第56回日本作業療法学会

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一般演題

脳血管疾患等

[OA-6] 一般演題:脳血管疾患等 6

Sat. Sep 17, 2022 10:10 AM - 11:10 AM 第2会場 (Annex1)

座長:秋山 尚也(浜松市リハビリテーション病院)

[OA-6-5] 口述発表:脳血管疾患等 6回復期リハビリテーション病棟退院後における軽度脳卒中患者の家事再開予測モデルの開発

小林 竜12小林 法一3 (1.東京都立大学大学院人間健康科学研究科作業療法科学域, 2.練馬駅リハビリテーション病院リハビリテーション科, 3.東京都立大学大学院人間健康科学研究科作業療法科学域)

【序論】脳卒中は身体機能に影響を与えるだけでなく,日常生活活動や手段的日常生活活動などの活動制限にもつながることから世界的に大きな健康問題となっている(Lo RS at al., 2008).脳卒中患者にとって手段的日常生活活動の一部である家事は,とりわけ再開が難しい活動の一つとされている(Mayo NE et al., 2002).脳卒中後における家事への従事は,生活の質との関連性が報告されており(Mayo NE et al., 2002),脳卒中後の家事再開は,リハビリテーションの主要なゴールとみなすべきである.脳卒中患者の家事再開の可能性について,回復期リハビリテーション病棟入院中に予測することが出来れば,在宅生活を見据えたリハビリテーションの立案に役立つと考える.
【目的】本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟退院後の脳卒中患者における家事再開を予測する実用的なモデルを開発することである.
【方法】本研究は前向きコホート研究である.首都圏にある4病院の回復期リハビリテーション病棟に入院している脳卒中患者を対象とした.Frenchay Activities Indexの家事6項目(食事の用意・食事の後片付け・洗濯・掃除や整頓・力仕事・買い物)を使用して,脳卒中発症前と退院3か月後の実施頻度を調査した.また,退院時に年齢や性別などの基本情報に加えて,麻痺の重症度や認知機能,歩行速度,自己効力感などの予測因子候補データを収集した.統計解析では,対象者を退院3か月後の家事実施状況に応じて,家事項目ごとに「家事再開群」と「非再開群」に分類し,基本情報や予測因子候補データについて単変量解析を実施し,群間比較を行った.その後,単変量解析にて有意差のあった項目を独立変数,「家事再開」・「非再開」を従属変数としたロジスティック回帰分析を行い,個々の家事再開・非再開を予測するモデルを構築した.各予測モデルの性能について,識別能はArea under the receiver operating characteristic curve,較正能はHosmer-Lemeshow検定を用いて評価した.本研究は,筆頭著者の所属する研究機関の倫理委員会の承認を得ている(承認番号18106).また,STROBE声明に準拠して実施した.
【結果】分析対象者は91名であった.年齢の中央値は72歳(四分位範囲:64-79歳)であり,女性が65名(71.4%)であった.「食事の用意」の予測モデルには歩行速度(オッズ比:1.05)と認知機能(オッズ比:1.29)が含まれた.「食事の後片付け」のモデルには歩行速度(オッズ比:1.04)が選択された.「洗濯」のモデルには歩行速度(オッズ比:1.06)と同居家族の人数(オッズ比:0.42)が選択された.「掃除や整頓」のモデルには歩行速度(オッズ比:1.06)が選択された.「力仕事」のモデルには歩行速度(オッズ比:1.03),認知機能(オッズ比:1.38),自己効力感(オッズ比:1.91)が選択された.買い物のモデルには歩行速度(オッズ比:1.05),年齢(オッズ比:0.94),同居家族の人数(オッズ比:0.61)が選択された.各モデルは良好な識別能と較正能を示した.
【考察】本予測モデルは,比較的簡単かつ短時間で評価できる信頼性と妥当性の高い尺度で構築された.したがって,本予測モデルは臨床現場で簡便かつ日常的に使用することができ,臨床家が脳卒中患者における家事再開のための目標設定と治療戦略を決定する上で有益な情報を与えるものと考える