第56回日本作業療法学会

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一般演題

精神障害

[OH-3] 一般演題:精神障害 3

Sun. Sep 18, 2022 8:30 AM - 9:30 AM 第4会場 (RoomA)

座長:四本かやの(神戸大学大学院)

[OH-3-1] 口述発表:精神障害 3リワークデイケア利用に伴う身体活動量(PAL)の変化

星野 藍子12沓名 一朗12臼井 亜美2森 ゆかり2諏訪 真美2 (1名古屋大学院医学系研究科総合保健学専攻包括ケアサイエンス領域予防・リハビリテーション科学,2医療法人成精会メンタルクリニックアンセル)

1.序論
気分障害による休職者の復職支援(リワーク)では,休職中と復職後の生活や行動の様々なギャップを減らすことが第一義的な目的である.中でも,それまで在宅で過ごしていた対象者の生活での身体活動量(Physical Activity Level; PAL)を向上させ,復職後の心身の負荷の減少に結びつけることは主役割の一つである.しかし,利用中のPALの実態や利用に伴う変化,休職期間との関係に関する報告は非常に乏しい.
2.目的
以下の3点を解明することを目的とする:①リワーク利用者の利用の経過に伴うPALおよびその変化,②職種別の利用中のPALの実態及び変化,③PALとデイケア利用期間・休職期間との関係性
3.方法
2021年にAクリニック併設のリワークデイケアを利用した者を対象とした.対象者は気分障害の診断を有し休職中の者,研究参加に同意を得られることを条件とした.当該デイケアは一般的なリワークプログラムを実施していた.デイケア利用開始日から2・4・8週間目(2w・4w・8w)にデイケア利用日1日間を含む24時間,入浴時以外,活動量計(OMRON Active pro)を携帯してもらい,活動量(Mets)を計測した.また身長・年齢・体重・職業・デイケア利用期間等の基礎情報を収集した.得られたデータから,各測定ポイントのPALを算出し,測定ポイントの3群で比較した.また復帰後の職業をデスクワーク(Wh),現場(Bl)業務の2群化し各ポイントのPALを比較した.さらに対象者群から職場復帰を果たした者を抽出し,各測定ポイントのPALとデイケア利用期間・休職期間の相関関係を検討した.有意水準は5%未満とした.なお本研究は発表者らが所属している機関の倫理委員会において承認を得た.
4.結果
対象者は17名(38.7±10.3歳,男性14名,女性3名)であった.測定ポイントのPAL中央値は2w:1.57(1.50-1.75),4w:1.51(1.36-1.66), 8w:1.64(1.53-1.76)であり,3群に有意な差(p<.01)が得られ,多重比較により4wと2wおよび8wに有意な差がみられた.一方職業別の2群(Wh:7名,Bl:10名)による各測定ポイントの中央値は2w(Wh:1.57,Bl:1.62), 4w(Wh:1.49,Bl:1.51), 8w (Wh:1.61,Bl:1.68) であり,交互作用,測定時期および群の主効果のいずれにも有意な結果は得られなかった.さらに17名のうち復帰を果たした8名についてデイケア利用期間(277±246日)および休職期間(108日±27日)と各測定ポイントのPALの相関関係を検討した結果,いずれも有意な関係は得られなかった.
5.考察
利用開始から4週程度で活動量がいったん低下し,その後上昇することが示唆されたものの,8週での活動量は2週を有意に上回っていない.一般的に通勤を含む座位を中心とした仕事で必要とされるPALは1.75,立位が中心となる仕事では2.0程度とされており,開始8週間でも,身体活動量は復職後に必要とされるレベルに十分到達できていなかった.すなわちデイケアに参加することで得られるPALは復職後のPALに到達しておらず,その結果,活動量の向上を目指す介入が休職期間やデイケア利用期間の短縮に十分に寄与していない可能性が示唆された.今後,対象者数を拡大し,より長期間のPALを測定するとともに復職後のPALを計測しリワークプログラムのアウトカムを明確にすることが必要である.このアウトカムの明確化が有効なプログラム設計には必須である.