第56回日本作業療法学会

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一般演題

運動器疾患

[OD-2] 一般演題:運動器疾患 2

Fri. Sep 16, 2022 1:20 PM - 2:20 PM 第4会場 (RoomA)

座長:秋山 恭延(浜松医科大学医学部附属病院)

[OD-2-4] 口述発表:運動器疾患 2CTSにおける末梢血流促進を目的としたリハビリテーションの即時効果

橋爪 航平1伊藤 雄也2阿部 拓馬1青木 陸1堀内 行雄2 (1慶友整形外科病院リハビリテーション科,2慶友整形外科病院整形外科)

【はじめに】 手根管症候群(以下CTS)は,正中神経領域の知覚障害,しびれ,疼痛,運動障害を生じる.先行研究より,末梢神経に血流障害が生じ,しびれや知覚障害の症状が出現しているとの報告がある.そこで,末梢血流の増加を促すリハビリテーションを実施することで,末梢の血流を改善し,しびれ,知覚障害を軽減することができるのではないかと推測した.本研究は,CTS症例を対象として,末梢血流促進のリハビリテーション介入前後でしびれ,知覚評価を実施し,リハビリテーションの即時効果を検討したので報告する.
【目的】 CTS症例におけるしびれ,知覚障害に対し,末梢血流促進のリハビリテーションの即時効果を明らかにすること.
【対象】 2020年6月から2020年12月までに当院にてCTSと診断された30例(男性11例,女性19例,平均年齢68.1±12歳)とした.上肢疾患,頚椎疾患,脳疾患,糖尿病の既往歴がある症例は除外した.対象となった症例には,本研究の目的・方法を説明し,同意を得た.
【方法】
1.末梢血流促進のリハビリテーションプログラム
温熱療法(ホットパック)を5分間,その後マッサージローラーを使用し,手掌・手指のマッサージを5分間実施した.
2.測定
リハビリテーション介入前後に知覚評価,しびれの聴取を実施した.知覚評価は,酒井医療社製セメスワインスタインモノフィラメント®(手用5本セット)を用いて,Semmes Weinstein Monofilament Test(以下SWT)を実施した.評価者は,日本ハンドセラピィ学会におけるSWT講習を修了した作業療法士1名が担当した.SWTは,評価マニュアルに準じた.SWTの結果をもとに,村岡らの方法に準じてSWTスコアを算出した.スコアの採点方法は,手掌面を含まない母指~環指橈側の正中神経領域を基節部,中節部,末節部で区分し11区画とした.触圧覚閾値について,赤3点,紫2点,青1点,緑0点を付与し,11区画の総和(0~33点)をスコアとした.しびれの評価を数値化するために,Visual Analog Scale(以下VAS)を用いて聴取した.
3.統計解析
統計学的解析はR3.6.3を使用し,介入前後におけるしびれとSWTスコアの比較には,対応のあるt検定を実施した.しびれとSWTスコアの相関関係は,Spearmanの順位相関係数を用いて検討した.
【結果】 しびれ(mm)の平均値(介入前/介入後)40.3±21.4/28.6±21.5,SWTスコア(点)の平均値(介入前/介入後)16.7±7.2/13.5±7.8であった.統計解析の結果,介入前後でしびれ,SWTスコアに有意差を認めた(p<0.01).しびれとSWTスコアの相関関係は介入前,介入後ともに中等度の相関関
係を認めた(介入前:r=0.42,p=0.024,介入後r=0.60,p=0.001).
【考察】 CTS症例に末梢血流促進のリハビリテーションを実施することで,即時的にしびれ,知覚障害の軽減が認められた.先行研究より,しびれ感と血流量は,血流量が減少するとしびれが出現し,血流の増加に伴って減少する傾向があることが示唆されている.本研究でも,末梢血流促進のプログラムを実施することで,血流の増加に伴い,しびれが軽減したのではないかと考える.しびれとSWTスコアに相関が認められたことから,CTSにおける知覚機能は,しびれが強いほど知覚機能が低下している可能性が示唆された.従って,知覚障害が軽減した要因として,しびれの改善に伴い,知覚障害の軽減が認められたのではないかと考える.