[OA-8-1] 口述発表:脳血管疾患等 8自発性低下に対し,精神機能面を考慮した作業に焦点を当てた関わりで,言動変化が生じた脳卒中の一症例
【はじめに】脳卒中後の心理精神的問題は,リハビリの進行と回復を妨げ,Quality of Lifeを低下させると報告されている(Gaeteら,2008).今回,脳卒中後に自発性低下など精神機能障害を呈した事例を担当し,自己効力感に着目して関わり方を工夫した.結果,精神機能障害の改善,言動変化を認め,具体的な目標共有が可能となったため報告する.発表に関して,対象者から書面にて同意を得ている.
【対象・経過】対象:70歳代女性.主訴:手が動かない,何をするのも億劫.経過:左視床出血(血腫量約3.2mL)を発症して2病日よりリハビリ開始.14病日に回復期病棟へ転棟. Fugl-Meyer Assessment(以下FMA)上肢:8点.やる気スコア:18点と自発性低下を認め,Japan Stroke Scale DisturbanceScale(以下JSS-D):3.59であった.Aid for Decision Making in Occupation Choice(以下ADOC)を用いた目標設定は「全部やわ」と具体的な選択が困難であった.
<第1期>電気刺激併用の機能指向的訓練を中心に行った時期(14〜23病日)
運動麻痺に対して,Integrated Volitional control Electrical Stimulator(以下IVES)の手指装着型電極にて,上肢,手指の促通反復運動を行った.手指は自動介助で横つまみによる物品操作練習を行った.
<第2期>インタラクションを工夫し,機能および課題指向型訓練を行った時期(24〜53病日)
機能向上を認めたが,抑うつ気分な言動を認め,精神機能障害の悪化が生じ自発性低下も持続していた.背景に身体機能低下に伴う自己効力感の低下が考えられ,練習の成果がより伝わる工夫や,エンカレッジメントを交えることが必要と考えた.方法は,自動肩関節屈曲の動画を適宜撮影し,角度が向上した際に以前の状態と比較できるようにした.また肩関節屈曲角度の向上がより分かるように,経時的変化をグラフで提示した.加えて,「少しずつ腕が挙がっているので,ペーパーを千切れるかもしれませんね」等,生活動作が連想しやすい声かけを行った.事例からは「動画は少しの変化でも分かりやすい」「紙が千切れるかもしれん」と発言があった.練習は,電気刺激併用の促通反復運動,自動介助で物品操作練習,機能向上に伴い後方リーチから課題指向型訓練を行った.
<第3期>目標の再設定後に修正CI療法を導入した時期(54〜174病日)
精神機能障害の改善に伴い,抑うつ気分な様子は消失.靴下を畳む,ペーパーを千切る等,生活での麻痺手使用を認め,テレビ鑑賞や読書を行う等,離床時間が拡大し自発性向上を認めた.またADOCでの目標再設定では具体的な選択が可能となり,それらの達成に向け,修正CI療法を行った.
【結果】(入院時→第1期終了時→第2期終了時→第3期終了時)
FMA上肢:8→13→41→48,Motor Activity Log(以下MAL)Amount of use(以下AOU):0→0→0.16→3.12,Quality of movement(以下QOM):0→0→0.16→3.08,やる気スコア:18→21→8→8,JSS-D:3.59→4.5→2.39→1.2 身体機能向上と並行して精神機能障害の改善を認め,更衣,整容など生活での麻痺手使用が可能となった.
【考察】FMA上肢のMinimal Clinically Important Difference(以下MCID)は9〜10点,MALのAOUは0.5点,QOMは1.0〜1.1点とされている.本事例はMCIDを超える変化を認め,意義のある介入が実施できたと考える.2期から3期にかけ,やる気スコア13点,JSS-D2.11の改善を認めてカットオフ値を下回り,抑うつ気分の改善や自発性向上を認めた.加えて初期に困難であった目標設定が具体的に可能となったことから,精神機能障害の改善は意味のあるものであったと考える.また,精神機能評価を指標とした目標設定時期の選定は,対象者の心理面に配慮した具体的な目標共有に繋がる可能性が示唆された.
【対象・経過】対象:70歳代女性.主訴:手が動かない,何をするのも億劫.経過:左視床出血(血腫量約3.2mL)を発症して2病日よりリハビリ開始.14病日に回復期病棟へ転棟. Fugl-Meyer Assessment(以下FMA)上肢:8点.やる気スコア:18点と自発性低下を認め,Japan Stroke Scale DisturbanceScale(以下JSS-D):3.59であった.Aid for Decision Making in Occupation Choice(以下ADOC)を用いた目標設定は「全部やわ」と具体的な選択が困難であった.
<第1期>電気刺激併用の機能指向的訓練を中心に行った時期(14〜23病日)
運動麻痺に対して,Integrated Volitional control Electrical Stimulator(以下IVES)の手指装着型電極にて,上肢,手指の促通反復運動を行った.手指は自動介助で横つまみによる物品操作練習を行った.
<第2期>インタラクションを工夫し,機能および課題指向型訓練を行った時期(24〜53病日)
機能向上を認めたが,抑うつ気分な言動を認め,精神機能障害の悪化が生じ自発性低下も持続していた.背景に身体機能低下に伴う自己効力感の低下が考えられ,練習の成果がより伝わる工夫や,エンカレッジメントを交えることが必要と考えた.方法は,自動肩関節屈曲の動画を適宜撮影し,角度が向上した際に以前の状態と比較できるようにした.また肩関節屈曲角度の向上がより分かるように,経時的変化をグラフで提示した.加えて,「少しずつ腕が挙がっているので,ペーパーを千切れるかもしれませんね」等,生活動作が連想しやすい声かけを行った.事例からは「動画は少しの変化でも分かりやすい」「紙が千切れるかもしれん」と発言があった.練習は,電気刺激併用の促通反復運動,自動介助で物品操作練習,機能向上に伴い後方リーチから課題指向型訓練を行った.
<第3期>目標の再設定後に修正CI療法を導入した時期(54〜174病日)
精神機能障害の改善に伴い,抑うつ気分な様子は消失.靴下を畳む,ペーパーを千切る等,生活での麻痺手使用を認め,テレビ鑑賞や読書を行う等,離床時間が拡大し自発性向上を認めた.またADOCでの目標再設定では具体的な選択が可能となり,それらの達成に向け,修正CI療法を行った.
【結果】(入院時→第1期終了時→第2期終了時→第3期終了時)
FMA上肢:8→13→41→48,Motor Activity Log(以下MAL)Amount of use(以下AOU):0→0→0.16→3.12,Quality of movement(以下QOM):0→0→0.16→3.08,やる気スコア:18→21→8→8,JSS-D:3.59→4.5→2.39→1.2 身体機能向上と並行して精神機能障害の改善を認め,更衣,整容など生活での麻痺手使用が可能となった.
【考察】FMA上肢のMinimal Clinically Important Difference(以下MCID)は9〜10点,MALのAOUは0.5点,QOMは1.0〜1.1点とされている.本事例はMCIDを超える変化を認め,意義のある介入が実施できたと考える.2期から3期にかけ,やる気スコア13点,JSS-D2.11の改善を認めてカットオフ値を下回り,抑うつ気分の改善や自発性向上を認めた.加えて初期に困難であった目標設定が具体的に可能となったことから,精神機能障害の改善は意味のあるものであったと考える.また,精神機能評価を指標とした目標設定時期の選定は,対象者の心理面に配慮した具体的な目標共有に繋がる可能性が示唆された.