[OH-1-2] 口述発表:精神障害 1摂食障害患者に対する精神科作業療法を含む入院治療が生活機能に及ぼす影響
【はじめに】
摂食障害の推定受診患者数は年々増加している.生命的危機から医療介入の緊急度は高く,治療可能な施設の増加が急がれる.一方で身体管理のみでなく関係構築や発症要因特定の難しさから治療が難渋する例が少なくない.また治療期間が長く再発率も高いことから医療財政の圧迫が懸念される. 摂食障害には包括的支援が必須であり,発症早期や入院治療においてもリハビリテーションの視点は重要である.しかし摂食障害治療ガイドラインでは,入院治療における作業療法についての標準化されたプログラムは示されておらず,摂食障害患者に対する精神科作業療法の効果検証は十分ではない.効果的な作業療法プログラムを作成するためには,摂食障害患者に対する精神科作業療法を含む入院治療が及ぼす影響について,包括的な視点における調査をする必要がある.
【目的】
摂食障害患者に対する精神科作業療法を含む入院治療が,生活機能,健康関連QOL,自己効力感に及ぼす影響を調査すること
【方法】
研究デザインはカルテによる後方視的調査研究.調査期間は2020年4月から2021年12月.研究対象は調査期間中に広島大学病院の精神科病棟で精神科作業療法を含む入院治療を受け,OT介入開始時とOT介入終了時ともにデータ測定が可能だったもの.対象疾患は国際疾患分類第10版のF32うつ病エピソード(以下F3圏)とF50摂食障害(以下F5圏).調査項目は基本属性として年齢,性別,疾患名,在院日数,測定データとして生活機能はWHODAS2.0,健康関連QOLはEQ-5D-5L:EuroQol 5 dimensions 5-level,自己効力感は一般セルフ・エフィカシー尺度(GSES:General Self-Efficacy Scale).統計解析方法は基本属性に対して単純集計にてF3圏とF5圏を比較し,測定データに対してSPSS vol.27.0を用いてWilcoxonの符号付き順位検定にてF3圏とF5圏それぞれのOT介入開始時とOT介入終了時を比較した(有意水準5%).測定データは広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:E-2408).
【結果】
対象者はF3圏8名,F5圏14名.平均年齢はF3圏57±8.7歳,F5圏26.1±8.7歳.性別はF3圏とF5圏とも全員女性.平均在院日数はF3圏60.2±37.0日,F5圏87.9±52.1日.測定データの平均点(OT介入開始時/OT介入終了時)は,WHODAS 2.0単純採点はF3圏107.2±30.6/88.2±34.6,F5圏60.1±11.2/59.1±11.4,EQ-5D-5L効用値はF3圏0.51±0.22/0.66±0.22,F5圏0.66±0.26/0.79±0.04.GSES標準化得点はF3圏35.4±8.6/37.3±8.8,,F5圏41.4±9.1/39.6±8.2.F5圏のWHODAS 2.0単純採点において,OT介入終了時はOT介入開始時に比べて有意に改善した(p<0.01).
【考察】
摂食障害患者の生活機能は精神科作業療法を含む入院治療によって有意に改善することが示唆された.摂食障害患者は飢餓状態により著しい生活機能障害を呈している症例も多く,入院治療により身体機能やADLが改善したためであると考えられる.一方で健康関連QOLや自己効力感に有意な改善は見られなかった.今後はさらに症例数を蓄積して統計解析を行い,摂食障害患者に見られる傾向について調査を続け,標準化した作業療法プログラムを作成してその効果検証をしていく必要がある.
摂食障害の推定受診患者数は年々増加している.生命的危機から医療介入の緊急度は高く,治療可能な施設の増加が急がれる.一方で身体管理のみでなく関係構築や発症要因特定の難しさから治療が難渋する例が少なくない.また治療期間が長く再発率も高いことから医療財政の圧迫が懸念される. 摂食障害には包括的支援が必須であり,発症早期や入院治療においてもリハビリテーションの視点は重要である.しかし摂食障害治療ガイドラインでは,入院治療における作業療法についての標準化されたプログラムは示されておらず,摂食障害患者に対する精神科作業療法の効果検証は十分ではない.効果的な作業療法プログラムを作成するためには,摂食障害患者に対する精神科作業療法を含む入院治療が及ぼす影響について,包括的な視点における調査をする必要がある.
【目的】
摂食障害患者に対する精神科作業療法を含む入院治療が,生活機能,健康関連QOL,自己効力感に及ぼす影響を調査すること
【方法】
研究デザインはカルテによる後方視的調査研究.調査期間は2020年4月から2021年12月.研究対象は調査期間中に広島大学病院の精神科病棟で精神科作業療法を含む入院治療を受け,OT介入開始時とOT介入終了時ともにデータ測定が可能だったもの.対象疾患は国際疾患分類第10版のF32うつ病エピソード(以下F3圏)とF50摂食障害(以下F5圏).調査項目は基本属性として年齢,性別,疾患名,在院日数,測定データとして生活機能はWHODAS2.0,健康関連QOLはEQ-5D-5L:EuroQol 5 dimensions 5-level,自己効力感は一般セルフ・エフィカシー尺度(GSES:General Self-Efficacy Scale).統計解析方法は基本属性に対して単純集計にてF3圏とF5圏を比較し,測定データに対してSPSS vol.27.0を用いてWilcoxonの符号付き順位検定にてF3圏とF5圏それぞれのOT介入開始時とOT介入終了時を比較した(有意水準5%).測定データは広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:E-2408).
【結果】
対象者はF3圏8名,F5圏14名.平均年齢はF3圏57±8.7歳,F5圏26.1±8.7歳.性別はF3圏とF5圏とも全員女性.平均在院日数はF3圏60.2±37.0日,F5圏87.9±52.1日.測定データの平均点(OT介入開始時/OT介入終了時)は,WHODAS 2.0単純採点はF3圏107.2±30.6/88.2±34.6,F5圏60.1±11.2/59.1±11.4,EQ-5D-5L効用値はF3圏0.51±0.22/0.66±0.22,F5圏0.66±0.26/0.79±0.04.GSES標準化得点はF3圏35.4±8.6/37.3±8.8,,F5圏41.4±9.1/39.6±8.2.F5圏のWHODAS 2.0単純採点において,OT介入終了時はOT介入開始時に比べて有意に改善した(p<0.01).
【考察】
摂食障害患者の生活機能は精神科作業療法を含む入院治療によって有意に改善することが示唆された.摂食障害患者は飢餓状態により著しい生活機能障害を呈している症例も多く,入院治療により身体機能やADLが改善したためであると考えられる.一方で健康関連QOLや自己効力感に有意な改善は見られなかった.今後はさらに症例数を蓄積して統計解析を行い,摂食障害患者に見られる傾向について調査を続け,標準化した作業療法プログラムを作成してその効果検証をしていく必要がある.