第56回日本作業療法学会

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一般演題

脳血管疾患等

[OA-14] 一般演題:脳血管疾患等 14

Sun. Sep 18, 2022 9:40 AM - 10:40 AM 第2会場 (Annex1)

座長:佐賀里 昭(信州大学)

[OA-14-3] 口述発表:脳血管疾患等 14実車リハビリテーションの効果:当院で実施している自動車運転再開支援プログラムの紹介

沼田 歩1豊倉 穣2 (1.一般財団法人 太田綜合病院附属太田熱海病院,2.東海大学医学部付属大磯病院)

【はじめに】
当院の自動車運転再開支援プログラム(以下,支援プログラム)では,実車評価の判定を,①「運転再開が可能」,➁「判定保留:オンロード訓練後に再評価」,③「運転再開を控える(オンロード訓練の適応無し)」としている.実車評価の結果,➁と判定された患者には,引き続き実車でのオンロード訓練として実車リハビリテーション(以下,実車リハ)(豊倉,2018)を実施している.本発表では,当院の支援プログラムの紹介と,実車リハの効果について報告する.本報告は当院の臨床倫理委員会の承認を得ている.
【自動車運転再開支援プログラムの概要】
オフロード評価:医師の診察で病歴や服薬状況,画像所見,社会参加状況を聴取・確認し,その後基本的な身体機能評価,神経心理学的検査を実施する.高次脳機能障害の重症者,もしくは高次脳機能に問題のない患者以外は,実車評価の対象となる.オンロード評価:地域の自動車教習所において実施する.評価は通常2コマで,場内走行から行う.場内を一般運転手相応に走行可能で,かつ運転免許証が有効期間内の患者は路上評価に移行する.評価終了後,OTが報告書を作成し,医師に報告する.実車評価の結果,上記①と判定された患者には診断書を発行し,免許センターでの臨時適性相談を指示する.上記➁と判定された患者は,実車リハに移行する.
【実車リハビリテーションの概要】実車リハは初回の実車評価を行った教習所で継続して行う.その際OTは同乗しないが,事前に教習指導員と,高次脳機能障害を含む運転上の問題点や実車リハのポイント等について協議する.実車リハにあたっては,医師が「実車リハ依頼書」を発行する.OTは教習指導員からの情報によって適時実施状況を確認している.実車リハにより運転技能・運転行動が改善した時点で,OTが同乗し再実車評価を行う.その後の流れは初回評価と同様で,医師が最終的な総合判定を行う.
【介入実績】
実車評価対象者は119名で,判定結果は①79名,➁40名,③0名となった.➁の40名のうち運転の断念や再発等を除いた32名(内訳:男性22名,女性10名,平均年齢58歳)が実車リハの対象となった.再実車評価までに要した実車リハの回数は2回~10回(平均3.6回)であった.実車リハを中断した1名を除いた31名が再実車評価(1名は再々評価)で①と判定され,その後の臨時適性相談を経て自動車運転の再開が実現した.初回実車評価から再評価の合格までに要した期間は約2週間から2カ月であった.
【考察】
実車リハを実施した31名で自動車運転の再開が実現し,実車リハの効果が示唆された.
Rossら(2018)の研究では,「Driver Rehabilitation」としてのオンロード運転訓練の重要性が述べられている.実車評価で不合格となった脳外傷者に対するオンロード運転訓練の結果,93%の患者が運転を再開できており,当院でも同等の成績となった.
支援プログラム終了者に対する運転再開後のアンケート調査(2019)では,実車リハによる運転行動の変容について,「病前に比べ慎重に運転するよう気を付けている」,「法令順守や安全運転を心がけている」等の回答があり,実車リハにより「自身の運転技能の問題に気づく機会になった」という意見が聞かれた.
今後は支援プログラム終了後の運転状況について追跡調査を行うとともに,病前の運転習慣や運転に関する自己認識と実車リハの効率などとの関連についても検討をすすめたい.