第56回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

神経難病

[OE-3] 一般演題:神経難病 3

2022年9月17日(土) 13:40 〜 14:40 第5会場 (RoomB)

座長:橋本 弘子(森ノ宮医療大学)

[OE-3-1] 口述発表:神経難病 3筋ジストロフィー患者の就労状況と就労の困難感に関する調査

山本 彩花12小林 隆司1水野 勝広2 (1東京都立大学大学院人間健康科学研究科 作業療法科学域,2国立精神・神経医療研究センター病院身体リハビリテーション部)

【目的】筋ジストロフィー(Muscular Dystrophy:MD)は身体の筋肉が崩壊し,再生しにくいという特徴を持つ疾患である.MDの生命予後は,病型によって異なるが,近年の医療技術の発展の結果延長しつつある.寿命の延長により学校教育卒業後,進路の選択肢は増え,就職するMD患者も増えてきている.国内のMDの就労に関する調査は,2007年に日本筋ジストロフィー協会が行って以降14年間行われていない.その為,本研究では,現在の就労状況と就労に関する困りごとについて調査し,MDの就労において求められている支援とその課題を検討することを目的とした.
【方法】令和3年度東京都立大学荒川キャンパス研究倫理委員会において承認を得て(承認番号:21004)就労状況に関するアンケートと職業リハビリテーション質問紙(Work Rehabilitation Questionnaire:WORQ)を用いてオンラインアンケートを行った.対象者はMDと関連疾患として脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)を含めた18歳以上の者とした.分析は,就労の有無を目的変数としたロジスティック回帰分析と就労に関する困りごとについて計量テキスト分析を行った.
【結果】回答があった89名の内,アンケートの最後の項目まで回答を完了した50名を分析対象とした.50名の内,現在就労しているのは28名(56%),就労していないと答えたのは22名(44%)であった.また,就労の有無を目的変数とした二項ロジスティック回帰分析の結果,WORQ合計のみ就労の有無と有意な関連を認めた(p<0.05).就労に関する困りごとは計量テキスト分析の結果,「就労中のヘルパー利用が出来ない」,「体の状態に見合う求人の不足」,「体力・活動に合う通勤・勤務」,「現在の身体で働くことの責任・不安」,「リモートや車通勤・収入面等の障害支援の増加希望」という5つのサブグラフが抽出された.
【考察】先行研究と比較し,就労している割合と在宅就労の割合は増加しており,就労しているMD患者は大きく増加している可能性が示唆された.WORQ合計のみ就労の有無と有意な関連を認め,心身機能・活動参加に対する自己評価は就労の有無に関与している可能性が考えられた.また,就労に関する困りごとは抽出された各サブグラフに対する支援が求められていることが示唆され,これら対する支援について検討が必要と考えた.
【結論】本研究で得られた回答数はMD全体の母集団を網羅する数には及ばず,過度に一般化できない為,解釈は慎重に行う必要があるが,本研究はMDの就労実態の理解とOTに求められている就労支援と支援の課題を検討する一助となると考える.