[OF-3-5] 口述発表:がん 3下腹部自家組織による乳房再建術における作業療法の役割
【はじめに】近年,乳がんの手術では根治性とともに整容性が求められている.その結果,乳房再建に高い関心が寄せられるようになり,その術式も多様化している.下腹部自家組織による乳房再建術では,温かく柔らかい乳房が得られる一方,ドナーとなる腹部への侵襲は無視できない.術後はリスク管理のもと活動を維持しなければならないが,標準化されたリハビリテーションプログラムはない.また,社会復帰への影響も予想されるが,患者が社会生活でどのような問題を抱えているかについても不明な点が多い.我々はリハビリテーションプログラムを作成し,術後6か月まで継続的な支援を行っている.
【目的】下腹部自家組織による乳房再建術を受け,リハビリテーションを実施した患者の回復過程や社会生活で抱えている問題を明らかにする.さらに,乳房再建術後の患者に対する作業療法の役割について考察する.
【対象と方法】対象は2019年11月から2021年10月までに下腹部自家組織による乳房再建術を受けた乳がん患者である.プログラムは外来でのプレハビリテーションに始まり,手術後は翌日から開始して段階的に身体活動を上げていき,術後12週で終了する.患者には術後12週までリハビリテーション実施カレンダーを記録してもらい,プログラムの定着と継続を確認した.退院後は外来受診日に合わせ,術後2-3週,8-9週,11-12週,6か月に定期評価し,その後すべての活動を許可した.生活状況について聞き取りを行い,握力,腹直筋筋力(MMT),肩関節自動可動域,上肢障害度(Quick DASH),身体機能(SPPB),疼痛(NRS),健康関連QOL(EQ-5D)を評価した.
【結果】21例の女性(41-65歳:中央値47)が対象となった.一次二期再建15例,二次一期再建3例,二次二期再建3例で,術式は遊離腹直筋皮弁10例,有茎腹直筋皮弁8例,深下腹壁動脈穿通枝皮弁3例だった.上肢機能は全例が術後8-12週で術前レベルに回復したが,腹直筋筋力は半数が術後12週でも低下していた.QOLは「痛み/不快感」,「普段の活動」,「移動」の順に影響を受け,術後2-3週に最も低下していた.疼痛は再建乳房部よりも腹部に多く,車の運転,買い物,食事の支度など腹圧のかかる作業は術後8週まで困難さを感じていた.有職者は16例で,うち13例は術後16-116日(中央値29)で復職し,業務量を調整しながら勤務時間を延長していた.ほか,2例は病気休暇取得中で,1例は身体負荷の大きい職種のために復職を断念した.術後6か月を経過する頃には疼痛が残存していてもほとんどの患者がベースラインに戻ることができ,プログラムに関連する有害事象はなかった.
【考察】術後間もない時期は腹部の疼痛や疲労感など身体機能に関する訴えが多いため,姿勢や動作の指導が求められる.経過とともに就労,外出,趣味など活動・参加レベルの相談が増えるため,個々のライフスタイルの中に優先順位を設定しながら,その人らしい生活の再獲得が支援の目標となる.復職後は運動の時間確保が困難という意見があったが,方法や回数の調整を指導することで継続できた.また,カレンダーの記録や外来でのフィードバックはモチベーションの一助になったと考える.プログラムの大半が在宅自主訓練となるため,リスク管理をしながら継続させるには,退院後の支援が必要である.生活面で抱える問題を共有しやすい作業療法士による外来フォローアップは,身体機能の回復と円滑な社会復帰のために重要な役割を果たせると考える.
【目的】下腹部自家組織による乳房再建術を受け,リハビリテーションを実施した患者の回復過程や社会生活で抱えている問題を明らかにする.さらに,乳房再建術後の患者に対する作業療法の役割について考察する.
【対象と方法】対象は2019年11月から2021年10月までに下腹部自家組織による乳房再建術を受けた乳がん患者である.プログラムは外来でのプレハビリテーションに始まり,手術後は翌日から開始して段階的に身体活動を上げていき,術後12週で終了する.患者には術後12週までリハビリテーション実施カレンダーを記録してもらい,プログラムの定着と継続を確認した.退院後は外来受診日に合わせ,術後2-3週,8-9週,11-12週,6か月に定期評価し,その後すべての活動を許可した.生活状況について聞き取りを行い,握力,腹直筋筋力(MMT),肩関節自動可動域,上肢障害度(Quick DASH),身体機能(SPPB),疼痛(NRS),健康関連QOL(EQ-5D)を評価した.
【結果】21例の女性(41-65歳:中央値47)が対象となった.一次二期再建15例,二次一期再建3例,二次二期再建3例で,術式は遊離腹直筋皮弁10例,有茎腹直筋皮弁8例,深下腹壁動脈穿通枝皮弁3例だった.上肢機能は全例が術後8-12週で術前レベルに回復したが,腹直筋筋力は半数が術後12週でも低下していた.QOLは「痛み/不快感」,「普段の活動」,「移動」の順に影響を受け,術後2-3週に最も低下していた.疼痛は再建乳房部よりも腹部に多く,車の運転,買い物,食事の支度など腹圧のかかる作業は術後8週まで困難さを感じていた.有職者は16例で,うち13例は術後16-116日(中央値29)で復職し,業務量を調整しながら勤務時間を延長していた.ほか,2例は病気休暇取得中で,1例は身体負荷の大きい職種のために復職を断念した.術後6か月を経過する頃には疼痛が残存していてもほとんどの患者がベースラインに戻ることができ,プログラムに関連する有害事象はなかった.
【考察】術後間もない時期は腹部の疼痛や疲労感など身体機能に関する訴えが多いため,姿勢や動作の指導が求められる.経過とともに就労,外出,趣味など活動・参加レベルの相談が増えるため,個々のライフスタイルの中に優先順位を設定しながら,その人らしい生活の再獲得が支援の目標となる.復職後は運動の時間確保が困難という意見があったが,方法や回数の調整を指導することで継続できた.また,カレンダーの記録や外来でのフィードバックはモチベーションの一助になったと考える.プログラムの大半が在宅自主訓練となるため,リスク管理をしながら継続させるには,退院後の支援が必要である.生活面で抱える問題を共有しやすい作業療法士による外来フォローアップは,身体機能の回復と円滑な社会復帰のために重要な役割を果たせると考える.