[OD-2-2] 口述発表:運動器疾患 2長母指伸筋腱再建術後に新型コロナウイルスに罹患し遠隔リハビリテーションおよびチームアプローチを実施した一症例
【はじめに】
長母指伸筋(以下EPL)腱再建術後のリハビリテーション(以下リハ)は,入院時の早期運動療法から通院による外来個別リハを経ることで良好な成績が報告されている. 今回我々はEPL腱再建術後に新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)に罹患し通常の入院個別リハを継続できなくなった症例に対し,代替手段としてビデオ通話を用いた遠隔リハ(以下遠隔リハ)および看護師とのチームアプローチによる取り組みで,良好な成績を得たので報告する.
【対象・方法】
症例は60歳代の女性,関節リウマチによる左EPL腱断裂から108日後に固有示指伸筋腱への腱移行術を施行した.術後1日目よりダイナミックスプリントを用いた早期運動療法を実施した.術後6日目に同室者がCOVID-19に罹患したため隔離となった.術後16日目に隔離室担当の理学療法士が個人防護服を着用し,ナースコールを使って作業療法士と連絡を取り合いながら最小限のリハを実施した.術後21日目に症例がCOVID-19に罹患し,遠隔リハ開始となった.遠隔リハはEPL腱損傷のリハ,疼痛評価,右手指および下肢の自主訓練指導などを15分ほど実施した.症例はCOVID-19に罹患したことで,先行きへの不安や悩みなどの精神的苦痛を抱えていた.15分ほどの遠隔リハでは,自主訓練の理解度や精神面の把握が十分に出来なかった.そこで担当看護師と自主訓練の頻度や強度,精神面の変化などの情報を共有するチームアプローチに取り組んだ.術後47日目に自宅退院となり,週1回の外来個別リハへ移行し,術後101日目にリハ終了となった.
【倫理的配慮】
発表にあたり,本症例からの同意および臨床倫理委員会の承認を得ている
【結果】
日本手外科学会の%TAMは術前91%,術後107%.母指伸筋腱機能度は術前20%,術後67%.Buck-Gramcko法での成績は良であった.母指MP関節自動伸展角は術前-28°,術後-10°,IP関節自動伸展角は術前6°,術後20°,握力は術前8.7kg,術後7.0kg,pulp pinch は術前0.9kg,術後1.1kg,Hand20は術前28点,術後16点であった.
【考察】
EPL再建術後のリハはEPL腱の近位および遠位滑走の確認,疼痛評価,スプリントの指導など多岐にわたり,患者の理解が得られるまでに十分な説明や指導が必要である.一方で本症例は術後6日目に隔離となり,通常の入院個別リハでの十分な説明や指導を行うことが出来なかったが,隔離室担当の理学療法士と協力した介入や音声と映像を介した遠隔リハにより腱修復過程に合わせた腱滑走の確認や疼痛評価,自主訓練の指導,作業活動の導入などを実施できた.また症例はCOVID-19の症状や隔離状態にあること,通常の入院個別リハが出来ないことなどで先行きへの不安や悩みなどの精神的苦痛を抱えていた.そこで担当看護師と症例の精神面や治療経過などの情報交換を密に行うチームアプローチを実施し,精神面への対応にあたった.以上のことから通常の入院個別リハを継続できなくなった症例であっても精神面の安定を保ち,遠隔リハにより腱損傷後リハのアドヒアランスとコンプライアンスを高めることが出来たことで,良好な成績が得られたと考える.
長母指伸筋(以下EPL)腱再建術後のリハビリテーション(以下リハ)は,入院時の早期運動療法から通院による外来個別リハを経ることで良好な成績が報告されている. 今回我々はEPL腱再建術後に新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)に罹患し通常の入院個別リハを継続できなくなった症例に対し,代替手段としてビデオ通話を用いた遠隔リハ(以下遠隔リハ)および看護師とのチームアプローチによる取り組みで,良好な成績を得たので報告する.
【対象・方法】
症例は60歳代の女性,関節リウマチによる左EPL腱断裂から108日後に固有示指伸筋腱への腱移行術を施行した.術後1日目よりダイナミックスプリントを用いた早期運動療法を実施した.術後6日目に同室者がCOVID-19に罹患したため隔離となった.術後16日目に隔離室担当の理学療法士が個人防護服を着用し,ナースコールを使って作業療法士と連絡を取り合いながら最小限のリハを実施した.術後21日目に症例がCOVID-19に罹患し,遠隔リハ開始となった.遠隔リハはEPL腱損傷のリハ,疼痛評価,右手指および下肢の自主訓練指導などを15分ほど実施した.症例はCOVID-19に罹患したことで,先行きへの不安や悩みなどの精神的苦痛を抱えていた.15分ほどの遠隔リハでは,自主訓練の理解度や精神面の把握が十分に出来なかった.そこで担当看護師と自主訓練の頻度や強度,精神面の変化などの情報を共有するチームアプローチに取り組んだ.術後47日目に自宅退院となり,週1回の外来個別リハへ移行し,術後101日目にリハ終了となった.
【倫理的配慮】
発表にあたり,本症例からの同意および臨床倫理委員会の承認を得ている
【結果】
日本手外科学会の%TAMは術前91%,術後107%.母指伸筋腱機能度は術前20%,術後67%.Buck-Gramcko法での成績は良であった.母指MP関節自動伸展角は術前-28°,術後-10°,IP関節自動伸展角は術前6°,術後20°,握力は術前8.7kg,術後7.0kg,pulp pinch は術前0.9kg,術後1.1kg,Hand20は術前28点,術後16点であった.
【考察】
EPL再建術後のリハはEPL腱の近位および遠位滑走の確認,疼痛評価,スプリントの指導など多岐にわたり,患者の理解が得られるまでに十分な説明や指導が必要である.一方で本症例は術後6日目に隔離となり,通常の入院個別リハでの十分な説明や指導を行うことが出来なかったが,隔離室担当の理学療法士と協力した介入や音声と映像を介した遠隔リハにより腱修復過程に合わせた腱滑走の確認や疼痛評価,自主訓練の指導,作業活動の導入などを実施できた.また症例はCOVID-19の症状や隔離状態にあること,通常の入院個別リハが出来ないことなどで先行きへの不安や悩みなどの精神的苦痛を抱えていた.そこで担当看護師と症例の精神面や治療経過などの情報交換を密に行うチームアプローチを実施し,精神面への対応にあたった.以上のことから通常の入院個別リハを継続できなくなった症例であっても精神面の安定を保ち,遠隔リハにより腱損傷後リハのアドヒアランスとコンプライアンスを高めることが出来たことで,良好な成績が得られたと考える.