[OJ-2-3] 口述発表:高齢期 2OPHI-Ⅱと考える楽しさの提供により作業参加が改善した栄養障害の事例
【はじめに】今回,重度の栄養障害が改善せず,抑うつ傾向を示したA氏に,作業遂行歴面接第2版(以下,OPHI-Ⅱ)の実施によりこれまで語られてこなかった想いを表出し,それをきっかけに,筆頭著者にエクセルを指導する役割が芽生え,その後A氏の趣味である将棋を考える楽しさを提供した.その結果,A氏は自らADL訓練や歩行訓練をしたいと訴え,将棋を習慣とするなど作業参加が改善した.本報告の目的は,事例の作業への動機づけが改善し,作業参加が改善した要因を検討することである.尚,本報告は対象者に説明し同意を得ている.
【事例紹介】A氏は70歳代男性で,診断名は化膿性脊椎炎,腰部脊柱管狭窄症術後である.A氏はアルブミン値1.1g/dLと重度栄養障害の状態であり身体機能訓練中心の介入を低負荷で実施した.また,週3回の透析日は疲労感が強くベッド上での下肢筋力訓練を実施した.A氏は「歩けるようになりたい」と希望を語るが疲労が強く,途中で筋力訓練を度々拒否した.作業療法(以下,OT)を開始して14日目でも著明な変化はなく,「歩けないなら何も意味がない」「ナースコールで首でも吊ろうかな」と語り,観察から自己効力感の低下や抑うつ状態がみられた.
【作業療法評価】MMTは下肢左右ともに2~3で,寝返り以外の基本動作や食事・整容以外のADLは介助が必要であった.人間作業モデルスクリーニングツール(以下,MOHOST)は47/96点で,作業への動機づけは5/16点で,OT以外の時間は臥床状態が続いた.
そこで,A氏の重要な作業を用いて自己効力感や抑うつ傾向を改善し,活動性の向上を促そうと考え,A氏の重要な作業を探索するために,OPHI-Ⅱを実施することとした.
【介入経過】A氏はOPHI-Ⅱに対し意欲的で,重要な作業は,「エクセルで仕事をすること」であるとしたため,A氏にエクセルを教えてもらった.また,作業歴を語ることに意欲的なため,透析日は「自叙伝づくり」を実施した.エクセル後は「結構できるものだな」と笑顔がみられ,自叙伝づくりも意欲的に語っていた.また,自発的な離床への希望がみられ,「時代劇のDVD鑑賞」など余暇活動に取り組んでいた.
自叙伝の完成後には,「次は将棋するか」と語ったので,A氏の自己効力感をより改善するために,「将棋」に対する高齢者版・余暇活動の楽しさ評価法を実施した.その結果,「考える楽しさ」の特徴が強く,考える楽しさの治療戦略である「考えながら行うと楽しい」「気づけると楽しい」を用いて介入した.すると,将棋終了後に「明日はトイレの練習をするか」とADL訓練への希望がみられた.また,理学療法ではA氏は「歩きたい」と訴え,3m程度歩行器を使用し介助で歩くことができ「まさか歩けるとは思わなかった」と笑顔がみられた.
【結果】座位保持は可能となったが,MMT,ADLでは変化はなかった.MOHOSTは67/96点となり,作業への動機づけは14/16点と改善し,様々な活動選択がみられるなど自己効力感が改善し,活動性が向上した.
【考察】自己効力感などを意味する個人的原因帰属は人が物事を行うことにどのように動機づけられるのかに影響する(Taylor,RR,2019)とされている.A氏はエクセルを指導する役割をきっかけに,自己効力感が改善したことで,個人的原因帰属を含む作業への動機づけが改善し,様々な活動選択を始めるなど作業参加が改善したと考える.
日谷(2014)らは楽しさを提供することで,自ら問題と向き合い,新たな活動に挑戦した事例を報告しているが,A氏も「将棋」の考える楽しさを提供したことで自らの問題に向き合うとともに,ADL訓練や歩行訓練への挑戦感が高まるなど,作業への動機づけが改善したと考える.
【事例紹介】A氏は70歳代男性で,診断名は化膿性脊椎炎,腰部脊柱管狭窄症術後である.A氏はアルブミン値1.1g/dLと重度栄養障害の状態であり身体機能訓練中心の介入を低負荷で実施した.また,週3回の透析日は疲労感が強くベッド上での下肢筋力訓練を実施した.A氏は「歩けるようになりたい」と希望を語るが疲労が強く,途中で筋力訓練を度々拒否した.作業療法(以下,OT)を開始して14日目でも著明な変化はなく,「歩けないなら何も意味がない」「ナースコールで首でも吊ろうかな」と語り,観察から自己効力感の低下や抑うつ状態がみられた.
【作業療法評価】MMTは下肢左右ともに2~3で,寝返り以外の基本動作や食事・整容以外のADLは介助が必要であった.人間作業モデルスクリーニングツール(以下,MOHOST)は47/96点で,作業への動機づけは5/16点で,OT以外の時間は臥床状態が続いた.
そこで,A氏の重要な作業を用いて自己効力感や抑うつ傾向を改善し,活動性の向上を促そうと考え,A氏の重要な作業を探索するために,OPHI-Ⅱを実施することとした.
【介入経過】A氏はOPHI-Ⅱに対し意欲的で,重要な作業は,「エクセルで仕事をすること」であるとしたため,A氏にエクセルを教えてもらった.また,作業歴を語ることに意欲的なため,透析日は「自叙伝づくり」を実施した.エクセル後は「結構できるものだな」と笑顔がみられ,自叙伝づくりも意欲的に語っていた.また,自発的な離床への希望がみられ,「時代劇のDVD鑑賞」など余暇活動に取り組んでいた.
自叙伝の完成後には,「次は将棋するか」と語ったので,A氏の自己効力感をより改善するために,「将棋」に対する高齢者版・余暇活動の楽しさ評価法を実施した.その結果,「考える楽しさ」の特徴が強く,考える楽しさの治療戦略である「考えながら行うと楽しい」「気づけると楽しい」を用いて介入した.すると,将棋終了後に「明日はトイレの練習をするか」とADL訓練への希望がみられた.また,理学療法ではA氏は「歩きたい」と訴え,3m程度歩行器を使用し介助で歩くことができ「まさか歩けるとは思わなかった」と笑顔がみられた.
【結果】座位保持は可能となったが,MMT,ADLでは変化はなかった.MOHOSTは67/96点となり,作業への動機づけは14/16点と改善し,様々な活動選択がみられるなど自己効力感が改善し,活動性が向上した.
【考察】自己効力感などを意味する個人的原因帰属は人が物事を行うことにどのように動機づけられるのかに影響する(Taylor,RR,2019)とされている.A氏はエクセルを指導する役割をきっかけに,自己効力感が改善したことで,個人的原因帰属を含む作業への動機づけが改善し,様々な活動選択を始めるなど作業参加が改善したと考える.
日谷(2014)らは楽しさを提供することで,自ら問題と向き合い,新たな活動に挑戦した事例を報告しているが,A氏も「将棋」の考える楽しさを提供したことで自らの問題に向き合うとともに,ADL訓練や歩行訓練への挑戦感が高まるなど,作業への動機づけが改善したと考える.