第56回日本作業療法学会

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一般演題

神経難病

[OE-2] 一般演題:神経難病 2

Sat. Sep 17, 2022 11:20 AM - 12:20 PM 第5会場 (RoomB)

座長:麦井 直樹(金沢大学附属病院)

[OE-2-1] 口述発表:神経難病 2末梢神経障害に対してCI療法を中心とした介入を行いADLと調理を獲得した事例

荻野 貴也1佐藤 光1 (1IMSグループ医療法人社団明芳会イムス横浜東戸塚総合リハビリテーション病院)

【はじめに】帯状疱疹後の運動麻痺は3-6ヶ月で約80%は正常に回復するが,薬物による鎮痛とリハビリテーション(リハ)が重要と言われている.帯状疱疹後の運動麻痺はADLへの影響を多く及ぼすと言われており,病期に応じたリハが重要になるが活動に着目した報告は少ない.今回,帯状疱疹による腕神経叢麻痺を呈し,麻痺手の使用頻度と質の低下を認め,ADLや主婦としての役割であった調理が困難な事例を担当した.事例に対してconstraint-induced movement therapy(CI療法)を中心とした複合療法を実施した結果,ADLや調理で麻痺手の使用が認められ,主婦としての役割の再獲得に繋がった為報告する.尚,報告に際して事例から同意を得ている.
【事例紹介】50代女性.右上肢に帯状疱疹後の腕神経叢麻痺を認め,36病日目に当院の回復期病棟へ入院.病棟内ADLは自立.右上肢のC5・C6領域にNRS8点の神経痛と痺れを認めた.ARAT19点.BBT25個.手指の機能は保たれていたが「右手が使えないから食事,整容,調理は左手を使っている」と聞かれ,MALはAOU2.4点,QOM1.8点であった.認知機能はMMSE-J30点で全般的に問題はなかった.
【介入経過】
<介入初期>37日-77日
初回面接で食事,整容での麻痺手使用の希望が聞かれた為,促通反復療法(RFE)にて顔へのリーチを目的とした肩関節屈曲,外旋を実施.Shapingでは下方での肩関節屈曲と外旋を伴う物品操作を行い,機能向上に併せてTask-practiceを導入し,食事で口までのリーチ,整容では整髪を実施.自主練習やHome skill assignmentで挙げた項目に対して「動きが正しいか不安」と聞かれた為,事例のiPadで課題の撮影をし,確認しながらProblem Solvingを実施した.それに応じて事例から「食事の時に左手で支えながらなら右手で食べれた」等聞かれた.
<介入中期>78日-107日
訓練中に「食事と整容の時に高い場所の道具が取れないから左手を使う」と発言が聞かれた.神経痛がNRS3点と軽減し,肩関節の屈曲角度が向上した為,FESを併用しRFEとShapingにて肩関節屈曲・外旋の機能向上を図った.Task-practiceではコップ・整容道具へのリーチを行なった事で「テーブルの高さまでは届いたから食事と整容は道具の準備から右手を使っている」との発言や生活場面での使用が見られた.
<介入後期>108日-139日
ADL場面で麻痺手の使用が可能となった為調理動作を実施したが,麻痺手の空間保持が困難であり「包丁は持てるけど右肩が疲れる」と聞かれた.その為Shapingにて麻痺手の空間保持時間の延長を目標に訓練を実施.Task-practiceでは洗い物を棚へ置く等の一連の調理動作を中心に介入した事で「長時間の調理は疲れるけど休みながらできた」「掃除や洗濯も低い位置であれば休まずに右手でできるかも」と自ら方法を考えて新たな活動へ挑戦する様子が伺えた.
【結果】ARAT56点.BBT50個.MALAOU4.6点,QOM4.5点と生活での使用頻度と質の向上を認め,麻痺手でのADLと調理動作の獲得に至った.
【考察】帯状疱疹後の運動麻痺は病期に応じたリハが重要と言われている.また,MALのAOUが2.5点未満では学習性不使用に陥る可能性があると言われている.本事例の運動麻痺は軽度であったが使用頻度の低下を認め,学習性不使用に陥る可能性があった.その為,病期に応じてCI療法を中心とした複合的な介入をした結果,行動変容が促され麻痺手の使用頻度の向上や主婦としての役割の再獲得に繋がったと考える.