[OD-2-1] 口述発表:運動器疾患 2無床診療所における屈筋腱一次修復後の後療法の現状と課題
【はじめに】
屈筋腱一次修復後の後療法は,早期運動療法の良好な治療成績が数多く報告されている.早期運動療法は,再断裂や癒着のリスクから,入院による患者管理が推奨されている.本報告では,無床診療所である当院で行っている屈筋腱損傷修復後の後療法の現状と課題を報告する.
【対象と方法】
2017年以降に手指屈筋腱一次修復後に,早期運動療法を行った13例16指のうち,術後3か月以上経過観察が可能であった7例7指を対象とした.対象者には使用する情報に関して全例より同意は得ている.男性3名,女性4名で,平均年齢は37.9歳,示指2指,中指1指,環指3指,小指1指であった.国際Zone分類はZone Iが2指,Zone IIが5指であった.腱修復の縫合法は6 strandsが6指,4 strandsが1指で全て端々縫合可能であった.合併症は4指に神経損傷を認めた.追加手術は腱剥離が2指に施行された.全例,術後2日以内に背側伸展制限装具(以下DEBS)を作製装着し,装具内で手指の自動伸展と自動屈曲を行う早期自動屈曲・伸展療法,あるいは,ゴム牽引による手指の他動屈曲と装具内での自動伸展を行うKleinert改良法のいずれかを行った.また両法に加えてPIP関節とDIP関節の他動運動を個々に行うDuran法と他動屈曲自動保持運動も併用した.2020年まではDEBSはMP関節屈曲60°・手関節掌屈20°で,装具内で手指が完全伸展できるように作製していた.2021年より腱滑走距離増大のため,症例に応じてMP関節の屈曲角度を40~50°・手関節掌屈角度を0~10°に設定するようにした.また,手指自動伸展時にDEBSが遠位に移動しないように,手関節部で両側縁を掌側へ折り曲げてロックがかかるように変更した.術後3週以降の練習プログラムは,監視下でDEBSを外して手関節0°を保った状態で手指の自動運動や他動屈曲自動保持運動を開始し,腱固定効果を利用した手関節と手指の共同運動を導入した.術後6週では,DEBSは夜間や不安な時のみとし,PIP・DIP関節各々のブロッキング練習を開始した.また,必要に応じて屈曲矯正用装具を導入した.術後8週でDEBSは完全除去し,12週より抵抗運動を行った.
【結果】
1例1指で術後3週目に再断裂を認めた.他の6指はStricklandの評価基準では,平均77.0%で,優4指,可2指あった.PIP関節の平均伸展制限は3.7°,屈曲角度は98.6°,DIP関節の平均伸展制限は5.7°,屈曲角度は45.3°であった.また後療法変更の前後での比較では,2020年までの3指はStricklandの評価で優1指,可2指で,2021年以降の3指はいずれも優であった.
【考察】
当院において3か月以上経過観察が可能であった手指屈筋腱一次修復後の症例は,5年間で12例15指中6例6指と決して多くはない.しかし,成績向上のためにDEBSの変更・調整などわずかな変更を行っただけでも成績向上する傾向が見られた.これらは術後3~4週以内にPIP関節の伸展角度を獲得することが,手指屈筋腱修復後の治療を好成績にする因子とされる報告をもとに行った変更である.
手指屈筋腱一次修復後の後療法は成績良好な報告の増加に伴い,早期運動療法が主流となりつつある.屈筋腱一次修復後の後療法における早期運動の成績の優位性は否定する材料は見当たらないが,その反面再断裂のリスクは表裏一体で術後早期は入院管理下における訓練が推奨されている.今回生じた再断裂指も,直前までは可動域は良好であったが,自己判断で装具を外したことから起因していた.
今後の課題は無床診療所での屈筋腱一次修復後のようにリスクを伴う傷病群の患者管理方法の確立を検討し,かつ無床診療所での限界を検討して適応を明確にできればと考えている.
屈筋腱一次修復後の後療法は,早期運動療法の良好な治療成績が数多く報告されている.早期運動療法は,再断裂や癒着のリスクから,入院による患者管理が推奨されている.本報告では,無床診療所である当院で行っている屈筋腱損傷修復後の後療法の現状と課題を報告する.
【対象と方法】
2017年以降に手指屈筋腱一次修復後に,早期運動療法を行った13例16指のうち,術後3か月以上経過観察が可能であった7例7指を対象とした.対象者には使用する情報に関して全例より同意は得ている.男性3名,女性4名で,平均年齢は37.9歳,示指2指,中指1指,環指3指,小指1指であった.国際Zone分類はZone Iが2指,Zone IIが5指であった.腱修復の縫合法は6 strandsが6指,4 strandsが1指で全て端々縫合可能であった.合併症は4指に神経損傷を認めた.追加手術は腱剥離が2指に施行された.全例,術後2日以内に背側伸展制限装具(以下DEBS)を作製装着し,装具内で手指の自動伸展と自動屈曲を行う早期自動屈曲・伸展療法,あるいは,ゴム牽引による手指の他動屈曲と装具内での自動伸展を行うKleinert改良法のいずれかを行った.また両法に加えてPIP関節とDIP関節の他動運動を個々に行うDuran法と他動屈曲自動保持運動も併用した.2020年まではDEBSはMP関節屈曲60°・手関節掌屈20°で,装具内で手指が完全伸展できるように作製していた.2021年より腱滑走距離増大のため,症例に応じてMP関節の屈曲角度を40~50°・手関節掌屈角度を0~10°に設定するようにした.また,手指自動伸展時にDEBSが遠位に移動しないように,手関節部で両側縁を掌側へ折り曲げてロックがかかるように変更した.術後3週以降の練習プログラムは,監視下でDEBSを外して手関節0°を保った状態で手指の自動運動や他動屈曲自動保持運動を開始し,腱固定効果を利用した手関節と手指の共同運動を導入した.術後6週では,DEBSは夜間や不安な時のみとし,PIP・DIP関節各々のブロッキング練習を開始した.また,必要に応じて屈曲矯正用装具を導入した.術後8週でDEBSは完全除去し,12週より抵抗運動を行った.
【結果】
1例1指で術後3週目に再断裂を認めた.他の6指はStricklandの評価基準では,平均77.0%で,優4指,可2指あった.PIP関節の平均伸展制限は3.7°,屈曲角度は98.6°,DIP関節の平均伸展制限は5.7°,屈曲角度は45.3°であった.また後療法変更の前後での比較では,2020年までの3指はStricklandの評価で優1指,可2指で,2021年以降の3指はいずれも優であった.
【考察】
当院において3か月以上経過観察が可能であった手指屈筋腱一次修復後の症例は,5年間で12例15指中6例6指と決して多くはない.しかし,成績向上のためにDEBSの変更・調整などわずかな変更を行っただけでも成績向上する傾向が見られた.これらは術後3~4週以内にPIP関節の伸展角度を獲得することが,手指屈筋腱修復後の治療を好成績にする因子とされる報告をもとに行った変更である.
手指屈筋腱一次修復後の後療法は成績良好な報告の増加に伴い,早期運動療法が主流となりつつある.屈筋腱一次修復後の後療法における早期運動の成績の優位性は否定する材料は見当たらないが,その反面再断裂のリスクは表裏一体で術後早期は入院管理下における訓練が推奨されている.今回生じた再断裂指も,直前までは可動域は良好であったが,自己判断で装具を外したことから起因していた.
今後の課題は無床診療所での屈筋腱一次修復後のようにリスクを伴う傷病群の患者管理方法の確立を検討し,かつ無床診療所での限界を検討して適応を明確にできればと考えている.