[OI-1-5] 口述発表:発達障害 1不登校児に対する訪問作業療法による日常生活活動の変化
【背景】文部科学省は,1991年時点で国内の小・中学生の66,817人が不登校の状況にあると報告した.その人数は増え続け,2018年時点で164,528人となった.不登校に関する調査研究協力者会議の「不登校児童生徒への支援に関する最終報告書」では,不登校児の支援・対応の緊急性に言及し,一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援を推進している.そのような中,著者らは不登校児の訪問作業療法(OT)を実施し,対象児やその家族への支援に取り組んだ.対象児の状況にもよるが,週2回から月1回の介入で,不登校にあった子どもが通学を再開する事例が増えてきた.現在,不登校児の自宅や自室を訪問し,日常生活活動(ADL)に踏み込んだ支援や対応に関する報告は,稀有である.そこで,機能的自立度評価法(FIM)のセルフケアと認知社会面の変化から不登校児への訪問OTの役割を見出した.
【対象】訪問OTを1年以上利用した不登校児49名(開始時年齢が9歳~18歳,男39名,女10名)であった.
【方法】FIM得点のセルフケアと認知社会面の総得点および,それぞれの項目を再登校群(継続して30日以上登校)と不登校群(年/30日以上欠席)に分類しWilcoxon符号付順位検定を用いて,訪問OT開始初回と現在で比較した.また,各項目別に再登校群と不登校群の初回と現在の得点差をMannWhitneyのU検定を用いて比較した.さらに,各項目別に再登校群と不登校群で点数が変化した人数をFisherの正確確率検定を用いて比較した.すべての統計解析にはSPSS ver. 24 (IBM Corp,Armonk, NY, USA) を用い,有意水準は5%とした.本研究は,株式会社奏音の倫理審査委員会を受審(承認番号E-001)し,本人と保護者に研究の目的と方法を文書と口頭で説明し,文書で同意を得た.
【結果】セルフケアおよび認知社会面の総得点は再登校群,不登校群ともに有意に改善した(p<.01).再登校群は,食事,整容,清拭,更衣,表出,社会的交流,問題解決の7項目で,不登校群は,整容,清拭,更衣,表出,社会的交流,問題解決の6項目で得点が有意に改善した(p<.05).項目別の初回時と現在の得点の差は,認知社会面の総得点と更衣,社会的交流の2項目において,不登校群よりも再登校群で得点差分が有意に高くなった(p<.05).
【考察】今回の結果は,整容,清拭,更衣,表出,社会的交流,問題解決の項目で,再登校,不登校に関わらず,初回と現在の得点間に有意な改善を認めた.この所見は,引きこもりがちな生活の不登校児が,訪問OTによって「家族以外の他者からみられる」という事象を意識することによるものと推察する.不登校群の食事は,初回と現在で有意差が認められなかった.食事のFIM得点の四分位範囲が初回5~7,現在5~7であり,初回時から高い状態であった.食事は生きるために必要な活動であるため,不登校児においても何らかの方法で遂行可能なセルフケアであることが要因と推察する.一方,再登校群のそれは,初回5~7から現在7であり有意な改善を認めた.この所見は,再登校によって活動量が上がるとともに,学校生活でまわりの生徒とともに昼食をとる必要に迫われたことを機に食事のリズムが改善したものと推察する.今回の報告から,不登校児の生活評価の指標としてFIMの更衣と社会的交流の得点が活用できることを示唆する.また,食事の得点を副指標とする可能性がある.そのためには,訪問OTによって認知社会面を向上させるような働きかけが重要であると推察する.したがって,不登校児への訪問OTは,趣味や勉学を含めた日常生活リズムに関わる全般的なADLの向上に果たす役割を担っている.
【対象】訪問OTを1年以上利用した不登校児49名(開始時年齢が9歳~18歳,男39名,女10名)であった.
【方法】FIM得点のセルフケアと認知社会面の総得点および,それぞれの項目を再登校群(継続して30日以上登校)と不登校群(年/30日以上欠席)に分類しWilcoxon符号付順位検定を用いて,訪問OT開始初回と現在で比較した.また,各項目別に再登校群と不登校群の初回と現在の得点差をMannWhitneyのU検定を用いて比較した.さらに,各項目別に再登校群と不登校群で点数が変化した人数をFisherの正確確率検定を用いて比較した.すべての統計解析にはSPSS ver. 24 (IBM Corp,Armonk, NY, USA) を用い,有意水準は5%とした.本研究は,株式会社奏音の倫理審査委員会を受審(承認番号E-001)し,本人と保護者に研究の目的と方法を文書と口頭で説明し,文書で同意を得た.
【結果】セルフケアおよび認知社会面の総得点は再登校群,不登校群ともに有意に改善した(p<.01).再登校群は,食事,整容,清拭,更衣,表出,社会的交流,問題解決の7項目で,不登校群は,整容,清拭,更衣,表出,社会的交流,問題解決の6項目で得点が有意に改善した(p<.05).項目別の初回時と現在の得点の差は,認知社会面の総得点と更衣,社会的交流の2項目において,不登校群よりも再登校群で得点差分が有意に高くなった(p<.05).
【考察】今回の結果は,整容,清拭,更衣,表出,社会的交流,問題解決の項目で,再登校,不登校に関わらず,初回と現在の得点間に有意な改善を認めた.この所見は,引きこもりがちな生活の不登校児が,訪問OTによって「家族以外の他者からみられる」という事象を意識することによるものと推察する.不登校群の食事は,初回と現在で有意差が認められなかった.食事のFIM得点の四分位範囲が初回5~7,現在5~7であり,初回時から高い状態であった.食事は生きるために必要な活動であるため,不登校児においても何らかの方法で遂行可能なセルフケアであることが要因と推察する.一方,再登校群のそれは,初回5~7から現在7であり有意な改善を認めた.この所見は,再登校によって活動量が上がるとともに,学校生活でまわりの生徒とともに昼食をとる必要に迫われたことを機に食事のリズムが改善したものと推察する.今回の報告から,不登校児の生活評価の指標としてFIMの更衣と社会的交流の得点が活用できることを示唆する.また,食事の得点を副指標とする可能性がある.そのためには,訪問OTによって認知社会面を向上させるような働きかけが重要であると推察する.したがって,不登校児への訪問OTは,趣味や勉学を含めた日常生活リズムに関わる全般的なADLの向上に果たす役割を担っている.