[OA-3-4] 口述発表:脳血管疾患等 3回復期高齢脳卒中患者の自宅退院と家族構成の関連
【背景】脳卒中患者の回復期リハビリテーションにおいて,自宅退院は重要な目標の一つである.特に,高齢脳卒中患者は要介護状態となりやすいため,本人の心身機能だけでなく家族の状況など社会的因子を踏まえた退院支援が重要である.近年では,家族構成が変化しており,老老介護が問題となっている.しかし,自宅退院と家族構成の関連を調査した先行研究の多くは同居人の有無の検討に留まっており,家族構成が自宅退院に与える影響,および家族構成別の自宅退院の関連因子については十分な検討がされていない.
【目的】高齢脳卒中患者において家族構成が自宅退院に与える影響を調査するとともに,家族構成別の自宅退院の関連因子を調査することである.
【方法】研究デザインは後ろ向きコホート研究とした.対象者は2012年4月1日から2021年3月31日までに当院回復期リハビリテーション病棟に入院した65歳以上の初発脳卒中患者とし,くも膜下出血患者,失語症患者,病前自宅生活でなかったもの,データ欠損例は除外した.主調査項目は転帰先 (自宅または施設)とし,家族構成は世帯構成人数と続柄を収集した.その他の因子として,基本属性,入院時の身体機能,入院時のADL能力を診療録より収集した.統計解析は,まずは家族構成を,独居群,配偶者と2人で同居群,配偶者を含む3人以上で同居群の3群に分類した.その後,ロジスティック回帰分析強制投入法を用いて家族構成が自宅退院に関連する影響を調査した.さらに,ロジスティック回帰分析変数増加法を用いて,各群における自宅退院の関連因子を調査した.有意水準は5%とした.尚,本研究は当院倫理審査会の承認を得て行った.
【結果】解析対象者は725名であった.対象者の属性では,平均年齢は76.0±6.8歳,男性が423名 (58.3%),脳梗塞が514名 (70.9%)であり,自宅退院は560名 (77.2%)であった.家族構成では,独居が193名 (26.6%),配偶者と2人で同居が331名 (45.7%),配偶者を含む3人以上で同居が201名 (27.7%)であった.家族構成が自宅退院に関連する影響を調査した結果,独居が有意に関連しており (オッズ比 [OR], 0.23; 95%信頼区間 [95%CI], 0.12–0.44; p<0.001),配偶者と2人で同居に有意差はなかった (p=0.615).各群における自宅退院の関連因子の検討では,独居群で有意な関連因子として抽出された因子は,発症から回復期病棟入院までの期間 (OR, 0.96; 95%CI, 0.93–0.99; p=0.007),FIMの排尿管理 (OR, 1.39; 95%CI, 1.16–1.66; p<0.001),FIMの問題解決 (OR, 1.61; 95%CI, 1.22–2.11; p<0.001)であった.配偶者と2人で同居群では,性別 (参照, 男; OR, 0.36; 95%CI, 0.20–0.67; p=0.001),SIAS-m上肢項目 (OR, 1.16; 95%CI, 1.06–1.27; p=0.002),FIMの移動 (OR, 1.49; 95%CI, 1.19–1.88; p<0.001),FIMの社会的交流 (OR, 1.41; 95%CI, 1.12–1.77; p<0.003),FIMの問題解決 (OR, 1.43; 95%CI, 1.14–1.79; p=0.002)であった.配偶者を含む3人以上で同居群では,健側握力 (OR, 1.07; 95%CI, 1.02–1.12; p=0.008),FIMの移動 (OR, 1.87; 95%CI, 1.39–2.51; p<0.001),FIMの社会的交流 (OR, 1.50; 95%CI, 1.10–2.03; p=0.009),FIMの記憶 (OR, 1.40; 95%CI, 1.06–1.86; p=0.019)であった.
【考察】高齢脳卒中患者において,独居が自宅退院に有意に関連していること,および,家族構成別で自宅退院に関連する因子が異なることを明らかにした.高齢脳卒中患者の退院支援は,早期から転帰先を想定し,家族構成に応じた支援が重要である.
【目的】高齢脳卒中患者において家族構成が自宅退院に与える影響を調査するとともに,家族構成別の自宅退院の関連因子を調査することである.
【方法】研究デザインは後ろ向きコホート研究とした.対象者は2012年4月1日から2021年3月31日までに当院回復期リハビリテーション病棟に入院した65歳以上の初発脳卒中患者とし,くも膜下出血患者,失語症患者,病前自宅生活でなかったもの,データ欠損例は除外した.主調査項目は転帰先 (自宅または施設)とし,家族構成は世帯構成人数と続柄を収集した.その他の因子として,基本属性,入院時の身体機能,入院時のADL能力を診療録より収集した.統計解析は,まずは家族構成を,独居群,配偶者と2人で同居群,配偶者を含む3人以上で同居群の3群に分類した.その後,ロジスティック回帰分析強制投入法を用いて家族構成が自宅退院に関連する影響を調査した.さらに,ロジスティック回帰分析変数増加法を用いて,各群における自宅退院の関連因子を調査した.有意水準は5%とした.尚,本研究は当院倫理審査会の承認を得て行った.
【結果】解析対象者は725名であった.対象者の属性では,平均年齢は76.0±6.8歳,男性が423名 (58.3%),脳梗塞が514名 (70.9%)であり,自宅退院は560名 (77.2%)であった.家族構成では,独居が193名 (26.6%),配偶者と2人で同居が331名 (45.7%),配偶者を含む3人以上で同居が201名 (27.7%)であった.家族構成が自宅退院に関連する影響を調査した結果,独居が有意に関連しており (オッズ比 [OR], 0.23; 95%信頼区間 [95%CI], 0.12–0.44; p<0.001),配偶者と2人で同居に有意差はなかった (p=0.615).各群における自宅退院の関連因子の検討では,独居群で有意な関連因子として抽出された因子は,発症から回復期病棟入院までの期間 (OR, 0.96; 95%CI, 0.93–0.99; p=0.007),FIMの排尿管理 (OR, 1.39; 95%CI, 1.16–1.66; p<0.001),FIMの問題解決 (OR, 1.61; 95%CI, 1.22–2.11; p<0.001)であった.配偶者と2人で同居群では,性別 (参照, 男; OR, 0.36; 95%CI, 0.20–0.67; p=0.001),SIAS-m上肢項目 (OR, 1.16; 95%CI, 1.06–1.27; p=0.002),FIMの移動 (OR, 1.49; 95%CI, 1.19–1.88; p<0.001),FIMの社会的交流 (OR, 1.41; 95%CI, 1.12–1.77; p<0.003),FIMの問題解決 (OR, 1.43; 95%CI, 1.14–1.79; p=0.002)であった.配偶者を含む3人以上で同居群では,健側握力 (OR, 1.07; 95%CI, 1.02–1.12; p=0.008),FIMの移動 (OR, 1.87; 95%CI, 1.39–2.51; p<0.001),FIMの社会的交流 (OR, 1.50; 95%CI, 1.10–2.03; p=0.009),FIMの記憶 (OR, 1.40; 95%CI, 1.06–1.86; p=0.019)であった.
【考察】高齢脳卒中患者において,独居が自宅退院に有意に関連していること,および,家族構成別で自宅退院に関連する因子が異なることを明らかにした.高齢脳卒中患者の退院支援は,早期から転帰先を想定し,家族構成に応じた支援が重要である.