[OA-3-2] 口述発表:脳血管疾患等 3排尿ケアチーム介入による急性期脳卒中患者のトイレ動作獲得因子の検討
【はじめに】排泄動作は,その他のセルフケアと比較して1日の実施頻度が高く, また,羞恥心を伴う生活行為であるため,本人のニーズも高く,ADL動作の中では早期に動作の獲得や介助量の軽減が求められる行為である.排泄動作は,便座という狭い支持面での座位保持や清拭動作に伴った座位バランス能力に加えて,移乗動作や下衣操作に伴った立位バランス能力が求められる動作であり,その獲得は容易ではない.そのため,作業療法士(以下,OT)は患者の能力に応じて過不足ない評価と適切で迅速な介入が必要となる.我々は,経験年齢を問わず,また,過不足なく評価ができること,即座な介入の視点を持てることを目的にADLチェックシートを作成し運用している.今回,その中の排泄動作のチェックシートについて,結果が検査者によって齟齬がないか,妥当であるかを確認するため,チェックシートの検査者間信頼性を検証することを目的とした.
【方法】評価者は経験年数1年目から15年目までの10名のOT(平均年数:5.6±4.2年)であり,評価対象は回復期病棟入棟中の排泄動作が自立していない脳卒中片麻痺者3名(症例A:FIMトイレ動作2点,症例B:FIMトイレ動作4点,症例C:FIMトイレ動作1点)とした.評価方法は排泄動作の動画を視聴し,ADLチェックシートの項目に沿って評価点をつけた.チェックシートの内容は10項目で構成されるが,水洗ボタン操作,Nsコール操作を除く①トイレ内移動,②トイレ移乗(車椅子から便座),③トイレ移乗(便座から車椅子),④便座への着座,⑤下衣下げ,⑥下衣上げ,⑦便座での座位保持,⑧清拭動作の8項目にて実施し,評価点は1点(全介助),2点(中等度介助),3点(軽介助),4点(声かけ・見守り),5点(自立)までの合計40点である.加えて,どの動作に優先して介入するか,8項目の中から上位3つを選択した.統計学的分析として,合計点は級内相関係数(ICC(2,1)),各下位項目はKendallの一致係数(W係数)を用いて検者間信頼性を検証した. ICC(2,1)とW係数は0から1の値で算出され,0は検者間の回答が不一致,1は検者間の回答が完全一致と解釈される.優先的な介入の選択については,各症例の下位項目ごとにχ2検定を用いて検証した. 尚,本研究は当院の倫理審査委員会にて承認を得ている.
【結果】評価結果は各症例順に合計点が症例A:26.1±2.2点,症例B:32.8±1.3点,症例C:10.3±1.1点となった.合計点のICC(2,1)は0.98(p<0.01)であり,各下位項目のW係数はトイレ内移動:0.95(p<0.01),トイレ移乗(車椅子から便座):0.95(p<0.01),トイレ移乗(便座から車椅子):0.89(p<0.01),便座への着座:0.98(p<0.01),下衣下げ:0.96(p<0.01),下衣上げ:0.98(p<0.01),便座での座位保持:0.84(p<0.01),清拭動作:0.95(p<0.01)となった.優先的な介入の選択については,症例Aでは下衣の上げ下ろし,症例Bではトイレ移乗(車椅子⇔便座)について有意差を認め(p<0.01),症例Cでは有意差を認めず(p>0.05),選択した項目にバラツキが多かった.
【考察】合計点のICC(2,1)は0.98,各下衣項目のW係数は0.84から0.98と極めて高い検者間信頼性となり,ADLチェックシートによる排泄動作の評価は,評価者の経験年数に問わず信頼性のある評価が可能であることが示唆された.優先的な介入の選択については,症例A,Bに関しては選んだ項目に有意差を認め,介入項目が明確になっており,介入視点に関しても信頼性が高いと言える.しかし,症例Cにおいては,有意差を認めず,選んだ項目にばらつきが多かったが,症例Cはトイレ動作のFIMが1点で,すべての動作が全介助であり,介入すべき項目も多く,どの項目から優先して介入するかについてはOTによって考えが分かれるためと考える.
【方法】評価者は経験年数1年目から15年目までの10名のOT(平均年数:5.6±4.2年)であり,評価対象は回復期病棟入棟中の排泄動作が自立していない脳卒中片麻痺者3名(症例A:FIMトイレ動作2点,症例B:FIMトイレ動作4点,症例C:FIMトイレ動作1点)とした.評価方法は排泄動作の動画を視聴し,ADLチェックシートの項目に沿って評価点をつけた.チェックシートの内容は10項目で構成されるが,水洗ボタン操作,Nsコール操作を除く①トイレ内移動,②トイレ移乗(車椅子から便座),③トイレ移乗(便座から車椅子),④便座への着座,⑤下衣下げ,⑥下衣上げ,⑦便座での座位保持,⑧清拭動作の8項目にて実施し,評価点は1点(全介助),2点(中等度介助),3点(軽介助),4点(声かけ・見守り),5点(自立)までの合計40点である.加えて,どの動作に優先して介入するか,8項目の中から上位3つを選択した.統計学的分析として,合計点は級内相関係数(ICC(2,1)),各下位項目はKendallの一致係数(W係数)を用いて検者間信頼性を検証した. ICC(2,1)とW係数は0から1の値で算出され,0は検者間の回答が不一致,1は検者間の回答が完全一致と解釈される.優先的な介入の選択については,各症例の下位項目ごとにχ2検定を用いて検証した. 尚,本研究は当院の倫理審査委員会にて承認を得ている.
【結果】評価結果は各症例順に合計点が症例A:26.1±2.2点,症例B:32.8±1.3点,症例C:10.3±1.1点となった.合計点のICC(2,1)は0.98(p<0.01)であり,各下位項目のW係数はトイレ内移動:0.95(p<0.01),トイレ移乗(車椅子から便座):0.95(p<0.01),トイレ移乗(便座から車椅子):0.89(p<0.01),便座への着座:0.98(p<0.01),下衣下げ:0.96(p<0.01),下衣上げ:0.98(p<0.01),便座での座位保持:0.84(p<0.01),清拭動作:0.95(p<0.01)となった.優先的な介入の選択については,症例Aでは下衣の上げ下ろし,症例Bではトイレ移乗(車椅子⇔便座)について有意差を認め(p<0.01),症例Cでは有意差を認めず(p>0.05),選択した項目にバラツキが多かった.
【考察】合計点のICC(2,1)は0.98,各下衣項目のW係数は0.84から0.98と極めて高い検者間信頼性となり,ADLチェックシートによる排泄動作の評価は,評価者の経験年数に問わず信頼性のある評価が可能であることが示唆された.優先的な介入の選択については,症例A,Bに関しては選んだ項目に有意差を認め,介入項目が明確になっており,介入視点に関しても信頼性が高いと言える.しかし,症例Cにおいては,有意差を認めず,選んだ項目にばらつきが多かったが,症例Cはトイレ動作のFIMが1点で,すべての動作が全介助であり,介入すべき項目も多く,どの項目から優先して介入するかについてはOTによって考えが分かれるためと考える.