[OJ-3-5] 口述発表:高齢期 3回復期リハビリテーション病棟入院患者における栄養状態が日常生活活動,転帰先に与える影響
【はじめに】
回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟において施設基準の栄養に関する内容の追加等,近年リハ栄養の重要性が提唱されている.回復期リハ病棟に入院する患者の43.5%が低栄養であり, 脳卒中患者においては栄養障害がADL帰結と在宅復帰率に影響を与えていたことが明らかにされている(西岡ら,2015).当院は,高齢化率の高い地域に立地し,入院患者の年齢層として後期高齢者の割合が高い.本研究では,当院の高齢化率の高い入院患者層における栄養状態とADL帰結,転帰先との関係を明らかにすることを目的として実施した.
【方法】
対象は2019年11月15日から2021年12月13日の間に当院回復期リハ病棟に入棟した患者303名のうち入棟時栄養指標が記録されていた253名(81.0±11.5歳,男性91名,女性162名)とした.基本情報(年齢,性別,算定疾患),入棟時調査項目として,栄養関連指標(血清アルブミン値;Alb値,Mini Nutritional Assessment Short Form;NMA-SF,体重,Body Mass Index;BMI,活動係数,ストレス係数),ADL指標(Functional Independence Measure;FIM)を,退棟時調査項目として体重,BMI,活動係数,ストレス係数,FIM,転帰(自宅・介護施設・医療機関・死亡),在院日数を収集した.栄養状態の定義はMNA-SFで低栄養(7点以下)の基準に入り,かつ蛋白質・エネルギー低栄養状態の指標とされるAlb値が3.5g/dl以下に属する状態を低栄養状態,それ以外を非低栄養状態とした.左記2群間の転帰先の比較には,χ2検定を用いて実施した.また,栄養状態のADL帰結との関連性の有無を調査するため,退棟時FIM運動項目合計点を従属変数とし,独立変数として年齢,性別,算定疾患,入棟時のBMI・活動係数・ストレス係数・FIM運動項目合計点・FIM認知項目合計点・MNA-SF得点・Alb値を投入した重回帰分析を実施した.重回帰分析は,75歳以上の後期高齢群と75歳未満の非後期高齢群に分類して実施した.尚,各独立変数間の相関係数はすべて0.7未満であることを確認した.いずれの検定も有意確率5%未満を有意差ありと判断した.本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者は,低栄養群107名(84.0±10.2歳,男性43名,女性64名),非低栄養群145名(79.0±12.2歳,男性47名,女性98名)であった.転帰としては,低栄養群(自宅42.1%,介護施設40.2%,医療施設15.0%,死亡2.8%),非低栄養群(自宅71.7%,介護施設22.8%,医療施設5.5%,死亡0%)と,低栄養群の自宅退院率は非低栄養群と比較し有意に低く,自宅以外のそれぞれの割合が有意に高かった.退棟時FIM運動項目合計点を従属変数とした重回帰分析では,後期高齢群175名(85.0±5.7歳)においては,入棟時のFIM運動項目合計点・認知項目合計点・Alb値が影響を与える因子であることが示された(p<0.01,決定係数R2=0.704). 非後期高齢群78名(69.0±9.9歳)においては,入棟時のFIM運動項目合計点・認知項目合計点,疾患(廃用症候群)が影響を与える因子として抽出された.(p<0.05,決定係数R2=0.491)
【考察】
高齢化率の高い患者層においても,回復期リハ病棟入棟時に低栄養状態であることは,転帰としての自宅復帰率の低さへも関連してくることが明らかになった.また,後期高齢群では,退棟時FIM運動項目に影響を与える因子として入棟時FIMと独立した因子として Alb値が抽出された.後期高齢者では,Alb値に反映される栄養状態の影響がADL帰結に影響を与えるため,年齢と合わせたAlb値のモニタリングが重要であることが示唆された.
回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟において施設基準の栄養に関する内容の追加等,近年リハ栄養の重要性が提唱されている.回復期リハ病棟に入院する患者の43.5%が低栄養であり, 脳卒中患者においては栄養障害がADL帰結と在宅復帰率に影響を与えていたことが明らかにされている(西岡ら,2015).当院は,高齢化率の高い地域に立地し,入院患者の年齢層として後期高齢者の割合が高い.本研究では,当院の高齢化率の高い入院患者層における栄養状態とADL帰結,転帰先との関係を明らかにすることを目的として実施した.
【方法】
対象は2019年11月15日から2021年12月13日の間に当院回復期リハ病棟に入棟した患者303名のうち入棟時栄養指標が記録されていた253名(81.0±11.5歳,男性91名,女性162名)とした.基本情報(年齢,性別,算定疾患),入棟時調査項目として,栄養関連指標(血清アルブミン値;Alb値,Mini Nutritional Assessment Short Form;NMA-SF,体重,Body Mass Index;BMI,活動係数,ストレス係数),ADL指標(Functional Independence Measure;FIM)を,退棟時調査項目として体重,BMI,活動係数,ストレス係数,FIM,転帰(自宅・介護施設・医療機関・死亡),在院日数を収集した.栄養状態の定義はMNA-SFで低栄養(7点以下)の基準に入り,かつ蛋白質・エネルギー低栄養状態の指標とされるAlb値が3.5g/dl以下に属する状態を低栄養状態,それ以外を非低栄養状態とした.左記2群間の転帰先の比較には,χ2検定を用いて実施した.また,栄養状態のADL帰結との関連性の有無を調査するため,退棟時FIM運動項目合計点を従属変数とし,独立変数として年齢,性別,算定疾患,入棟時のBMI・活動係数・ストレス係数・FIM運動項目合計点・FIM認知項目合計点・MNA-SF得点・Alb値を投入した重回帰分析を実施した.重回帰分析は,75歳以上の後期高齢群と75歳未満の非後期高齢群に分類して実施した.尚,各独立変数間の相関係数はすべて0.7未満であることを確認した.いずれの検定も有意確率5%未満を有意差ありと判断した.本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【結果】
対象者は,低栄養群107名(84.0±10.2歳,男性43名,女性64名),非低栄養群145名(79.0±12.2歳,男性47名,女性98名)であった.転帰としては,低栄養群(自宅42.1%,介護施設40.2%,医療施設15.0%,死亡2.8%),非低栄養群(自宅71.7%,介護施設22.8%,医療施設5.5%,死亡0%)と,低栄養群の自宅退院率は非低栄養群と比較し有意に低く,自宅以外のそれぞれの割合が有意に高かった.退棟時FIM運動項目合計点を従属変数とした重回帰分析では,後期高齢群175名(85.0±5.7歳)においては,入棟時のFIM運動項目合計点・認知項目合計点・Alb値が影響を与える因子であることが示された(p<0.01,決定係数R2=0.704). 非後期高齢群78名(69.0±9.9歳)においては,入棟時のFIM運動項目合計点・認知項目合計点,疾患(廃用症候群)が影響を与える因子として抽出された.(p<0.05,決定係数R2=0.491)
【考察】
高齢化率の高い患者層においても,回復期リハ病棟入棟時に低栄養状態であることは,転帰としての自宅復帰率の低さへも関連してくることが明らかになった.また,後期高齢群では,退棟時FIM運動項目に影響を与える因子として入棟時FIMと独立した因子として Alb値が抽出された.後期高齢者では,Alb値に反映される栄養状態の影響がADL帰結に影響を与えるため,年齢と合わせたAlb値のモニタリングが重要であることが示唆された.