第56回日本作業療法学会

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一般演題

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[OK-4] 一般演題:認知障害(高次脳機能障害を含む) 4

Sat. Sep 17, 2022 2:50 PM - 4:00 PM 第4会場 (RoomA)

座長:井口 知也(大阪保健医療大学)

[OK-4-2] 口述発表:認知障害(高次脳機能障害を含む) 4回復期リハビリテーション病棟から自宅退院した認知機能低下高齢者の特徴と主介護者の介護負担要因の検討

木村 優斗1加藤 拓彦2田中 真2澄川 幸志3 (1社会医療法人 仁生会 西堀病院リハビリテーション課,2弘前大学 大学院保健学研究科 総合リハビリテーション科学領域,3福島県立医科大学 保健科学部 作業療法学科)

【はじめに】日本では核家族化が進み,老老介護が問題となっている.我が国の介護者の特徴として,介護負担が限界に達しても安易に介護を放棄しないことや一人で介護を担おうとする「抱え込み」の介護者の存在が報告されている.先行研究では,介護負担感に関連する要因について様々な検討が行われている.回復期リハビリテーション病棟(以下,回リハ病棟)に入院している患者のうち,1/3が認知症高齢者であると報告されているが,回リハ病棟退院後,認知機能低下高齢者を対象に,退院後の主介護者の介護負担感を縦断的に調査した報告は見当たらない.そこで本研究では,認知機能低下高齢者の転帰先に関連する要因の検討および回リハ病棟を退院した認知症機能低下高齢者を介護する主介護者の追跡調査を実施し,介護負担感に影響する因子について検討することを目的とした.
【方法】本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した.対象者は2020年12月〜2021年12月に当院回リハ病棟に自宅から入院した患者のうち,退院時のMini-Mental State Examination(以下,MMSE)が27点以下の患者,98名とした.退院時の調査項目は,転帰先(自宅か否か),在院日数,入退院時のMMSE,入退院時のBathel Index(以下,BI),退院時のNeuropsychiatric Inventory-Brief Questionnaire Form(以下,NPI-Q)の重症度と介護負担度,同居家族人数,介護保険サービス利用数とした.
自宅退院者のうち12名の追跡調査が可能であった.退院後の調査項目は,退院時調査項目に主介護者に関する性別,年齢,1日の介護時間,同居家族人数,主介護者の介護のストレス,介護保険サービス利用数,Zarit介護負担尺度日本語短縮版(以下,ZBI_8),Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(以下,CES-D)を加え,退院1ヶ月後に郵送にて調査を実施した.
統計解析は,退院時の転帰先の違い(自宅群,施設群)による各調査項目の比較にt検定を用いて比較した.また,退院後の介護負担感,介護ストレス,抑うつ度と他の調査項目との関連性の検討にはPearsonの積率相関分析にて求めた.有意水準は5%とした.
【結果】対象者は,転帰先により自宅群が19名と施設群が79名に分けられた.2群間で有意差が認められた調査項目は,入退院時MMSE及び入退院時BIの自宅群の評価結果が良好で在院日数が短く,同居家族人数が多く,介護保険利用サービス数が多かった(いずれもp<0.05).追跡調査が可能であった12名について介護負担等の関連傾向を分析した結果,主介護者の介護負担感,主介護者の介護のストレス,CES-Dは互いに相関が認められ(r=0.584〜0.882),主介護者の介護負担感は1日の介護時間,NPI-Q重症度,NPI-Q負担度と有意な正の相関が認められた(r=0.584〜0.868).また,CES-Dは,1日の介護時間(r=0.816,p=0.001)と有意な正の相関が認められた.介護者の介護のストレスは,患者に関する調査項目との相関が認められなかった.
【考察】本研究の結果,認知機能低下高齢者のうち自宅退院したものは,入退院時の日常生活活動の自立度や入退院時の認知機能が良好であり,介護保険利用サービス数及び同居家族人数が多いものであった.これらのうち介護保険サービスは提供可能な項目であり,活用出来うるサービス提供や情報提供が在宅復帰の促進に寄与することが考えられた.また,自宅退院した認知機能低下高齢者の介護者の介護負担感は,BPSDの重症度,負担度及び介護時間との関連が認められた.よって,BPSDや介護時間の軽減に対する介護支援の提供が介護負担感の軽減につながると考えられた.