[OI-2-5] 口述発表:発達障害 2中高生の自閉スペクトラム症児と養育者の交流の特徴
【はじめに】
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders: 以下ASD)は社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応の障害や常同的・限定的行動を特徴としている.この様なASD特性は児童期から青年期への移行期において社会的不適応だけでなく,心理面にもネガティブな影響を及ぼすことが示されている.また,ASD児の養育者においても抑うつ・不安・育児ストレスが強いと言われている.保護者の精神的健康は養育行動に関連し,その養育行動は子どもに影響を与えることが指摘されており,親子は相互に作用し合っているといえる.さらに以下①~③の内容が先行研究で述べられている.「①子どもの年齢:幼児期は家族機能における形成期であり,家族は各々の関係を築くことができていない.②研究環境:家庭と実験室の間で家族の相互作用に相違がある.③知的障害の有無:知的障害のあるASD児は,知的障害のないASD児と比べてより広範囲に適応行動能力の低さが出現する.」以上より,親子関係がある程度確立されている青年期の年代において,知的障害を伴うにも関わらず良好な関係性を築いている親子の日常生活場面について検討する余地があると考えた.
本研究の目的は.関係性が良好な知的障害を伴う青年期のASD児と養育者の日常生活場面を観察し,その特徴を明らかにすることである.
【方法】
対象者は「知的障害を伴う青年期のASD児とその親」「親子関係が良好であり,コミュニケーションが成り立っていること」を条件とし,同意が得られた親子である.良好な親子関係について,本研究では,親子に関わる教育・医療関係者による推薦があり,当事者も良好であると感じていることと定義した.研究環境は子供が慣れ親しんでおり,自然な親子の交流が得られやすい場所とした.観察項目は,「表情・視線・姿勢・動作・発語」.親子の交流場面を約1時間ビデオ撮影した.データ生成は,鯨岡の手法や先行研究を参考に,撮影したビデオを文章化,カード化し,カテゴリ分類をおこなった.なお,本研究は国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を受け実施した.
【結果】
対象は5組の親子であり,養育者は全員母親であった.作成されたカテゴリの内,子供の「自分のペースで行動する」「母親に返答する・反応を返す」「母親に従う」,親の「子供を見守る」「子供に話しかける」が全ての親子に共通していた.一方で親子毎に異なる交流の特徴も多く存在した.また,対象となった親は,ASD 児の特性に応じたコミュニケーション手段を理解し,様々な代償方法を身につけていること,子どもは親に提示された代償方法に適応していることが示された.
【考察】
母親の見守り行為は,母親が子どもの特性を理解し,行動を予測できていることが要因であると考えられる.一方,子どもは母親からの話かけに対し,何らかの言動を返す場面が多かった.これは親に意思を伝える手段が確立していることが要因であると考えられ,このような共通点を日常生活で活用することが良好な親子関係の構築に繋がると考えられる.一方で異なる結果も示されたことから,親子に応じてコミュニケーション方法は異なり,支援方法には個別性が必要であると考えられる.また,親がASD 児の特性に応じて様々な代償方法を身につけていること,子どもがその代償方法に適応していることも示された. 以上より,「ASD児の特性に応じたコミュニケーション手段を理解し,親が代償方法を獲得すること」「ASD児が親の代償方法に適応すること」が良好な親子関係を築く上で大切な要素であると考えられる.
自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders: 以下ASD)は社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応の障害や常同的・限定的行動を特徴としている.この様なASD特性は児童期から青年期への移行期において社会的不適応だけでなく,心理面にもネガティブな影響を及ぼすことが示されている.また,ASD児の養育者においても抑うつ・不安・育児ストレスが強いと言われている.保護者の精神的健康は養育行動に関連し,その養育行動は子どもに影響を与えることが指摘されており,親子は相互に作用し合っているといえる.さらに以下①~③の内容が先行研究で述べられている.「①子どもの年齢:幼児期は家族機能における形成期であり,家族は各々の関係を築くことができていない.②研究環境:家庭と実験室の間で家族の相互作用に相違がある.③知的障害の有無:知的障害のあるASD児は,知的障害のないASD児と比べてより広範囲に適応行動能力の低さが出現する.」以上より,親子関係がある程度確立されている青年期の年代において,知的障害を伴うにも関わらず良好な関係性を築いている親子の日常生活場面について検討する余地があると考えた.
本研究の目的は.関係性が良好な知的障害を伴う青年期のASD児と養育者の日常生活場面を観察し,その特徴を明らかにすることである.
【方法】
対象者は「知的障害を伴う青年期のASD児とその親」「親子関係が良好であり,コミュニケーションが成り立っていること」を条件とし,同意が得られた親子である.良好な親子関係について,本研究では,親子に関わる教育・医療関係者による推薦があり,当事者も良好であると感じていることと定義した.研究環境は子供が慣れ親しんでおり,自然な親子の交流が得られやすい場所とした.観察項目は,「表情・視線・姿勢・動作・発語」.親子の交流場面を約1時間ビデオ撮影した.データ生成は,鯨岡の手法や先行研究を参考に,撮影したビデオを文章化,カード化し,カテゴリ分類をおこなった.なお,本研究は国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を受け実施した.
【結果】
対象は5組の親子であり,養育者は全員母親であった.作成されたカテゴリの内,子供の「自分のペースで行動する」「母親に返答する・反応を返す」「母親に従う」,親の「子供を見守る」「子供に話しかける」が全ての親子に共通していた.一方で親子毎に異なる交流の特徴も多く存在した.また,対象となった親は,ASD 児の特性に応じたコミュニケーション手段を理解し,様々な代償方法を身につけていること,子どもは親に提示された代償方法に適応していることが示された.
【考察】
母親の見守り行為は,母親が子どもの特性を理解し,行動を予測できていることが要因であると考えられる.一方,子どもは母親からの話かけに対し,何らかの言動を返す場面が多かった.これは親に意思を伝える手段が確立していることが要因であると考えられ,このような共通点を日常生活で活用することが良好な親子関係の構築に繋がると考えられる.一方で異なる結果も示されたことから,親子に応じてコミュニケーション方法は異なり,支援方法には個別性が必要であると考えられる.また,親がASD 児の特性に応じて様々な代償方法を身につけていること,子どもがその代償方法に適応していることも示された. 以上より,「ASD児の特性に応じたコミュニケーション手段を理解し,親が代償方法を獲得すること」「ASD児が親の代償方法に適応すること」が良好な親子関係を築く上で大切な要素であると考えられる.