第56回日本作業療法学会

講演情報

一般演題

発達障害

[OI-4] 一般演題:発達障害 4

2022年9月17日(土) 14:50 〜 16:00 第7会場 (RoomD)

座長:吉岡 和哉(群馬パース大学)

[OI-4-5] 口述発表:発達障害 4外来作業療法を実施した発達障害者家族の抱える"困りごと"に関する研究(第2報)

関森 英伸12渡邉 清美1谷口 敬道12杉原 素子12 (1国際医療福祉大学保健医療学部作業療法学科,2国際医療福祉大学大学院)

【はじめに】
本研究の最終目的は,ICTを活用した『発達障害児者相談支援システム』の開発である.筆者はこれまで,発達障害外来機能をもつ医療機関Aで外来作業療法(以下OT)を実施し,OTを実施した発達障害者の追跡調査を行い,発達障害者および家族支援について検討してきた.前回,OTを実施した発達障害者家族の抱える“困りごと”について,過去5回の追跡調査データを整理し,その特徴を捉えるとともに家族支援について考察した(関森2020).今回,“困りごと”に対する“解決方法”を社会参加に繋がっている発達障害者家族より収集したことで,『発達障害者相談支援システム』の開発・試用が本格的に始動したため,経過を報告する.なお本報告において,対象者の同意等,倫理的配慮のもと実施している.
【方法】
これまでに収集した発達障害児者(知的障害を伴わない2~29歳)の保護者の抱える“困りごと”を8カテゴリー(運動,生活,行動,対人,学習,進学,就労,その他)143項目に整理した.この143項目の整理した”困りごと”を『家族の“困りごと”リスト』とし,これまでに追跡調査に協力した保護者87名に閲覧依頼した.同時に保護者に自分の子育てを振り返ってもらい,これまでに子育てで経験した“困りごと”に対し,“解決方法”やその後の経過を返答用紙,メール,Google formsのいずれかで回答依頼した.
【結果】
保護者53名から回答(60.9%)があり, 143項目のうち87項目(60.8%)について保護者からの何らかの“解決方法” が合計215件収集された.保護者の“困りごと”に対して“解決方法”が多く寄せられた内容は,運動面の運動が苦手/不器用さがある,生活面の片付け/整理整頓が苦手,行動面の行き渋り/不登校,対人面の言葉の遅れ,学習面の学習の遅れ/成績不良,就労面の就職できるか不安,その他の自分に発達障害がある事は知らない(障害告知をどうするか)等,多岐にわたっていた.保護者から収集した“解決方法”を整理すると,幼児期から成人期まで幅広い時期の内容が確認でき,専門機関/専門職の対応に留まらず,家族が子育て中に子どもの特性と向き合いながら対応した状況が具体的に確認できた.
【考察】
 これまで,発達障害者の追跡調査を行い,社会不適応を未然に防ぐ,また,保護者の“困りごと”を軽減する目的で『発達障害児者相談支援システム』を検討してきた.今回収集された保護者の具体的な“解決方法”は,どれも生活場面でご家族が子どもの応答に応じて試行錯誤し取り組んだ貴重な情報である.我々専門職の対応・アドバイスは対象児者の特性に合わせてできるだけ具体的に提案するものの,実際の生活場面を確認しながら行うことには限界がある.今回収集した子どもに実践された”解決方法”は,専門職の対応・アドバイスと並行し,日々悩みながら子育てを続けている家族の役に立つ可能性が高いと考える.
 現在我々は,これまで蓄積した情報をもとにシステムエンジニアの協力を得て『支援システム』を構築し,ICTを活用した『困りごと解決システム』として試用を開始している.今後,規模を拡大しながら試用を続け,発達障害児者を育てる保護者が安心して子育てに臨め,子どもの不適応を未然に防ぐことを目指している.