第56回日本作業療法学会

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一般演題

脳血管疾患等

[OA-12] 一般演題:脳血管疾患等 12

Sat. Sep 17, 2022 2:50 PM - 4:00 PM 第2会場 (Annex1)

座長:大松 聡子(国立障害者リハビリテーションセンター)

[OA-12-3] 口述発表:脳血管疾患等 12脳卒中後の手の麻痺性浮腫に対する反復末梢磁気刺激

藤村 健太1加賀谷 斉2鈴木 卓弥3三和 春菜3遠藤 千春3 (1.藤田医科大学保健衛生学部リハビリテーション学科, 2.藤田医科大学医学部リハビリテーション医学I講座, 3.藤田医科大学病院リハビリテーション部)

【はじめに】
脳卒中後の片麻痺患者は麻痺した手に浮腫を生じやすく,発生率は急性期患者の18.5%,慢性期患者の37%と報告されている.浮腫の存在は痛みや拘縮の発生に繋がるため,早期介入が重要である.しかし,一般に用いられる浮腫への介入のほとんどは対症療法であり,有効な治療が確立されていない.我々は近年注目されている反復末梢磁気刺激(以下,rPMS)を用いて浮腫に対する新たな治療を考案し,効果を検証した.
【方法】
本試験は単一施設,非盲検,クロスオーバー,無作為化比較試験である.2020年1月から2021年4月の間に回復期リハビリテーション病棟に入院した患者のうち,脳卒中後の麻痺に起因する手の浮腫を生じた18名を対象とした.なお,本研究は藤田医科大学臨床研究審査委員会の承認を得て特定臨床研究として実施し,全対象者から書面でインフォームドコンセントを得た.
対象者をAB群とBA群に無作為に割り付けた.AB群は通常のリハビリテーション(以下,通常リハ)を2週間施行した後に通常リハ+rPMSを2週間,BA群は通常リハ+rPMSを2週間施行した後に通常リハを2週間行なった.通常リハは理学療法および作業療法を180分/日,7日/週行い,関節可動域,筋力増強,歩行,日常生活活動の練習を含んだ.rPMSは末梢磁気刺激装置(PathleaderTM; IFG, 仙台)を使用し,手の内在筋に対する周波数30Hz,6,000パルス,on/off時間=2/2secの刺激を週5日間,通常リハの時間内に加えた.刺激強度は痛みや不快感を感じない最大とした.
主要評価項目は手の容積を用いた手の浮腫の左右差とした.副次評価項目は中手指節関節(MCP関節)の関節可動域(以下,ROM),手の痛み,握力とした.評価は開始前(T0),2週間後(T1),4週間後(T2)に,時間帯を統一して行った.
統計解析には反復測定分析(混合効果モデル)を用いて,介入順序,介入内容の違い(通常リハ vs 通常リハ+rPMS),その交互作用を分析した.統計処理にはJMP ver. 14を使用し,有意水準はp<0.05とした.数値は平均値±SDで表記した.
【結果】
最初の2週間ではBA群1名が介入拒否により脱落し,AB群9名,BA群8名が完了した.介入内容を入れ替えた2週間ではBA群1名が急遽退院により脱落し,AB群9名,BA群7名が完了した.最終的にBA群の介入拒否1名を除いた17名を解析対象とした.対象は年齢66±14歳,男女比は12:5,麻痺側の左右比は11:6,発症後期間は50±40日であった.SIAS のKnee-Mouth testは0が6名,1が6名,3が4名,4が1名,Finger-Function testは0が10名,1Aが1名,1Cが2名,2が1名,3が1名,4が2名であった.
主要評価項目である各群における手の容積の左右差(ml)は,AB群T0: 50.6±28.2,T1: 56.7±21.7,T2: 34.4±31.9,BA群T0: 51.9±41.6,T1: 41.3±30.4,T2: 62.1±33.0であった.統計解析の結果交互作用はなく,通常リハに対し,通常リハ+rPMSにおいて手の容積が有意に減少し,MCP関節屈曲のROMは有意に拡大した(p<0.01).他の評価に有意差はなかった.
【考察】
rPMSを用いた手の内在筋の反復的な筋収縮により筋ポンプ作用を再建することで,麻痺によって生じた手の浮腫が有意に軽減した.痛みを生じることなく深層まで刺激可能なrPMSは,手の浮腫に対する新たな治療法となる可能性が示唆された.