[OC-1-1] 口述発表:呼吸器疾患 1慢性呼吸器疾患に対して座位での作業活動により身体活動量の向上が得られた一例
【はじめに】
慢性呼吸器疾患患者は,呼吸障害による呼吸困難などの症状により,身体活動量(以下,PA)が低下するとされている.PAの低下は骨格筋廃用をもたらし,さらなる呼吸困難を生じるという悪循環を導き,予後の悪化に繋がるため,PAの維持や向上が重要とされている.今回,びまん性汎細気管支炎(以下,DPB)により慢性I型呼吸不全を呈した症例に対し,臥床傾向となっていた入院中の余暇時間に座位での作業活動を導入したところ,PA向上が得られた一例を経験したため,報告する.なお,本症例には報告の主旨を説明し,同意を得た.
【症例紹介】
30代女性.10代で副鼻腔炎の手術を施行.X-7年,検診で胸部X線異常を指摘され,近医を受診.CTで気管支拡張像を認め,抗菌薬が開始となった.X-6年から喀痰が増加し,胸部X線で陰影増強を認めたため,大学病院へ紹介,DPBとの診断を受けた.以降は近医に通院していたが,X-2年より緩徐に肺機能の低下を認め,X-1年に労作時の低酸素血症が進行し,安静時0.5L/min,労作時3L/minで在宅酸素療法が開始となった.今回,X年に呼吸困難の増悪を認め,近医を受診.肺病変の進行を認めたため,精査加療目的に当院呼吸器内科へ紹介となった.3病日より作業療法を開始した.
【経過】
労作時の咳嗽や呼吸困難のため,トイレや食事以外は日中側臥位で過ごし,連続歩行距離は5m程度であり,機能的自立度評価表(以下,FIM)は94点,千住らのADL評価表(以下,NRADL)は22点(動作速度10点,息切れ6点,酸素流量 6点,連続歩行距離0点)であった.そのため,体位ドレナージ,呼吸介助などの排痰訓練や胸郭モビライゼーションなどのコンディショニングより開始した.5病日に気管支鏡検査施行し,抗菌薬が開始となった.8病日よりエルゴメータを使用し,座位での3W,3分間の下肢有酸素運動を開始した.呼吸困難は軽減が得られるも,臥床傾向が続いていたため,14病日より日中の抗重力肢位の時間延長を図るため,座位での塗り絵や写経の机上課題を導入した.疲労や呼吸困難のない範囲で,1日1~2時間程度の作業を入院中継続したところ,洗濯や売店での買い物など能動的な行動が増加し,院内の活動範囲が拡大した.30病日にはdesaturationなく連続200m歩行可能となり,48病日にはエルゴメータを10W,10分間で遂行可能となった.最終的にFIMは117点,NRADL は50点(動作速度23点,息切れ17点,酸素流量 6点,連続歩行距離4点)と改善が得られ,入院直前,シャワー浴に2時間程要していたが,30分以内で遂行可能となり,57病日に自宅退院となった.
【考察】
重度の呼吸障害による息切れや呼吸困難はPAの低下を来しやすいとされている.また,先行研究でも,入院は様々な制約を受ける環境であり,患者は余暇活動のほとんどを居室で非活動的に過ごしていることが報告されており,本症例においても,日中の多くの時間を臥床状態で過ごしており,PAの低下を呈していた.今回,余暇時間における抗重力肢位での作業活動を導入したことで,臥床時間が減少し,身体機能の維持,能動的な行動の増加,円滑なADLの拡大に繋がり,PAの向上に至ったと考えられた.
慢性呼吸器疾患患者は,呼吸障害による呼吸困難などの症状により,身体活動量(以下,PA)が低下するとされている.PAの低下は骨格筋廃用をもたらし,さらなる呼吸困難を生じるという悪循環を導き,予後の悪化に繋がるため,PAの維持や向上が重要とされている.今回,びまん性汎細気管支炎(以下,DPB)により慢性I型呼吸不全を呈した症例に対し,臥床傾向となっていた入院中の余暇時間に座位での作業活動を導入したところ,PA向上が得られた一例を経験したため,報告する.なお,本症例には報告の主旨を説明し,同意を得た.
【症例紹介】
30代女性.10代で副鼻腔炎の手術を施行.X-7年,検診で胸部X線異常を指摘され,近医を受診.CTで気管支拡張像を認め,抗菌薬が開始となった.X-6年から喀痰が増加し,胸部X線で陰影増強を認めたため,大学病院へ紹介,DPBとの診断を受けた.以降は近医に通院していたが,X-2年より緩徐に肺機能の低下を認め,X-1年に労作時の低酸素血症が進行し,安静時0.5L/min,労作時3L/minで在宅酸素療法が開始となった.今回,X年に呼吸困難の増悪を認め,近医を受診.肺病変の進行を認めたため,精査加療目的に当院呼吸器内科へ紹介となった.3病日より作業療法を開始した.
【経過】
労作時の咳嗽や呼吸困難のため,トイレや食事以外は日中側臥位で過ごし,連続歩行距離は5m程度であり,機能的自立度評価表(以下,FIM)は94点,千住らのADL評価表(以下,NRADL)は22点(動作速度10点,息切れ6点,酸素流量 6点,連続歩行距離0点)であった.そのため,体位ドレナージ,呼吸介助などの排痰訓練や胸郭モビライゼーションなどのコンディショニングより開始した.5病日に気管支鏡検査施行し,抗菌薬が開始となった.8病日よりエルゴメータを使用し,座位での3W,3分間の下肢有酸素運動を開始した.呼吸困難は軽減が得られるも,臥床傾向が続いていたため,14病日より日中の抗重力肢位の時間延長を図るため,座位での塗り絵や写経の机上課題を導入した.疲労や呼吸困難のない範囲で,1日1~2時間程度の作業を入院中継続したところ,洗濯や売店での買い物など能動的な行動が増加し,院内の活動範囲が拡大した.30病日にはdesaturationなく連続200m歩行可能となり,48病日にはエルゴメータを10W,10分間で遂行可能となった.最終的にFIMは117点,NRADL は50点(動作速度23点,息切れ17点,酸素流量 6点,連続歩行距離4点)と改善が得られ,入院直前,シャワー浴に2時間程要していたが,30分以内で遂行可能となり,57病日に自宅退院となった.
【考察】
重度の呼吸障害による息切れや呼吸困難はPAの低下を来しやすいとされている.また,先行研究でも,入院は様々な制約を受ける環境であり,患者は余暇活動のほとんどを居室で非活動的に過ごしていることが報告されており,本症例においても,日中の多くの時間を臥床状態で過ごしており,PAの低下を呈していた.今回,余暇時間における抗重力肢位での作業活動を導入したことで,臥床時間が減少し,身体機能の維持,能動的な行動の増加,円滑なADLの拡大に繋がり,PAの向上に至ったと考えられた.