[OI-3-1] 口述発表:発達障害 3利用者の希望する作業を引き出し,支援者の「難しい」を「出来そう」に変える―生活介護事業所での支援員への間接支援を通して―
【はじめに】障害福祉分野に携わる作業療法士(以下,OT)の役割として,障害領域全般の様々な障害度の対象者への支援を行うと共に,最も身近で対象者にサービスを提供する支援員への指導・助言などの間接支援を行うことが期待されている(日本作業療法士協会,2019).受容や傾聴といったコミュニケーション技術を活用することが多い介護福祉士にとって,対象者が希望する新たな生活目標を見つけ出し,支援計画を立案することが困難なことがある.
【目的】言葉でのやり取りが難しく,支援計画の目標設定に苦渋していたA氏へのアプローチと共に,支援員への間接支援により,A氏の希望する作業を引き出し,活動の幅を拡充した支援について報告する.
【症例紹介とアプローチ】対象者は発達障害を呈する40代の男性A氏.療育手帳A2級,障害支援区分4.生活介護事業所を週6回利用.集団活動が苦手で動き回り一日を過ごす.よく話すがやり取りが成立しないことが多い.文字の読み書きが出来る.主の支援員は30代の男性(介護福祉士),勤務7年.A氏へのアプローチは計10回(5分/回),支援員に対する間接支援を9回実施.発表に際しA氏と支援員に書面にて同意を得た.
【経過】支援員より「余暇を考えたいが,(言葉での)やりとりが難しく,何を目標に掲げ取り組んでいいか解らない」と相談があった.視覚補助を行いながら意思疎通を図ることを提案したが,支援員からは「行ったことが無く難しい」との返答があった.そこで,OTが直接A氏に視覚的補助として,目標設定プロセスアプリ(ADOC)ペーパー版を用いて作業療法面談を行った.A氏から『パソコンを行いたい』と希望が出たため,その結果を支援員に伝え,支援に活かしてもらえるように促した.支援員からは,「(パソコンの支援を)行ったこともないし絶対無理.適当に絵を押した可能性もあるのでは?」と返答があった.OTがA氏のパソコン操作の評価を行ったところ,視覚情報が多いと混乱し,文字を探すのに時間を要した.そのため,IPADのひらがな入力ボードを用いて,OT訪問時に入力操作練習を行った.OTとのIPAD入力練習(6回目)の様子を見た支援員からは,「これなら自分たちでも出来そう」との意見がでた.そこで支援計画を見直し,支援員中心にIPAD入力支援を行うこととなった.IPADの入力操作でサポートが必要な場面を具体的に支援員に伝えることで,OTがいない際にも支援員と入力操作の練習ができるようになった.その後,A氏が頑張れているIPAD入力を使い,生活の幅が広げられるよう支援員が行っている取り組みに対してのフィードバックや根拠づけを行った.
【結果】1年9か月の支援の結果,A氏は個別にIPADで文字入力を行い,動き回り過ごすことが減少した.入力操作は発展し,集団場面で必要な文章入力をA氏の役割として行えるようになった.これにより,A氏は職員や他利用者から感謝を伝えられ,嬉しそうな表情を見せている.支援員からは,「言葉でやり取りが難しくても,絵を使ったら意見を聴けるのに驚いた,他の利用者にも使ってみる」と支援スキルの汎用が窺えた.
【考察】支援員が試行錯誤し行っている支援に対するフィードバックや根拠づけを間接支援で行うことにより,サービス利用者に対する支援員の困難感を解消させることができると考える.また,間接支援を通して新たな視点での関わりを知ることで,支援技術の向上が図られ,支援の幅を広げることが出来ると考える.これらの結果,支援員によるサービス利用者の生活目標の引き出し,支援計画の立案やその実践を促す事ができ,サービス利用者の活動の幅を拡充することが期待される.
【目的】言葉でのやり取りが難しく,支援計画の目標設定に苦渋していたA氏へのアプローチと共に,支援員への間接支援により,A氏の希望する作業を引き出し,活動の幅を拡充した支援について報告する.
【症例紹介とアプローチ】対象者は発達障害を呈する40代の男性A氏.療育手帳A2級,障害支援区分4.生活介護事業所を週6回利用.集団活動が苦手で動き回り一日を過ごす.よく話すがやり取りが成立しないことが多い.文字の読み書きが出来る.主の支援員は30代の男性(介護福祉士),勤務7年.A氏へのアプローチは計10回(5分/回),支援員に対する間接支援を9回実施.発表に際しA氏と支援員に書面にて同意を得た.
【経過】支援員より「余暇を考えたいが,(言葉での)やりとりが難しく,何を目標に掲げ取り組んでいいか解らない」と相談があった.視覚補助を行いながら意思疎通を図ることを提案したが,支援員からは「行ったことが無く難しい」との返答があった.そこで,OTが直接A氏に視覚的補助として,目標設定プロセスアプリ(ADOC)ペーパー版を用いて作業療法面談を行った.A氏から『パソコンを行いたい』と希望が出たため,その結果を支援員に伝え,支援に活かしてもらえるように促した.支援員からは,「(パソコンの支援を)行ったこともないし絶対無理.適当に絵を押した可能性もあるのでは?」と返答があった.OTがA氏のパソコン操作の評価を行ったところ,視覚情報が多いと混乱し,文字を探すのに時間を要した.そのため,IPADのひらがな入力ボードを用いて,OT訪問時に入力操作練習を行った.OTとのIPAD入力練習(6回目)の様子を見た支援員からは,「これなら自分たちでも出来そう」との意見がでた.そこで支援計画を見直し,支援員中心にIPAD入力支援を行うこととなった.IPADの入力操作でサポートが必要な場面を具体的に支援員に伝えることで,OTがいない際にも支援員と入力操作の練習ができるようになった.その後,A氏が頑張れているIPAD入力を使い,生活の幅が広げられるよう支援員が行っている取り組みに対してのフィードバックや根拠づけを行った.
【結果】1年9か月の支援の結果,A氏は個別にIPADで文字入力を行い,動き回り過ごすことが減少した.入力操作は発展し,集団場面で必要な文章入力をA氏の役割として行えるようになった.これにより,A氏は職員や他利用者から感謝を伝えられ,嬉しそうな表情を見せている.支援員からは,「言葉でやり取りが難しくても,絵を使ったら意見を聴けるのに驚いた,他の利用者にも使ってみる」と支援スキルの汎用が窺えた.
【考察】支援員が試行錯誤し行っている支援に対するフィードバックや根拠づけを間接支援で行うことにより,サービス利用者に対する支援員の困難感を解消させることができると考える.また,間接支援を通して新たな視点での関わりを知ることで,支援技術の向上が図られ,支援の幅を広げることが出来ると考える.これらの結果,支援員によるサービス利用者の生活目標の引き出し,支援計画の立案やその実践を促す事ができ,サービス利用者の活動の幅を拡充することが期待される.