[OI-4-4] 口述発表:発達障害 4脊髄性筋萎縮症1型児に対する作業療法と家族支援について
【はじめに】脊髄性筋萎縮症(以下SMA)は筋力低下,筋肉萎縮,筋緊張低下などを呈する疾患である.2020年3月にオナセムノゲンアベパルボベクが承認され,投与することにより生存率や運動機能改善が報告されたが,リハビリテーションプログラムについての報告は少ない.今回,脊髄性筋萎縮症1型児に対して行った作業療法プログラムについて考察を加えて報告する.なお,本発表内容についてご家族に十分に説明し,書面にて同意を得た.
【目的】脊髄性筋萎縮症1型児の作業療法について,有効な介入方法を考察する.
【事例紹介】生後7か月 女児 正期産,周産期異常なし.
【現病歴】生後2か月の時点で下肢の運動が足趾しか認められず乳児検診においても経過観察とされていた.その後,感冒症状で近医に受診していたが改善せず,顔色不良となり前医受診し右上葉無気肺の診断で入院となった.その後の検査で脊髄性筋萎縮症Ⅰ型と診断され,治療目的にX年Y月Z日に当院入院,翌日からPT/OT/STが開始となった.開始時CHOP intend15/64点であった.Z+4日,Z+19日にヌシネルセン投与,:Z+27日にオナセムノゲンアベパルボベク投与.Z+62日に退院となった.
【身体所見】身長64㎝,体重8.0㎏ 1Lカヌラ使用,Spo2:100%
シーソー呼吸あり,未定頚,全身低緊張,前腕回内位,舌の線維束性収縮あり
除重力位での四肢運動はわずかに可能だが頸部回旋見られなかった.追視・声/音に対する反応あり.
家族は終日付き添いしているが,児への接触は医療機器もあり,やや怖々な印象.ご家族が持参した玩具は児には重く,把持・支持は困難であった.
【作業療法】方針:児が遊びを行えるように廃棄できるまたは清拭・消毒できる素材で玩具や自助具を作成し,リハビリ以外の時間も家族が児と関われる方法を検討・指導する
①グローブに鈴,ビニールにビーズを入れ聴覚・視覚刺激を利用したおもちゃを作成.軽くて握ることも可能にした.②ネオプレーンとリボン/セラバンド(赤)組み合わせてスリングを作成.除重力での運動を実施.③ワイヤーネットを使用し,座椅子を作成.母と向かい合って遊べるようにした.④その他:タッチング方法の指導や側臥位・ベッドアップ時のポジショニング指導を行った.また,遊び方を提示し,動き変化などをその都度お伝えした.加えて,児の疲労のサインをお伝えし,活動終了のタイミングを共有した.
【結果】
スリングを作成し除重力位での四肢の運動を可能にし,リハビリ以外でも家族が児と関わる時間は増加した.四肢を動かす頻度は増え,退院前のCHOP intend29/64点まで上昇した.作成した道具は自宅に持ち帰り,在宅でも同様の運動を継続した.その後週に1回程度の訪問リハも開始となり,半年後の検診時のCHOP intend43点となった.未定頚ではあるが上肢の抗重力運動が可能となった.
【考察】今回,入院直後より作業療法介入を開始し,十分に道具の使い方や遊び方を家族にお伝えすることができた.それにより入院中ではリハビリテーション以外の時間,退院後は生活の中にリハビリテーションの視点を取り入れ活動を実施することが出来た.井之上らは小児のリハビリテーションは家族の支援,発達の支援,生活の支援が大切であると述べており,本事例ではそれらを取り入れた関わりができたことで変化が得られたと考える.しかしながら,下肢・体幹・頸部の発達促進には課題が残っており,より粗大な運動を誘導できるような方法を検討していくことは必要である.また,今後は症状出現前に発見できるような体制が整うことも重要であると言える.
【目的】脊髄性筋萎縮症1型児の作業療法について,有効な介入方法を考察する.
【事例紹介】生後7か月 女児 正期産,周産期異常なし.
【現病歴】生後2か月の時点で下肢の運動が足趾しか認められず乳児検診においても経過観察とされていた.その後,感冒症状で近医に受診していたが改善せず,顔色不良となり前医受診し右上葉無気肺の診断で入院となった.その後の検査で脊髄性筋萎縮症Ⅰ型と診断され,治療目的にX年Y月Z日に当院入院,翌日からPT/OT/STが開始となった.開始時CHOP intend15/64点であった.Z+4日,Z+19日にヌシネルセン投与,:Z+27日にオナセムノゲンアベパルボベク投与.Z+62日に退院となった.
【身体所見】身長64㎝,体重8.0㎏ 1Lカヌラ使用,Spo2:100%
シーソー呼吸あり,未定頚,全身低緊張,前腕回内位,舌の線維束性収縮あり
除重力位での四肢運動はわずかに可能だが頸部回旋見られなかった.追視・声/音に対する反応あり.
家族は終日付き添いしているが,児への接触は医療機器もあり,やや怖々な印象.ご家族が持参した玩具は児には重く,把持・支持は困難であった.
【作業療法】方針:児が遊びを行えるように廃棄できるまたは清拭・消毒できる素材で玩具や自助具を作成し,リハビリ以外の時間も家族が児と関われる方法を検討・指導する
①グローブに鈴,ビニールにビーズを入れ聴覚・視覚刺激を利用したおもちゃを作成.軽くて握ることも可能にした.②ネオプレーンとリボン/セラバンド(赤)組み合わせてスリングを作成.除重力での運動を実施.③ワイヤーネットを使用し,座椅子を作成.母と向かい合って遊べるようにした.④その他:タッチング方法の指導や側臥位・ベッドアップ時のポジショニング指導を行った.また,遊び方を提示し,動き変化などをその都度お伝えした.加えて,児の疲労のサインをお伝えし,活動終了のタイミングを共有した.
【結果】
スリングを作成し除重力位での四肢の運動を可能にし,リハビリ以外でも家族が児と関わる時間は増加した.四肢を動かす頻度は増え,退院前のCHOP intend29/64点まで上昇した.作成した道具は自宅に持ち帰り,在宅でも同様の運動を継続した.その後週に1回程度の訪問リハも開始となり,半年後の検診時のCHOP intend43点となった.未定頚ではあるが上肢の抗重力運動が可能となった.
【考察】今回,入院直後より作業療法介入を開始し,十分に道具の使い方や遊び方を家族にお伝えすることができた.それにより入院中ではリハビリテーション以外の時間,退院後は生活の中にリハビリテーションの視点を取り入れ活動を実施することが出来た.井之上らは小児のリハビリテーションは家族の支援,発達の支援,生活の支援が大切であると述べており,本事例ではそれらを取り入れた関わりができたことで変化が得られたと考える.しかしながら,下肢・体幹・頸部の発達促進には課題が残っており,より粗大な運動を誘導できるような方法を検討していくことは必要である.また,今後は症状出現前に発見できるような体制が整うことも重要であると言える.