[OI-4-3] 口述発表:発達障害 4WAVES数字みくらべ課題を用いた日常生活における視覚関連症状の検討
視線解析装置を用いた分析結果から
【序論・目的】 筆者の勤務施設では,「見る力」を育てるビジョンアセスメント(Wide-rangeAssessment of Vision-related Essential Skills:以下WAVES)が活用されており,下位項目の数字みくらべ課題Ⅰ,Ⅱが,眼球運動能力等を評価する事が可能とされている.これまで,これらの課題実施中の視線の動きを解析した報告は確認されない.本研究の目的は,WAVES数字みくらべ課題実施中の視線の動きの解析を行い,学習に困難さを訴える児童の眼球運動の特徴,学校生活面との関連性を明らかにする事である.
【方法】外来リハビリテーション利用中の学習に困難さがあるまたは指摘のある児童(非定型発達群8名),発達障害の診断が無く,普通学級に所属している児童(定型発達群20名)を対象に2021年10-12月にかけてデータ収集を行った.課題としてWAVES数字みくらべ課題Ⅰ,数字みくらべ課題Ⅱをパソコンモニター上(15.6インチ)に提示.アイトラッカー(TobiiX2-300)とソフトウェア(Tobii studio 3.4.8)を用いて課題の提示,分析を行った.また,学童期用視覚関連症状チェックリスト(Visual related Symptom and Performance Check list:以下,VSPCL)の回答を保護者に求めた.非定型発達群,定型発達群で得られた結果に対してMann-WhitneyのU検定を実施した.数字みくらべ課題Ⅰ,Ⅱで得られた結果とVSPCL各項目の結果に対しSpearmanの順位相関係数を実施した.数字みくらべ課題Ⅰ,Ⅱの所要時間とVSPCL下位項目に対して二項ロジスティック回帰分析を行い,有意差のある項目に対しROC解析を行った.統計解析はSPSS ver.26を用い,有意水準は5%とした.なお,本研究は,所属施設の倫理審査委員会の審査を受け,承認を得て実施した.
【結果】非定型発達群6名平均±標準偏差9.8±1.3歳(範囲8-12歳),定型発達群13名平均±標準偏差10.3±1.4歳(範囲8-12歳)の情報を収集する事ができた. Mann-WhitneyのU検定の結果,各群の数字みくらべ課題Ⅰ,Ⅱで有意差は認められなかった.しかし,非定型発達群の中に明らかに所要時間,停留回数が増加している児を認めた.数字みくらべ課題Ⅰ,ⅡとVSPCLの相関においては,数字みくらべⅠの時間とVSPCL合計得点(r=0.531),読み書き関連の視活動(r=0.675),空間認識(r=0.517)で有意な相関を認めた.数字みくらべⅡの時間と読み書き関連の視活動(r=0.593),空間認識(r=0.517)の項目で有意な相関を認めた.ロジスティック回帰分析の結果,数字みくらべ課題Ⅰの1行あたりの停留時間とVSPCL「合計得点」「読み書き関連の視活動」「空間認識」で各々73.4%,78.9%,73.7%の判別率が求められた.また,ROC解析の結果,数字みくらべ課題Ⅰの1行あたりの停留時間が,4,035msec以上でVSPCLにおける「合計得点」,「読み書き関連の視活動」,3,790msec以上で「空間の認識」の項目で困難さを示す可能性が示唆された.
【考察・結論】数字みくらべ課題において,非定型発達群において1行あたりの所要時間,停留回数が明らかに増加している児童が認められた.この背景として,前頭葉の抑制機能の低下から衝動性眼球運動のコントロールに困難さが出現し,所要時間や停留回数が増加すると報告されている.今後は脳機能との関連について検討が必要である.ROC解析の結果,数字みくらべ課題Ⅰの1行あたりの停留時間が,VSPCLにおける「合計得点」,「読み書き関連の視活動」,「空間の認識」の困難さを予測できる可能性が示唆された.しかし,疾患や年齢群の統制がとれていない事,対象児数の少なさが課題である.対象者数を増やし,疾患毎,年齢毎の更なる検討を行う必要性がある.
【方法】外来リハビリテーション利用中の学習に困難さがあるまたは指摘のある児童(非定型発達群8名),発達障害の診断が無く,普通学級に所属している児童(定型発達群20名)を対象に2021年10-12月にかけてデータ収集を行った.課題としてWAVES数字みくらべ課題Ⅰ,数字みくらべ課題Ⅱをパソコンモニター上(15.6インチ)に提示.アイトラッカー(TobiiX2-300)とソフトウェア(Tobii studio 3.4.8)を用いて課題の提示,分析を行った.また,学童期用視覚関連症状チェックリスト(Visual related Symptom and Performance Check list:以下,VSPCL)の回答を保護者に求めた.非定型発達群,定型発達群で得られた結果に対してMann-WhitneyのU検定を実施した.数字みくらべ課題Ⅰ,Ⅱで得られた結果とVSPCL各項目の結果に対しSpearmanの順位相関係数を実施した.数字みくらべ課題Ⅰ,Ⅱの所要時間とVSPCL下位項目に対して二項ロジスティック回帰分析を行い,有意差のある項目に対しROC解析を行った.統計解析はSPSS ver.26を用い,有意水準は5%とした.なお,本研究は,所属施設の倫理審査委員会の審査を受け,承認を得て実施した.
【結果】非定型発達群6名平均±標準偏差9.8±1.3歳(範囲8-12歳),定型発達群13名平均±標準偏差10.3±1.4歳(範囲8-12歳)の情報を収集する事ができた. Mann-WhitneyのU検定の結果,各群の数字みくらべ課題Ⅰ,Ⅱで有意差は認められなかった.しかし,非定型発達群の中に明らかに所要時間,停留回数が増加している児を認めた.数字みくらべ課題Ⅰ,ⅡとVSPCLの相関においては,数字みくらべⅠの時間とVSPCL合計得点(r=0.531),読み書き関連の視活動(r=0.675),空間認識(r=0.517)で有意な相関を認めた.数字みくらべⅡの時間と読み書き関連の視活動(r=0.593),空間認識(r=0.517)の項目で有意な相関を認めた.ロジスティック回帰分析の結果,数字みくらべ課題Ⅰの1行あたりの停留時間とVSPCL「合計得点」「読み書き関連の視活動」「空間認識」で各々73.4%,78.9%,73.7%の判別率が求められた.また,ROC解析の結果,数字みくらべ課題Ⅰの1行あたりの停留時間が,4,035msec以上でVSPCLにおける「合計得点」,「読み書き関連の視活動」,3,790msec以上で「空間の認識」の項目で困難さを示す可能性が示唆された.
【考察・結論】数字みくらべ課題において,非定型発達群において1行あたりの所要時間,停留回数が明らかに増加している児童が認められた.この背景として,前頭葉の抑制機能の低下から衝動性眼球運動のコントロールに困難さが出現し,所要時間や停留回数が増加すると報告されている.今後は脳機能との関連について検討が必要である.ROC解析の結果,数字みくらべ課題Ⅰの1行あたりの停留時間が,VSPCLにおける「合計得点」,「読み書き関連の視活動」,「空間の認識」の困難さを予測できる可能性が示唆された.しかし,疾患や年齢群の統制がとれていない事,対象児数の少なさが課題である.対象者数を増やし,疾患毎,年齢毎の更なる検討を行う必要性がある.