[OE-1-5] 口述発表:神経難病 1ALS診断後障害受容過程を経て目標立案に至った一例
【はじめに】障害受容過程は「ショック期」「否認期」「混乱期」「解決への努力期」「受容期」を経て,障害を克服していくと考えられている.今回, 筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)と診断を受けた50代女性(以下,症例)を担当した.ALSに対する先入観が強く,現実が受け止められない中で,認識転換を目的に関わり,自身で目標立案が行えた為,以下に報告する.倫理的配慮として本発表について本人に説明し紙面にて同意を得ている.
【症例紹介】50代女性.病前生活としては両親と3人暮らし(両親介助必要)でADL,IADL共に自立し,和裁士として仕事をしていた.楽観的だが不安が強く常に気遣う性格.X-2年,右下肢脱力出現.X-1年他院にて精査行い原因不明と診断.在宅生活していたが,転倒繰り返し,X年リハビリ目的でA病院入院.その後右上肢脱力出現.同年,検査目的で当院転院.精密検査の為B病院転院しALS診断,治療目的の為当院再入院.
【初回評価】厚生労働省重症度分類3. MMT(R/L):上肢3/4,下肢4 /4. 握力(R/L):9kg /5.7kg.FIM:83点. 精神面:OTや他者との関わりで表面上楽観的に振る舞っているが,ALSに対する先入観あり,現実逃避をしている状態.
【作業療法介入】
第1期:ショック期(発症1〜2週目)
傾聴を重きに受容姿勢で肯定的な関わりを実施.自身の事や家族の事を話すようになった.動作面では全般的に軽介助レベルではあるが,介助に依存的.ALSに対する先入観あり,不安や恐怖心強く, Dr.の病状説明は拒否.
第2期:否認期〜混乱期(発症3〜8週目)
身体機能低下と共に不安や恐怖心増強.動作面では更に介助依存的になる.ALSに対して「寝たきりで人工呼吸器つけて何もできない,人生の終わりというイメージがある」と発言あり.今後の生活イメージや目標を考える事ができず涙することが多い.ALSに対する先入観は更に強くなり, 時間をかけ不安内容を詳しく聴取しながら,気持ちに寄り添い受容姿勢での関わりを継続. Dr.の病状説明は拒否継続.
第3期:解決への努力期(発症9〜10週目)
「前よりもできなくなった」「何かをするのに時間がかかる」等発言あり.不安や恐怖心は継続しているが,動作面での意欲が向上.自身で行うことが増えた.受容姿勢での傾聴を継続し,OTと共に症例のdemandを少しずつ整理.認識転換の為,Dr.からの病状説明を提案するが拒否.
第4期:受容期(発症11〜12週目)更に身体機能低下し,周囲からの言葉にショックを受け,涙する日々が続く.今後の生活を見据えた福祉用具や生活に必要な動作方法を知識として提示.OTと共に症例のdemandを詳細に詰める.認識転換の為,再度Dr.からの病状説明を提案.「一緒に聞いてくれるなら話を聞きたい」「前に進まなきゃ駄目やね」との発言あり. Ns. OT同席の元, Dr.から病状説明を受け,障害受容ができ自宅復帰の目標立案が行えた.
【結果】厚生労働省重症度分類3. MMT(R/L):上肢2/3,下肢3/4. 握力(R/L):0kg/6.5kg. FIM:73点.精神面:病状説明後,ALSに対する認識転換ができ前向きな発言も多く,「自宅に帰りたい」という目標立案が行え,表情も明るく,笑顔が増えた.
【考察】上田らは「障害の受容とはあきらめでも居直りでもなく,障害に対する価値観(感)の転換であり,障害を持つことが自己の全体としての人間的価値観を低下させることではないことの認識と体得を通じて,恥の意識や劣等感を克服し,積極的な生活態度に転ずることである」と述べている. 今回,ALSに対する正しい知識を得たことで,病状説明に繋がり,障害受容や今後の目標立案が行えたと考える.
【症例紹介】50代女性.病前生活としては両親と3人暮らし(両親介助必要)でADL,IADL共に自立し,和裁士として仕事をしていた.楽観的だが不安が強く常に気遣う性格.X-2年,右下肢脱力出現.X-1年他院にて精査行い原因不明と診断.在宅生活していたが,転倒繰り返し,X年リハビリ目的でA病院入院.その後右上肢脱力出現.同年,検査目的で当院転院.精密検査の為B病院転院しALS診断,治療目的の為当院再入院.
【初回評価】厚生労働省重症度分類3. MMT(R/L):上肢3/4,下肢4 /4. 握力(R/L):9kg /5.7kg.FIM:83点. 精神面:OTや他者との関わりで表面上楽観的に振る舞っているが,ALSに対する先入観あり,現実逃避をしている状態.
【作業療法介入】
第1期:ショック期(発症1〜2週目)
傾聴を重きに受容姿勢で肯定的な関わりを実施.自身の事や家族の事を話すようになった.動作面では全般的に軽介助レベルではあるが,介助に依存的.ALSに対する先入観あり,不安や恐怖心強く, Dr.の病状説明は拒否.
第2期:否認期〜混乱期(発症3〜8週目)
身体機能低下と共に不安や恐怖心増強.動作面では更に介助依存的になる.ALSに対して「寝たきりで人工呼吸器つけて何もできない,人生の終わりというイメージがある」と発言あり.今後の生活イメージや目標を考える事ができず涙することが多い.ALSに対する先入観は更に強くなり, 時間をかけ不安内容を詳しく聴取しながら,気持ちに寄り添い受容姿勢での関わりを継続. Dr.の病状説明は拒否継続.
第3期:解決への努力期(発症9〜10週目)
「前よりもできなくなった」「何かをするのに時間がかかる」等発言あり.不安や恐怖心は継続しているが,動作面での意欲が向上.自身で行うことが増えた.受容姿勢での傾聴を継続し,OTと共に症例のdemandを少しずつ整理.認識転換の為,Dr.からの病状説明を提案するが拒否.
第4期:受容期(発症11〜12週目)更に身体機能低下し,周囲からの言葉にショックを受け,涙する日々が続く.今後の生活を見据えた福祉用具や生活に必要な動作方法を知識として提示.OTと共に症例のdemandを詳細に詰める.認識転換の為,再度Dr.からの病状説明を提案.「一緒に聞いてくれるなら話を聞きたい」「前に進まなきゃ駄目やね」との発言あり. Ns. OT同席の元, Dr.から病状説明を受け,障害受容ができ自宅復帰の目標立案が行えた.
【結果】厚生労働省重症度分類3. MMT(R/L):上肢2/3,下肢3/4. 握力(R/L):0kg/6.5kg. FIM:73点.精神面:病状説明後,ALSに対する認識転換ができ前向きな発言も多く,「自宅に帰りたい」という目標立案が行え,表情も明るく,笑顔が増えた.
【考察】上田らは「障害の受容とはあきらめでも居直りでもなく,障害に対する価値観(感)の転換であり,障害を持つことが自己の全体としての人間的価値観を低下させることではないことの認識と体得を通じて,恥の意識や劣等感を克服し,積極的な生活態度に転ずることである」と述べている. 今回,ALSに対する正しい知識を得たことで,病状説明に繋がり,障害受容や今後の目標立案が行えたと考える.