第56回日本作業療法学会

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一般演題

精神障害

[OH-3] 一般演題:精神障害 3

Sun. Sep 18, 2022 8:30 AM - 9:30 AM 第4会場 (RoomA)

座長:四本かやの(神戸大学大学院)

[OH-3-4] 口述発表:精神障害 3気分障害・ストレス関連障害患者の就労継続に影響する要因の探索

公家 龍之介13田中 佐千恵2中野 未来13小林 正義1 (1信州大学大学院総合医理工学研究科医学系研究科,2信州大学医学部保健学科,3信州大学医学部附属病院リハビリテーション部)

はじめに
精神疾患による休職者は職場再適応に困難を抱えやすいことが報告されている.復職の準備性を評価する復職準備性評価シート(Psychiatric Rework Readiness Scale; PRRS)が作成されている(酒井ら,2012)が,就労継続に影響する要因を検討した報告は少ない.当院では2014年より気分障害・ストレス関連障害の休職者を対象に,作業療法(以下,OT)をベースとしたリワークプログラムを実施しており,復職後2年間のフォローアップを行っている.本研究の目的は,対象者の就労継続に影響を与える要因を探索することである.本研究は所属大学の倫理委員会の承認を得た臨床研究の一部として実施した.
対象と方法
対象は2014年4月から2021年1月の間に精神科に通院し,気分障害またはストレス関連障害と診断された休職者のうち,プログラムに参加し,研究への参加に同意した者であった.プログラムは週5回のOTに加え,心理教育,認知行動療法,対人関係療法,社会リズム療法,アサーション,アンガーマネジメントを行う週2回の学習プログラム,週1回のメタ認知トレーニングとSSTから構成され,3〜4ヶ月を1クールとして実施した.プログラム修了者を復職後1年の就労状況で継続群と休職群に分け,属性,プログラム開始時と終了時の精神症状(HAM-D,YMRS),認知機能(BACS),社会適応度(SASS),作業遂行能力(GATB),PRRS,気質(TEMPS, MPT)の得点と変化量を比較した.群間比較にはMann–Whitney U testを用い効果量(r)を求めた.統計解析にはBellCurve for Excel Ver. 3.21を使用し有意水準は5%とした.
結果
46名がプログラムに参加し,選択基準を満たした33名が研究に参加し,23名が復職,4名が再就職,6名が職場復帰に至らなかった(復職・再就職率81.8%).復職者23名のうち,18名が継続群に分類された(継続率78.3%).年齢,性別,診断,併存症の有無,休職期間,勤続年数,プログラム実施期間,プログラム開始から復職までの期間に有意差はなかった.継続群は開始時評価でSASSの自己認識が有意に高く(継続群6.8,休職群4.6,p = .01, r = .52),発揚気質が有意に低かった(継続群3.5,休職群6.8,p = .03, r = .61).また,終了時評価ではHAM-D(継続群2.7,休職群0.6,p = .03, r = .45),GATBの運動共応(継続群78.8,休職群56.2,p = .44, r = .42)が有意に高く,SASSの興味や好奇心(継続群12.8,休職群15.6,p = .03, r = .44)が有意に低かった.プログラム前後の変化量は,継続群ではGATBの運動共応(継続群22.3,休職群1,p = .04, r= .44)が有意に大きく,焦燥気質(継続群-0.6,休職群-3.2,p = .02, r = .50),SASSの対人関係(継続群0.2,休職群3.2,p < .01, r = .59),合計得点(継続群2.1,休職群7.4,p = .02, r = .48)が有意に少なかった.
考察
就労継続群は休職群と比較しプログラム開始時の自己認識が高く,発揚気質が低く,プログラム終了時の運動共応の改善が大きい傾向を示した.一方,休職群は終了時評価のうつ症状が低く,焦燥気質や社会適応度の変化量が大きいものの,運動共応の変化はみられなかった.先行研究では,復職前の評価により就労継続の要因が検討されることが多い(堀井,2019; Hori,2019)が,本発表では開始時の自己認識の高さや発揚気質の低さが就労継続に影響する可能性が示唆された.一方で,プログラム前後の変化量は両群ともプログラムを通して改善しており,就労継続に関連する要因が捉えきれていない可能性が考えられた.今後,サンプル数を増やし,詳細な検討が必要である.