[OI-2-4] 口述発表:発達障害 2自閉スペクトラム症者とのコミュニケーションに対する支援の検討
支援者の社会交流技能に焦点を当てて
【はじめに】
自閉スペクトラム症(ASD)の特徴として他者とのコミュニケーションや関係性構築における問題があるとされる.入所生活を送りながら生活介護を利用するASD利用者(A氏)は,頻回に突発的なパニックが起こり,施設職員への他害行為,食事や玩具を投げるなどの行動を認めていた.特定の職員とは比較的良好な関係性を築くことができており,その職員が関わる際はパニックの頻度が低い傾向にあった.今回,職員のA氏との関係性の違いと,職員の社会交流技能評価(ESI)の社会交流技能(技能)の特徴について検討した.関係性の構築に問題を抱えるASD者へのコミュニケーション支援において,ASD当事者でなく交流相手に対する新たなコミュニケーション支援の視座を得たので報告する.なお,発表にあたり職員の同意を得ている.
【方法】
対象は,最も良好な関係性を構築できている職員B,次いで関係性の高い職員C,A氏との関係性に悩む職員Dである.ESIに基づいた客観評価と,ACQ-SIを参考にA氏と関わる際の各技能の自己認識を評価し,A氏と関わる際の職員の特徴的な技能を抽出した.客観的評価は,明確な目的のない社会的会話の場面と,A氏が求めている支援について情報収集する場面が連続する1場面を評価した.自己認識は,上記場面を中心に普段のA氏との関わりを振り返ってもらい,交流時に特に気を付けていることを聞いた後,27の技能それぞれの認識を聴取した.
【結果】
観察と自己認識の評価結果から,良好な関係性を構築できている職員Bと職員C氏に共通し,関係性に悩む職員Dには認めない技能の特徴として,頻回かつ明確な指先での指示(Gesticulates),交流開始時に強いぐらいのハグやハイタッチ(Touches),大げさ,甘い声で褒める(Thanks,Express Emotion),好ましくない行動をした時には強い口調で伝える(Express Emotion),相手の感情に応じて感情を表現する(Empathizes),質問の回数は極端に減らす(Questions, Times Durations)などであった.交流時に特に気を付けている技能(自己認識)について,職員Bはお姉ちゃんという立場を演じあえて強い口調で接する(Matches Language,Express Emotion),職員Cは交流の目的を意識し繰り替えし伝える(Heads, Benefits),職員Dは職員としての立場から強い口調で接する(Matches Language,Express Emotion)であった.また,職員Dよりも職員Bは意識して行う技能および意図的に行わない技能の数が多い傾向にあった. 各職員に対し評価結果のフィードバックおよび,A氏と交流する際のポイントとなる技能の言語化を支援し,A氏と関わる全職員と共有を図った.
【考察】
本結果から,関係性に差がある職員の技能において,良好な関係性の職員とそうでない職員で用いる技能で異なる特徴を認めた.良好な関係性の職員の技能が特別高いという訳ではなく,複数の技能をより意識して用いていた傾向にあった.一方で,職員B,D共にMatches Language,Express Emotionの技能を意識していたものの関係性に差があることから,全ての職員が同じ様に関われば良いわけでない可能性もあり,更なる検証が必要である.関係性に悩んでいた職員Dも職員B・Cが意識しているEmpathizesの技能を意識的に導入し,A氏とのコミュニケーションに変化を認めた.技能は交流相手の遂行の質が影響するとされており,関係性の構築に問題を抱えるASD者へのコミュニケーション支援において,ASD当事者でなく,交流相手の技能に焦点を当てた新たなコミュニケーション支援の可能性が示唆された.
自閉スペクトラム症(ASD)の特徴として他者とのコミュニケーションや関係性構築における問題があるとされる.入所生活を送りながら生活介護を利用するASD利用者(A氏)は,頻回に突発的なパニックが起こり,施設職員への他害行為,食事や玩具を投げるなどの行動を認めていた.特定の職員とは比較的良好な関係性を築くことができており,その職員が関わる際はパニックの頻度が低い傾向にあった.今回,職員のA氏との関係性の違いと,職員の社会交流技能評価(ESI)の社会交流技能(技能)の特徴について検討した.関係性の構築に問題を抱えるASD者へのコミュニケーション支援において,ASD当事者でなく交流相手に対する新たなコミュニケーション支援の視座を得たので報告する.なお,発表にあたり職員の同意を得ている.
【方法】
対象は,最も良好な関係性を構築できている職員B,次いで関係性の高い職員C,A氏との関係性に悩む職員Dである.ESIに基づいた客観評価と,ACQ-SIを参考にA氏と関わる際の各技能の自己認識を評価し,A氏と関わる際の職員の特徴的な技能を抽出した.客観的評価は,明確な目的のない社会的会話の場面と,A氏が求めている支援について情報収集する場面が連続する1場面を評価した.自己認識は,上記場面を中心に普段のA氏との関わりを振り返ってもらい,交流時に特に気を付けていることを聞いた後,27の技能それぞれの認識を聴取した.
【結果】
観察と自己認識の評価結果から,良好な関係性を構築できている職員Bと職員C氏に共通し,関係性に悩む職員Dには認めない技能の特徴として,頻回かつ明確な指先での指示(Gesticulates),交流開始時に強いぐらいのハグやハイタッチ(Touches),大げさ,甘い声で褒める(Thanks,Express Emotion),好ましくない行動をした時には強い口調で伝える(Express Emotion),相手の感情に応じて感情を表現する(Empathizes),質問の回数は極端に減らす(Questions, Times Durations)などであった.交流時に特に気を付けている技能(自己認識)について,職員Bはお姉ちゃんという立場を演じあえて強い口調で接する(Matches Language,Express Emotion),職員Cは交流の目的を意識し繰り替えし伝える(Heads, Benefits),職員Dは職員としての立場から強い口調で接する(Matches Language,Express Emotion)であった.また,職員Dよりも職員Bは意識して行う技能および意図的に行わない技能の数が多い傾向にあった. 各職員に対し評価結果のフィードバックおよび,A氏と交流する際のポイントとなる技能の言語化を支援し,A氏と関わる全職員と共有を図った.
【考察】
本結果から,関係性に差がある職員の技能において,良好な関係性の職員とそうでない職員で用いる技能で異なる特徴を認めた.良好な関係性の職員の技能が特別高いという訳ではなく,複数の技能をより意識して用いていた傾向にあった.一方で,職員B,D共にMatches Language,Express Emotionの技能を意識していたものの関係性に差があることから,全ての職員が同じ様に関われば良いわけでない可能性もあり,更なる検証が必要である.関係性に悩んでいた職員Dも職員B・Cが意識しているEmpathizesの技能を意識的に導入し,A氏とのコミュニケーションに変化を認めた.技能は交流相手の遂行の質が影響するとされており,関係性の構築に問題を抱えるASD者へのコミュニケーション支援において,ASD当事者でなく,交流相手の技能に焦点を当てた新たなコミュニケーション支援の可能性が示唆された.