[OF-2-1] 口述発表:がん 2終末期がん患者の退院時の日常生活動作及び看取りの予測因子の検討
【背景】
近年,終末期がん患者に対するリハビリテーション(リハ)は広く行われるようになってきている.しかし,終末期がん患者は全身状態の問題が大きいため,日常生活動作(ADL)の改善に難渋することが多く,院内で看取りになる場合も少なくない.
【目的】
終末期がん患者において,初回評価時に得られた情報から退院時のADL,院内での看取りを予測する手がかりを検討し,患者の状態に合わせたリハ目標やプログラムの立案に役立つ視点を提示することを目的とした.
【方法】
研究デザインは後方視的観察研究とした.本研究はオプトアウトを使用し,当院倫理委員会で承認を得て実施した.2019年1月から2020年3月までに当院でリハ依頼された入院中の終末期がん患者102名(消化器56名,肺31名,乳腺4名,前立腺4名,膀胱3名,その他4名)を対象とした.尚,当院は一般病床であり,緩和ケア病棟入院料は算定していない.対象患者は症状マネジメントを目的に入院し,手術,放射線,化学療法は実施されていない.年齢,性別,リハ介入までの期間,在院日数,初回評価時の血清アルブミン(ALB),C反応性タンパク(CRP),Body Mass Index(BMI),Functional Independence Measure(FIM)の運動項目(FIM-M)と認知項目(FIM-C),Palliative Prognostic Index(PPI),骨転院の有無,退院時FIM合計を診療録から収集した.
院内で看取りとなった28名を除いた74名について,退院時FIM合計を従属変数,リハ初回評価・情報を独立変数とした重回帰分析を実施した.
次に,院内で看取りとなった患者を含めた102名については,各連続変数に正規性を認めなかったため, Mann-Whitney U検定,χ2検定を使用し,看取り/非看取りで2群間比較を実施した.有意差のあった項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を実施し,院内で看取りとなる因子を抽出した.抽出された因子に対し,受信者動作特性曲線(ROC曲線)でカットオフ値を求めた.有意水準は5%未満とした.
【結果】
院内で看取りとなった患者を除外した重回帰分析の結果,ALB(P=0.02)とFIM-M(P<0.01)が退院時FIM合計に関連する因子として抽出され,自由度調整済み決定係数は0.57,予測式は,退院時FIM合計=10.80+7.54×ALB+1.03×初回評価時FIM-Mであった.看取り/非看取りの2群間比較では,ALB,CRP,リハ介入までの期間,在院日数,FIM-M,PPIに有意差が認められた.ロジスティック回帰分析では,PPIが因子として抽出され(オッズ比2.30,95%信頼区間1.56-3.39,P<0.01),ROC曲線によるPPIのカットオフ値は4.5(感度0.86,特異度0.72,AUC 0.89,95%信頼区間 0.82-0.95)であった.
【考察】
重回帰分析の結果,退院時FIM合計は初回評価時のALBとFIM-Mが関連していた.看取り/非看取りを従属変数としたロジスティック回帰分析では生命予後の指標であるPPIが抽出された.ALBは悪液質の指標としても活用されている.終末期がん患者のADLの予測と院内の看取りについて,悪液質と生命予後の重要性を示唆する結果であった.本研究で求めた予測式とカットオフ値は,例えば,廃用症候群を予防しADLの改善を目指すのか,ポジショニング等の症状緩和や介助指導を中心に介入するのか,リハ目標やプログラムを立案する上で参考になる視点と考える.
近年,終末期がん患者に対するリハビリテーション(リハ)は広く行われるようになってきている.しかし,終末期がん患者は全身状態の問題が大きいため,日常生活動作(ADL)の改善に難渋することが多く,院内で看取りになる場合も少なくない.
【目的】
終末期がん患者において,初回評価時に得られた情報から退院時のADL,院内での看取りを予測する手がかりを検討し,患者の状態に合わせたリハ目標やプログラムの立案に役立つ視点を提示することを目的とした.
【方法】
研究デザインは後方視的観察研究とした.本研究はオプトアウトを使用し,当院倫理委員会で承認を得て実施した.2019年1月から2020年3月までに当院でリハ依頼された入院中の終末期がん患者102名(消化器56名,肺31名,乳腺4名,前立腺4名,膀胱3名,その他4名)を対象とした.尚,当院は一般病床であり,緩和ケア病棟入院料は算定していない.対象患者は症状マネジメントを目的に入院し,手術,放射線,化学療法は実施されていない.年齢,性別,リハ介入までの期間,在院日数,初回評価時の血清アルブミン(ALB),C反応性タンパク(CRP),Body Mass Index(BMI),Functional Independence Measure(FIM)の運動項目(FIM-M)と認知項目(FIM-C),Palliative Prognostic Index(PPI),骨転院の有無,退院時FIM合計を診療録から収集した.
院内で看取りとなった28名を除いた74名について,退院時FIM合計を従属変数,リハ初回評価・情報を独立変数とした重回帰分析を実施した.
次に,院内で看取りとなった患者を含めた102名については,各連続変数に正規性を認めなかったため, Mann-Whitney U検定,χ2検定を使用し,看取り/非看取りで2群間比較を実施した.有意差のあった項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を実施し,院内で看取りとなる因子を抽出した.抽出された因子に対し,受信者動作特性曲線(ROC曲線)でカットオフ値を求めた.有意水準は5%未満とした.
【結果】
院内で看取りとなった患者を除外した重回帰分析の結果,ALB(P=0.02)とFIM-M(P<0.01)が退院時FIM合計に関連する因子として抽出され,自由度調整済み決定係数は0.57,予測式は,退院時FIM合計=10.80+7.54×ALB+1.03×初回評価時FIM-Mであった.看取り/非看取りの2群間比較では,ALB,CRP,リハ介入までの期間,在院日数,FIM-M,PPIに有意差が認められた.ロジスティック回帰分析では,PPIが因子として抽出され(オッズ比2.30,95%信頼区間1.56-3.39,P<0.01),ROC曲線によるPPIのカットオフ値は4.5(感度0.86,特異度0.72,AUC 0.89,95%信頼区間 0.82-0.95)であった.
【考察】
重回帰分析の結果,退院時FIM合計は初回評価時のALBとFIM-Mが関連していた.看取り/非看取りを従属変数としたロジスティック回帰分析では生命予後の指標であるPPIが抽出された.ALBは悪液質の指標としても活用されている.終末期がん患者のADLの予測と院内の看取りについて,悪液質と生命予後の重要性を示唆する結果であった.本研究で求めた予測式とカットオフ値は,例えば,廃用症候群を予防しADLの改善を目指すのか,ポジショニング等の症状緩和や介助指導を中心に介入するのか,リハ目標やプログラムを立案する上で参考になる視点と考える.