[OA-4-3] 口述発表:脳血管疾患等 4頚髄損傷患者におけるロボット訓練の有用性の検討
【緒言】昨今,上肢用ロボット型運動訓練装置ReoGO-J(帝人ファーマ社製)は,慢性期脳卒中患者が適応とされ,その治療効果が示唆されている(竹林ら,2019).一方で,脊髄損傷患者において,先行研究では, ReoGO実施前後でのaROM, MMT, CUE-T(Capabilities of Upper ExtremityTest), セルフケア(FIM)での向上が認められている(Loriら,2012).しかし,依然,脊髄損傷者における報告数は少なく,本邦における効果は明らかになっていない.
【目的】頚髄損傷者に対してロボット(ReoGo-J)を併用した訓練プログラムを提供し,その効果を検証する.
【対象】自然治癒の影響を最小限にするために,退院目前で発症から5か月以上経過している者から選定した.また,自主トレーニングとして主体的に進めるために,病院内移動が修正自立している対象者に限定した.
【方法】ロボット訓練の内容は,脳卒中患者を対象としたプロトコル(石垣ら,2019)を参考に,肩関節外旋筋群賦活と身体リーチ課題を加えた,独自のプロトコルを作成した.訓練内容は,残存筋力を最大限に引出し,かつ疼痛と過度な代償運動の無い範囲で行える難易度(QOM(Quality of movement)が3.5~4.0程度)で設定した.訓練側は,利き手に関わらず,ADL展開を見据え,担当療法士と相談し決定した.期間は3週間,頻度は週3回以上,1回40分以上実施した.同時期に週6日,1回60分間,通常の個別OTも実施した.評価は,ロボット訓練の実施前後でGRASSP(Graded and RedefinedAssessment of Strength, Sensibility, and Prehension), ARAT, CUE-T, MALを評価した.また,面接も行い,実施前後で変化のあった日常生活動作の有無を聴取した.
【結果】当院入院患者の頚髄損傷患者3名に,本研究の協力の承諾を得て評価・介入を行った. 基本情報は, A氏60代,障害高位C5, B氏40代,C5, C氏50代,C4で,3名ともに男性, AIS:D.A・B氏は,右側上肢で週3-4回程度,C氏は左側で毎日実施した.実施前後の客観的尺度の変化は,A氏ではMALのAOUとQOMが,B氏ではMALのAOUがMCIDを上回った.C氏では,CUE-Tのside項目のみがMCIDを上回った.各自,その他の検査項目では,MCIDを上回る結果は認めなかった.面接では,「洗髪時に頭頂までのリーチが可能になった.(A氏)」,「満水の取手付きカップの口元へのリーチが可能になった. (B氏)」,「自助具箸の口元へのリーチが可能になった. 食事の後半であれば茶碗を把持し,食べやすい様に傾けられるようになった. (C氏)」という本人の内観が聞かれた.
【考察】今回は患者によるばらつきはあるものの, 3名共に上肢のリーチ範囲の拡大と,手指の物品操作能力に改善が認められ,頚髄損傷患者に対するロボット訓練の実施が,上肢機能およびADL改善をもたらす可能性が示唆された.先行研究によると,頚髄損傷者の座位がとれ,活動性が上がり,ADLを実施しなければならない回復期には,リーチ動作時に翼状肩甲になり,肩甲帯が後退しやすい.その結果,僧帽筋上部繊維や頚部周囲筋が過剰に働き,頚部,肩周囲筋群の力が抜けない過緊張状況に陥りやすいと述べられている(玉垣,2009).今回,訓練内容の難易度は,左記の過緊張状況を避けつつ,随意的なリーチ動作を反復できる程度に設定した.この結果,肩関節外旋筋群等が賦活され,上肢の支持性が向上し,結果的に操作性向上にも影響を与えた可能性があると考えられる.一方で,患者間で結果にばらつきが生じた理由については,実施側の利き手の有無や,実施頻度の影響を検討していく必要性があると考えられる.また,今後の課題として,研究のデザインを決めていく事が挙げられる.
【目的】頚髄損傷者に対してロボット(ReoGo-J)を併用した訓練プログラムを提供し,その効果を検証する.
【対象】自然治癒の影響を最小限にするために,退院目前で発症から5か月以上経過している者から選定した.また,自主トレーニングとして主体的に進めるために,病院内移動が修正自立している対象者に限定した.
【方法】ロボット訓練の内容は,脳卒中患者を対象としたプロトコル(石垣ら,2019)を参考に,肩関節外旋筋群賦活と身体リーチ課題を加えた,独自のプロトコルを作成した.訓練内容は,残存筋力を最大限に引出し,かつ疼痛と過度な代償運動の無い範囲で行える難易度(QOM(Quality of movement)が3.5~4.0程度)で設定した.訓練側は,利き手に関わらず,ADL展開を見据え,担当療法士と相談し決定した.期間は3週間,頻度は週3回以上,1回40分以上実施した.同時期に週6日,1回60分間,通常の個別OTも実施した.評価は,ロボット訓練の実施前後でGRASSP(Graded and RedefinedAssessment of Strength, Sensibility, and Prehension), ARAT, CUE-T, MALを評価した.また,面接も行い,実施前後で変化のあった日常生活動作の有無を聴取した.
【結果】当院入院患者の頚髄損傷患者3名に,本研究の協力の承諾を得て評価・介入を行った. 基本情報は, A氏60代,障害高位C5, B氏40代,C5, C氏50代,C4で,3名ともに男性, AIS:D.A・B氏は,右側上肢で週3-4回程度,C氏は左側で毎日実施した.実施前後の客観的尺度の変化は,A氏ではMALのAOUとQOMが,B氏ではMALのAOUがMCIDを上回った.C氏では,CUE-Tのside項目のみがMCIDを上回った.各自,その他の検査項目では,MCIDを上回る結果は認めなかった.面接では,「洗髪時に頭頂までのリーチが可能になった.(A氏)」,「満水の取手付きカップの口元へのリーチが可能になった. (B氏)」,「自助具箸の口元へのリーチが可能になった. 食事の後半であれば茶碗を把持し,食べやすい様に傾けられるようになった. (C氏)」という本人の内観が聞かれた.
【考察】今回は患者によるばらつきはあるものの, 3名共に上肢のリーチ範囲の拡大と,手指の物品操作能力に改善が認められ,頚髄損傷患者に対するロボット訓練の実施が,上肢機能およびADL改善をもたらす可能性が示唆された.先行研究によると,頚髄損傷者の座位がとれ,活動性が上がり,ADLを実施しなければならない回復期には,リーチ動作時に翼状肩甲になり,肩甲帯が後退しやすい.その結果,僧帽筋上部繊維や頚部周囲筋が過剰に働き,頚部,肩周囲筋群の力が抜けない過緊張状況に陥りやすいと述べられている(玉垣,2009).今回,訓練内容の難易度は,左記の過緊張状況を避けつつ,随意的なリーチ動作を反復できる程度に設定した.この結果,肩関節外旋筋群等が賦活され,上肢の支持性が向上し,結果的に操作性向上にも影響を与えた可能性があると考えられる.一方で,患者間で結果にばらつきが生じた理由については,実施側の利き手の有無や,実施頻度の影響を検討していく必要性があると考えられる.また,今後の課題として,研究のデザインを決めていく事が挙げられる.