第56回日本作業療法学会

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一般演題

発達障害

[OI-3] 一般演題:発達障害 3

Sat. Sep 17, 2022 10:10 AM - 11:10 AM 第7会場 (RoomD)

座長:立山 清美(大阪公立大学)

[OI-3-5] 口述発表:発達障害 3当院におけるSSTの効果とこれから

玉野 彩1黒渕 永寿1白石 優美1石川 唯1 (1自治医科大学附属病院)

【はじめに】当院,作業療法(以下OT)部門ではソーシャルスキルトレーニング(以下SST)を実施している.保護者アンケートの結果から若干の考察を加えたため報告する.今回の報告に際し対象者家族への説明と同意を得ている.
【目的/方法】SSTの意義は社会生活を送るために必要なスキルとその使い方を学ぶことで,人との関係に気づき,関係を築き円滑な社会生活を送れるようになる事である.当院SSTの目的は,集団生活におけるルールを学び,仲間と関わりながら楽しむきっかけの場を作る事である.また家族や療育者が作業療法士(以下OTR)と共に支援方法を考える,家族同士が交流する場としても意義がある.全体目標は楽しんで参加する事,友達と関わりを持つ際の基本的な態度を習得していく事である.さらに会ごとに個別の目標を設定し賞罰や他児からコメントをもらう事で,子ども自身が目標を意識しながら活動し行動変容できるように促している.対象は発達障害(ASD,ADHD,DCDなど)を持つ年長から小学3年生までの男女6~7名であり,社会性,対人関係,行動上の問題が主であり知的に大きな遅れのない事が参加条件となる.SST実施前後の評価項目である保護者アンケートについて,4クール分(半年間×4回合計23人分)のデータから読み取れた結果を考察し,今後のSSTプログラムの内容や介入方法について検討した.
【結果】アンケートは当院SSTで取り扱う内容を基に作成し,ソーシャルスキル(以下SS)尺度に当てはめて分類した.設問は全29問あり保護者が5段階形式で採点する.SST実施前後の変化についてそれぞれ算出し設問ごとで合計した結果,正の変化27問,不変2問,負の変化0問であった.また子どもごとのばらつきで算出した結果と併せても正の変化は「離席なく,机上課題に取り組める」「思い通りにならなくても怒らない,騒がない」「意見を決める方法がわかる」が上位であった.一方で変化がみられなかった設問は「話の内容やルールが分かる」「目標と自分の行動を照らし合わせ評価できる」であった.
【考察】「離席なく,机上課題に取り組める」はセルフコントロールスキルの行動のコントロールで分類したが,周囲に合わせて行動できる事や姿勢保持,注意集中力が必要である.SST場面での着席時間は学校生活と比較して短時間である事,着席する時間と運動する時間が交互にくみ込まれている事,対象が少人数でありOTRが近位介入できる事,他児に離席者がいない事で正の変化を得たと考える.「思い通りにならなくても怒らない,騒がない」はセルフコントロールスキルの感情と行動のコントロールで分類したが,小集団により他者の行動や目標を意識し自身の行動が抑制されやすい事,個人目標に設定することで意識づけが強化されやすい環境であった事などが考えられる.「意見を決める方法がわかる」については幼児期から就学期かけて集団生活や遊びの中で学習を促される課題であり,SSTにおいても繰り返し取りあげ使用することで習得しやすく正の変化を得たと考える.よって予習復習によるホームプログラムで繰り返し学習する事で効果が得やすい可能性がある.一方「話の内容やルールが分かる」「目標と自分の行動を照らし合わせ評価できる」で必要とされる能力は理解力や記憶力,集中力である.集団においては複数の対象者に一斉指示で理解を促していくため,理解の程度にばらつきがあり個々への対応が必要となる.今後は,メンバーの知的発達レベルをある程度統一する,事前に自宅で学習(予習)をさせる,個々に合わせて提示方法を検討する,注意集中を促す方法を検討する事でより効果の得られるトレーニングになると考える.