[OI-2-6] 口述発表:発達障害 2精神科病院における強度行動障害支援チームの活動報告
【はじめに】強度行動障害は,自傷など本人の健康を損ねる行動,他害など周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動が,著しい頻度で起こるため特別に配慮された支援が必要な状態である.精神科病院における強度行動障害の治療は,薬物療法と行動制限が多い(市川2019).この場合,本人・支援者のレスパイトとしての機能は担えるが,問題行動は修正しない.また,隔離室の適正使用が滞るといった課題もある.これらを踏まえ,強度行動障害のケアに強い病院を目指し患者と職員を支援する積極的行動支援チーム(Positive Behavior Support Team:PBST)を結成した.今回は,立ち上げから現在までの活動,介入方法や変化を概観し,役割や課題について考察する.本発表は,当院の倫理委員会で承認を得ている.
【活動の体制】2019年9月より活動開始した.準備期は,共通理解のために強度行動障害者支援者養成研修を受講し,自閉症及びそれに準ずるコミュニケーション課題を抱える子ども向けのケアと教育(Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped Children:TEACCH)」を軸に介入することとした.そして,強度行動障害者を受け入れている近隣福祉施設を5カ所見学した.活動期の目標は,個別事例の介入と職員の対応力向上とした.構成メンバーは,当初は作業療法士,看護師だったが,段階的に精神保健福祉士,公認心理師も加わった.PBSTの主な機能を①患者に対する直接的支援,支援者や家族に向けた間接的支援,②コンサルテーション,③人材育成の3つとした.PBST定例会で事例検討や活動体制について話し合った.
【活動の実際】2021年10月までの直接的支援は13件.知的障害を伴う自閉症が主であった.精神科病棟,デイケア,自宅,グループホーム,生活介護事業所で実施した.相談内容は,自傷,他害,脱衣,破衣,他であった.行動変容が認められた介入は,生活リズムの調整,TEACCHの実践の一つである構造化,静音環境,コミュニケーションの工夫,特性に応じた余暇活動であった.間接的支援は,法人職員に対し『強度行動障害支援者養成基礎研修』の内容を計5回,活動報告会を年1回,分散教育を17回行った.地域の支援者向けの教育的支援として,居住空間や生活介護の場での構造化と説明を支援者に行った.
【考察】曾田(2020)は,精神科入院治療で強度行動障害に必要な医療として①緊急避難的な本人の保護,②家族・施設職員のレスパイト,③検査による身体状態の評価,④行動や情緒に関する評価,⑤薬物調整,⑥拘り行動や行動障害のリセット,⑦ABA(Applied Behavior Analysis:応用行動分析)や構造化による介入と提唱している.PBSTは④⑥⑦とアウトリーチに取り組んでいる.市川(2015)によれば,精神科病院におけるTEACCHやABAの実施施設は1.5%に留まっている.当院のような民間病院でのこのチーム活動は珍しい.今後は,メンバーの職域拡大,普及活動が課題である.
【引用文献】
1)市川宏伸:知的・発達障害における福祉と医療の連携,金剛出版,p118,2019
2)會田千重:多職種チームで行う強度行動障害のある人への医療的アプローチ,中央法規出版,p28,2020
3)市川宏伸:医療管理下における介護および日常的な世話が必要な行動障害を有する者の実態に関する研究,平成27年度総括・分担研究報告書,p34,2015
【活動の体制】2019年9月より活動開始した.準備期は,共通理解のために強度行動障害者支援者養成研修を受講し,自閉症及びそれに準ずるコミュニケーション課題を抱える子ども向けのケアと教育(Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped Children:TEACCH)」を軸に介入することとした.そして,強度行動障害者を受け入れている近隣福祉施設を5カ所見学した.活動期の目標は,個別事例の介入と職員の対応力向上とした.構成メンバーは,当初は作業療法士,看護師だったが,段階的に精神保健福祉士,公認心理師も加わった.PBSTの主な機能を①患者に対する直接的支援,支援者や家族に向けた間接的支援,②コンサルテーション,③人材育成の3つとした.PBST定例会で事例検討や活動体制について話し合った.
【活動の実際】2021年10月までの直接的支援は13件.知的障害を伴う自閉症が主であった.精神科病棟,デイケア,自宅,グループホーム,生活介護事業所で実施した.相談内容は,自傷,他害,脱衣,破衣,他であった.行動変容が認められた介入は,生活リズムの調整,TEACCHの実践の一つである構造化,静音環境,コミュニケーションの工夫,特性に応じた余暇活動であった.間接的支援は,法人職員に対し『強度行動障害支援者養成基礎研修』の内容を計5回,活動報告会を年1回,分散教育を17回行った.地域の支援者向けの教育的支援として,居住空間や生活介護の場での構造化と説明を支援者に行った.
【考察】曾田(2020)は,精神科入院治療で強度行動障害に必要な医療として①緊急避難的な本人の保護,②家族・施設職員のレスパイト,③検査による身体状態の評価,④行動や情緒に関する評価,⑤薬物調整,⑥拘り行動や行動障害のリセット,⑦ABA(Applied Behavior Analysis:応用行動分析)や構造化による介入と提唱している.PBSTは④⑥⑦とアウトリーチに取り組んでいる.市川(2015)によれば,精神科病院におけるTEACCHやABAの実施施設は1.5%に留まっている.当院のような民間病院でのこのチーム活動は珍しい.今後は,メンバーの職域拡大,普及活動が課題である.
【引用文献】
1)市川宏伸:知的・発達障害における福祉と医療の連携,金剛出版,p118,2019
2)會田千重:多職種チームで行う強度行動障害のある人への医療的アプローチ,中央法規出版,p28,2020
3)市川宏伸:医療管理下における介護および日常的な世話が必要な行動障害を有する者の実態に関する研究,平成27年度総括・分担研究報告書,p34,2015