第56回日本作業療法学会

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一般演題

がん

[OF-3] 一般演題:がん 3

Sat. Sep 17, 2022 10:10 AM - 11:10 AM 第5会場 (RoomB)

座長:下田佳央莉(群馬大学大学院)

[OF-3-3] 口述発表:がん 3乳癌術後のリンパ浮腫の重症度における危険因子の検討 第2報

坂下 慶多1辺土名 由美子1塚原 緑1藏並 勝1 (1大和市立病院)

【はじめに】
乳癌の手術で腋窩リンパ節郭清もしくはセンチネル生検された方では,リンパ浮腫が出現することがあり,QOLを損なう合併症の一つである.術後のリンパ浮腫の発症の危険因子は,腋窩リンパ節郭清,腋窩への放射線照射,術後の創部感染,術後のドレナージ期間,運動不足,肥満などが影響することが報告されている.リンパ浮腫の程度は様々であり,これまでリンパ浮腫の重症度における危険因子については報告されていない.リンパ浮腫の重症化予防を目的に,我々は第55回日本作業療法学会にて, リンパ浮腫の重症度を術後の左右周径差から軽症と重症に分け危険因子を検討した.上肢の左右周径差は個人差があることや術前・術後での体重変化を考慮して,今回改めてリンパ浮腫の重症度を術側の術前・術後の周径差と非術側の術前・術後の周径差の比較から分類して危険因子を再検討することとした.
【方法】
対象は,当院で2014年9月~2021年9月までに原発性乳癌に対しセンチネルリンパ節生検もしくは腋窩リンパ節郭清術を施行され,術後リンパ浮腫を発症した48例(平均年齢57.7±12.7).上肢の周径からリンパ浮腫軽症群と重症群に群分けした.そのうえで,リンパ浮腫の発症に関連する因子を参考にしてBMI,術式,郭清リンパ節個数等を後方視的に検討した.周径は,肘近位10cm・肘関節・肘遠位10cm・手関節・手掌をメジャーにて測定した.測定時期は,術前は手術前日,術後は外来作業療法依頼時とした.重症度の分類は,術側の術前・術後の周径差と非術側の術前・術後の周径差を比較し,1か所でも(1)1cm以上2㎝未満ある場合をリンパ浮腫の軽症(2)2cm以上を重症と定義した.それぞれの発症因子について,2群間で比較検討を行った.統計学的検討については,各項目においてカイ二乗検定またはt検定を行った.有意水準は5%未満とした.なお,倫理的配慮として本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
リンパ浮腫の軽症群は22例,重症群は26例であった.郭清リンパ節個数については,軽症群で9.6±5.1個,重症群で12.8±4.9個となり,2群間において有意差(P<0.05)を認めた.その他の項目では,有意な関係は認めなかった.手術時年齢は,軽症群で<65歳:16例,≧65歳:6例,重症群で<65歳:17例,≧65歳:9例.BMIでは,軽症群で<25:14例,≧25:8例,重症群で<25:14例,≧25:12例.術側と利き手の関係では,軽症群で同側が10例,反対側が12例,重症群で同側が13例,反対側が13例.術式では,軽症群でセンチネルリンパ節生検が3例,腋窩リンパ節郭清が19例,重症群でセンチネルリンパ節生検が1例,腋窩リンパ節郭清が25例.術後放射線療法では,軽症群で未実施が10例,実施が12例,重症群では未実施が10例,実施が16例.術後化学療法では,軽症群で未実施が13例,実施が9例,重症群では未実施7例,実施が19例.術後のドレナージ期間では,軽症群で7.2±2.6日,重症群で8.0±3.4日.手術から外来作業療法依頼までの期間は,軽症群で420.1±374.0日,重症群で370.0±259.3日.
【考察】
今回の結果から,郭清リンパ節個数については乳癌術後のリンパ浮腫の重症度における有意な危険因子であった.リンパ浮腫の重症化予防には,早期発見・早期治療が重要であり,郭清リンパ節個数が8個以上の方を術後1年半は定期的に経過観察する等フォローアップが必要であると考えられた.また,リンパ浮腫の重症度と郭清リンパ節個数が有意な関係であることは妥当な結果で,リンパ浮腫の定義として術前後周径差から分類することは信頼性が高いことを裏付けしている可能性があり,今後はリンパ浮腫の発症における危険因子について検討を進めたい.