[OF-4-6] 口述発表:がん 4右上肢類上皮肉腫に対する肩甲帯離断後の患者に対して振動刺激を伴うミラセラピーが幻肢痛の緩和に有用であった事例―
【はじめに】
ミラーセラピー(以下MT)とはRamachandranが考案した幻肢・片麻痺に対しての介入方法である.他方,振動刺激とMTの併用は外傷性切断の幻肢痛症例に実施し,幻肢痛改善に繋がった事例が報告されているが,腫瘍による肩甲帯離断後の幻肢痛に対しての報告は散見されない.今回,右上肢類上皮肉腫に対して右肩甲帯離断後,幻肢痛の症状が見られた症例に対してMTに加えて振動刺激を実施したところ幻肢痛の緩和が見られたため報告を行う.
【症例】
30代女性で,半年前から右上肢痛があり,前医にて画像上,上腕から前腕に広がる病変が確認された.病理診断にて類上皮肉種と確定診断となった..オピオイド鎮痛薬や鎮痛補助剤で疼痛管理行いながら,当センターで入院化学療法を2クール実施後に右肩帯離断術施行された.術後3日目からADL自立を目的に作業療法を開始した.なお事例報告において本人から書面で同意を得ている.
【介入】
術直後の疼痛管理は経過良好で作業療法開始直後も疼痛の訴えは聞かれなかった.術後10日目から徐々に幻肢痛の訴えが聞かれたため頓用でペンタゾシン注10mgを1日3回使用するようになった.本人は,ペンタゾシン注長期使用によるリスクは理解していたが,過去の痛み体験から痛みに対する不安もあり,使用を悩みながらも1日3回使用することが続いていた.術後15日目より幻肢痛に対してMTの介入を開始した.開始時,幻肢痛はNumerical Rating Scale(以下NRS)5であった.MT実施中はNRS2ま
で幻肢痛の改善が見られたが,終了後は数秒でNRS5まで増大した.術後17日目にMTに加えてハンディマッサージ器・音叉にて振動刺激を行った.刺激箇所は左側の上腕・前腕・手指に10分〜15分程度実施した.振動刺激実施中に本人から刺激箇所で痺れなどの不快症状が出現した際には休憩・終了とした.化学療法実施中,鎮痛薬投与中や投与後眠気が強い際には訓練休止とし本人の全身状態に合わせて継続的に介入を行った.
【結果】
MTに加えて振動刺激を併用した結果,NRS1まで幻肢痛は改善した.振動刺激の実施後も2分程度NRS1〜2で短時間の幻肢痛改善が見られ,本人からは「振動を当てると左手が右手(幻肢)の感覚に近づく」との訴えも聞かれた.幻肢痛のMT・振動刺激実施後での除痛時間は最大5分程度まで延長した.幻肢痛の頻度・強度は経過で徐々に減少し.術後50日目にペンタゾシン注からトラマドール塩酸塩に薬剤変更となった.術後65日目に自宅退院となり,退院時の幻肢痛は時折突発的に見られたが概ね消失した.退院時指導として幻肢痛が出現した際のMT・振動刺激の実施方法を本人・家族に伝えた.
【考察】
本症例は上肢全体に発生している類上皮肉腫のため,術前から神経障害性疼痛があった.さたに,根治術目的での肩甲骨離断術後,幻肢痛の訴えが強く聞かれた.幻肢痛が強く見られた理由として,腫瘍による神経障害性疼痛を発症してから手術まで約半年の期間が経過しており,疼痛に対して被刺激性が亢進していたことが考えられる.また,幻肢痛の機序は脳と切断肢の運動指令と感覚入力の矛盾によるとされている.今回の介入ではMTによる視覚的錯覚に加えて振動刺激による運動錯覚を行ったことが,切断肢の身体・運動イメージ再構築への相乗効果となり幻肢痛の緩和に影響を及ぼしたと考えられる.
ミラーセラピー(以下MT)とはRamachandranが考案した幻肢・片麻痺に対しての介入方法である.他方,振動刺激とMTの併用は外傷性切断の幻肢痛症例に実施し,幻肢痛改善に繋がった事例が報告されているが,腫瘍による肩甲帯離断後の幻肢痛に対しての報告は散見されない.今回,右上肢類上皮肉腫に対して右肩甲帯離断後,幻肢痛の症状が見られた症例に対してMTに加えて振動刺激を実施したところ幻肢痛の緩和が見られたため報告を行う.
【症例】
30代女性で,半年前から右上肢痛があり,前医にて画像上,上腕から前腕に広がる病変が確認された.病理診断にて類上皮肉種と確定診断となった..オピオイド鎮痛薬や鎮痛補助剤で疼痛管理行いながら,当センターで入院化学療法を2クール実施後に右肩帯離断術施行された.術後3日目からADL自立を目的に作業療法を開始した.なお事例報告において本人から書面で同意を得ている.
【介入】
術直後の疼痛管理は経過良好で作業療法開始直後も疼痛の訴えは聞かれなかった.術後10日目から徐々に幻肢痛の訴えが聞かれたため頓用でペンタゾシン注10mgを1日3回使用するようになった.本人は,ペンタゾシン注長期使用によるリスクは理解していたが,過去の痛み体験から痛みに対する不安もあり,使用を悩みながらも1日3回使用することが続いていた.術後15日目より幻肢痛に対してMTの介入を開始した.開始時,幻肢痛はNumerical Rating Scale(以下NRS)5であった.MT実施中はNRS2ま
で幻肢痛の改善が見られたが,終了後は数秒でNRS5まで増大した.術後17日目にMTに加えてハンディマッサージ器・音叉にて振動刺激を行った.刺激箇所は左側の上腕・前腕・手指に10分〜15分程度実施した.振動刺激実施中に本人から刺激箇所で痺れなどの不快症状が出現した際には休憩・終了とした.化学療法実施中,鎮痛薬投与中や投与後眠気が強い際には訓練休止とし本人の全身状態に合わせて継続的に介入を行った.
【結果】
MTに加えて振動刺激を併用した結果,NRS1まで幻肢痛は改善した.振動刺激の実施後も2分程度NRS1〜2で短時間の幻肢痛改善が見られ,本人からは「振動を当てると左手が右手(幻肢)の感覚に近づく」との訴えも聞かれた.幻肢痛のMT・振動刺激実施後での除痛時間は最大5分程度まで延長した.幻肢痛の頻度・強度は経過で徐々に減少し.術後50日目にペンタゾシン注からトラマドール塩酸塩に薬剤変更となった.術後65日目に自宅退院となり,退院時の幻肢痛は時折突発的に見られたが概ね消失した.退院時指導として幻肢痛が出現した際のMT・振動刺激の実施方法を本人・家族に伝えた.
【考察】
本症例は上肢全体に発生している類上皮肉腫のため,術前から神経障害性疼痛があった.さたに,根治術目的での肩甲骨離断術後,幻肢痛の訴えが強く聞かれた.幻肢痛が強く見られた理由として,腫瘍による神経障害性疼痛を発症してから手術まで約半年の期間が経過しており,疼痛に対して被刺激性が亢進していたことが考えられる.また,幻肢痛の機序は脳と切断肢の運動指令と感覚入力の矛盾によるとされている.今回の介入ではMTによる視覚的錯覚に加えて振動刺激による運動錯覚を行ったことが,切断肢の身体・運動イメージ再構築への相乗効果となり幻肢痛の緩和に影響を及ぼしたと考えられる.