先を予測するために重要であると考えられる.急性期脳卒中リハビリテーション(リハビリ)においては, スクリーニング評価として簡便かつ短時間で認知機能を評価する必要があり,Mini-Mental State Examination (MMSE) は本邦においても広く使用されている. しかし, 全般的な知的機能を評価するMMSE は, 「前頭葉」や「側頭葉前方」領域に由来する認知機能低下に対する感受性はあまり高くない.今回我々は, 脳機能障害の低下を示す最も鋭敏な認知能力の1つであることが知られる「認知処理速度」という概念に着目し, 急性期から実施可能性が高い,Trail Making Test part A(TMT-A)が自宅退院を予測する上で有用な情報となるのではないかと考えた.
[目的]
急性期脳梗塞患者における転帰先予測において, 認知処理速度評価ツールであるTMT-Aが与える影響を検討すること.
[方法]
本研究は当院倫理委員会の承認を経て実施した. 対象は,2019年4月から2020年11月の間に当院Stroke Care Unit病棟に入院した急性期脳梗塞患者327例のうち,除外基準に該当する患者を除いた164例とした.除外基準は,リハビリ初期評価のMMSE及びTMT-Aの評価が困難な者,入院加療中に神経症状の増悪を認めた者とした. 統計学的解析は,自宅退院群と非自宅退院群の2群間における基本属性,身体機能や認知機能を比較する目的で,対応の無いt検定及びカイ二乗検定を実施した.次に目的変数を自宅退院の可否とし,説明変数として, 年齢, NIHSS, BRS, 同居人数を共通する変数とし, その説明変数にMMSEを加えたものを model 1, TMT-Aを加えたものを model 2, MMSEとTMT-Aを加えたものを model 3として,強制投入法にてロジスティック回帰分析を行った.
[結果]
年齢の中央値は70歳,64.0%が男性であった.入院時のNIHSSの平均は4.8点であった. 自宅退院群と非自宅退院群の2郡間比較では, 自宅退院群にて在院日数, 初回離床までの日数, NIHSS, TMT-Aの試行秒数がより小さい値であり, MMSEがより高い値であることが, 統計学的優位性(P<0.05)を持って示された. また,ロジスティック回帰分析から自宅退院に影響する因子として,model1では,BRS(P<0.001)が,model2では年齢(P=0.021),BRS(P<0.001),TMT-A(P=0.009)が, model3では,年齢(P=0.021),BRS(P<0.001),TMT-A(P=0.024)が抽出された.またホスマー・レメショウの検定は,model1はP=0.992,model2はP=0.505,model3はP=0.528であり, 正判別率は,model1は83.5%,model2は85.4%,model3は84.8%であった.
[結論]
急性期脳梗塞患者において,リハビリテーション初期評価におけるTMT-Aの試行秒数は転帰先に影響を与える可能性が示された. また,TMT-AがMMSEとは異なる,自宅退院に影響を与える脳機能情報を提供する可能性も確認できた