[OA-7-3] 口述発表:脳血管疾患等 7やる気スコアの下位項目を用いたアパシー類型の予測
【背景】アパシーを類型化し,その特徴に合わせた介入が効果的とされている(Levy&Dubois,2006;Jonathan,2019).我々は,Near-infrared spectroscopy(NIRS)でアパシー患者の背外側前頭前野(DLPFC),前頭極(FP),前頭眼窩野(OFC)の血流量を計測,その計測値の分布を分析し,アパシーが3類型化されることを生理学的観点から確認してきた.しかし,NIRSを用いたアパシーの類型化は臨床では繁雑で活用しにくいため,より簡便な分類方法が求められる.臨床ではアパシーは,やる気スコアで評価されることが多い.やる気スコアは,簡便で,アパシーの有無を把握するには有用であるが,アパシーを類型化するような応用的な使用方法はこれまで示されていない.
【目的】本研究では,先行研究でNIRSを用いて分類されたアパシー3類型(「自己賦活障害型」「認知行動処理障害型」「情動感情障害型」)をやる気スコアの下位項目の得点から予測することを目的とする.
【方法】対象は,やる気スコアでアパシー陽性と判定された脳卒中患者22名とした.評価・計測は,NIRSを用い前頭前野の脳血流量を計測し,その計測値の分布を分析し,アパシーを3類型化した.本研究では,アパシーの類型をやる気スコアの下位項目から予測するため決定木分析を実施した.決定木分析は,注目している目的変数の属性に関して,重要かつ強く影響する解を説明変数の中から説明的かつ明示的に導き,それを木構造によるルールの組み合わせで表現するもので,予測と判別を行うデータマイニング手法である(奧ら,2004).本研究では,アパシーの3類型の該当可否を目的変数,やる気スコアの16の下位項目を説明変数とした.モデルの過学習を防止するため,親ノードの事例数を4,子ノードの事例数を2,階層の最大深度は3に設定した.なお本研究は,著者の所属する施設の倫理審査員会から承認を得たうえで実施した.
【結果】決定木分析の結果,「自己賦活障害型」の予測モデルは,一層Q9の「毎日何をしたらいいか誰かに言ってもらわなければなりませんか」,二層Q6の「将来のことについての計画や目標を持っていますか」,三層Q8の「毎日張り切って過ごしていますか」で生成され,Q9が3点もしくは0点の66.7%が,Q6が1点もしくは2点を加えると87.5%が,さらにQ8が3点を加えると100%の該当確率であった.「認知行動処理障害型」の予測モデルは,一層Q9の「毎日何をしたらいいか誰かに言ってもらわなければなりませんか」,二層Q3の「健康状態に関心がありますか」で生成され,Q9が1点もしくは2点の50.0%が,Q3が2点を加えると100%の該当確率であった.「情動感情障害型」の予測モデルは,一層Q8の「毎日張り切って過ごしていますか」,二層Q6の「将来のことについての計画や目標を持っていますか」,三層Q12の「誰かに言われないと何にもしませんか」で生成され,Q8が3点,2点,0点の22.2%が,Q6が3点を加えると60.0%の該当確率であった.
【考察】本結果から,アパシー3類型を予測するやる気スコアの下位項目は,「自己賦活障害型」がQ9,Q6,Q8で,「認知行動処理障害型」がQ9,Q3で,「情動感情障害型」がQ12,Q8,Q6であった.アパシーは,目標指向型行動(Goal-Directed Behavior)の工程の破綻で障害が起こり,障害の工程でアパシーを3つの類型に分類する(Stuss et al,2002).また,アパシー3類型は,その類型ごとの特徴に合わせた介入方法も提示されている(Levy R et al, 2006).臨床においてもアパシー患者をやる気スコアで類型化し,その特徴に合わせた介入は,アパシー改善の効率化に繋がる可能性があると考えられる.
【目的】本研究では,先行研究でNIRSを用いて分類されたアパシー3類型(「自己賦活障害型」「認知行動処理障害型」「情動感情障害型」)をやる気スコアの下位項目の得点から予測することを目的とする.
【方法】対象は,やる気スコアでアパシー陽性と判定された脳卒中患者22名とした.評価・計測は,NIRSを用い前頭前野の脳血流量を計測し,その計測値の分布を分析し,アパシーを3類型化した.本研究では,アパシーの類型をやる気スコアの下位項目から予測するため決定木分析を実施した.決定木分析は,注目している目的変数の属性に関して,重要かつ強く影響する解を説明変数の中から説明的かつ明示的に導き,それを木構造によるルールの組み合わせで表現するもので,予測と判別を行うデータマイニング手法である(奧ら,2004).本研究では,アパシーの3類型の該当可否を目的変数,やる気スコアの16の下位項目を説明変数とした.モデルの過学習を防止するため,親ノードの事例数を4,子ノードの事例数を2,階層の最大深度は3に設定した.なお本研究は,著者の所属する施設の倫理審査員会から承認を得たうえで実施した.
【結果】決定木分析の結果,「自己賦活障害型」の予測モデルは,一層Q9の「毎日何をしたらいいか誰かに言ってもらわなければなりませんか」,二層Q6の「将来のことについての計画や目標を持っていますか」,三層Q8の「毎日張り切って過ごしていますか」で生成され,Q9が3点もしくは0点の66.7%が,Q6が1点もしくは2点を加えると87.5%が,さらにQ8が3点を加えると100%の該当確率であった.「認知行動処理障害型」の予測モデルは,一層Q9の「毎日何をしたらいいか誰かに言ってもらわなければなりませんか」,二層Q3の「健康状態に関心がありますか」で生成され,Q9が1点もしくは2点の50.0%が,Q3が2点を加えると100%の該当確率であった.「情動感情障害型」の予測モデルは,一層Q8の「毎日張り切って過ごしていますか」,二層Q6の「将来のことについての計画や目標を持っていますか」,三層Q12の「誰かに言われないと何にもしませんか」で生成され,Q8が3点,2点,0点の22.2%が,Q6が3点を加えると60.0%の該当確率であった.
【考察】本結果から,アパシー3類型を予測するやる気スコアの下位項目は,「自己賦活障害型」がQ9,Q6,Q8で,「認知行動処理障害型」がQ9,Q3で,「情動感情障害型」がQ12,Q8,Q6であった.アパシーは,目標指向型行動(Goal-Directed Behavior)の工程の破綻で障害が起こり,障害の工程でアパシーを3つの類型に分類する(Stuss et al,2002).また,アパシー3類型は,その類型ごとの特徴に合わせた介入方法も提示されている(Levy R et al, 2006).臨床においてもアパシー患者をやる気スコアで類型化し,その特徴に合わせた介入は,アパシー改善の効率化に繋がる可能性があると考えられる.