[OM-1-2] 口述発表:MTDLP 1/ 理論 1家族と温泉旅行に行きたい
~MTDLPを活用し生きがいの再獲得を目指した症例~
【はじめに】生活行為向上マネジメント(Management Tool For Daily Life Performance 以下,MTDLP)を活用し症例の生きがいである旅行に焦点を当て介入を行った結果,身辺動作が自立し家族で外出が可能となったため報告する.本発表に際して症例と妻に説明を行い,口頭及び書面で同意を得ている.
【事例紹介】家族との温泉旅行を生きがいとしてきた70歳代男性.妻・長男と三人暮らしで長女夫婦・孫が近隣に在住.家族関係は良好だが長男とは関係性が希薄.X-2月,誘因なく下肢に力が入りにくくなり転倒.頚椎症性脊髄症と診断され入院,観血的手術施行後リハビリを経てX月退院.同月,訪問リハビリテーションとして作業療法(1回/週),理学療法(2回/週)開始となった.妻はX-2月に症例の介助をした際,腰椎圧迫骨折を呈しており,症例の介助は困難な状態.
【作業療法評価】初回に症例・妻に対しインテークを行った所,症例は「家族と温泉旅行に行きたい」,妻は「家の中を安全に歩けるようになってほしい」と話し,生活目標に相違があった.妻は「また転んだらどうしよう」「今度は支えきれない」と不安を感じており,症例の目標に対して「まだ先でしょう」と話していた.症例は左下肢の深部感覚が重度鈍麻(膝関節位置覚0/5,母趾運動覚1/5)しており,Berg Balance Scale(以下,BBS) 37点.自宅内移動は感覚障害によるふらつきに加え,短距離移動で疲労があったため歩行器歩行見守り.入浴は浴室内移動時の見守りや浴槽跨ぎに介助が必要であった.その他身辺動作は自立.合意目標は症例・妻と相談し,「自宅内の生活が自立し,娘夫婦の運転で温泉旅行に行くことができる(6か月)」とした.実行度/満足度は1/1.
【経過】生活行為課題分析シートを用いて合意目標達成に向けた課題を抽出し,段階的に目標を設定.症例・妻と共有しながら介入を行う方針とした.X月,自宅内歩行器歩行と入浴動作自立を短期目標に設定.ADL練習と下肢感覚障害に対して視覚フィードバックを用いた機能訓練を行い,症例に自主練習を指導.妻には不安の軽減を目的にリハビリへの同席を依頼し,安全に動作が行えることを確認した.また,ケアマネジャーと協力し自宅内の環境調整を実施.X+1月,短期目標達成.自宅内の生活が自立したことで妻の不安は軽減し「一生懸命頑張ってます」と症例の目標を応援するようになった.X+2月,旅行先の環境を想定し,歩行距離の延長(500m),坂道歩行獲得を目標に設定.不整地歩行練習や温泉内を想定した模擬訓練を行い,見守りが必要な場面を妻・長女夫婦と共有した.リハビリ以外の時間には症例と妻で散歩をするようになり,X+3月には坂道のある河川敷(1km)まで移動が可能となった.
【結果】自宅内独歩でADL自立,屋外はT字杖歩行見守りで1.5kmの移動が可能.左下肢の深部感覚は軽度鈍麻(膝関節位置覚4/5,母趾運動覚5/5),BBS 55点.X+5月,家族と旅行先近くの道の駅まで出かけ,買い物を楽しむことができた.X+6月に旅行へ行く計画だったが,緑内障の手術があり今後再計画することとなった.しかし,症例からは「温泉には行けそうです.また計画します.」と前向きな発言があり,妻も外出できたことを喜んでいた.実行度/満足度は7/9.
【考察】MTDLPを活用し,家族との外出が可能となった.症例と妻の間に生じていた目標の相違を合意目標という形で統合できたこと,生活行為課題分析シートを用いて温泉旅行に焦点を当てた目標設定と課題の共有を行い,家族の協力を得ながら介入を進められたことが要因であったと考える.
【事例紹介】家族との温泉旅行を生きがいとしてきた70歳代男性.妻・長男と三人暮らしで長女夫婦・孫が近隣に在住.家族関係は良好だが長男とは関係性が希薄.X-2月,誘因なく下肢に力が入りにくくなり転倒.頚椎症性脊髄症と診断され入院,観血的手術施行後リハビリを経てX月退院.同月,訪問リハビリテーションとして作業療法(1回/週),理学療法(2回/週)開始となった.妻はX-2月に症例の介助をした際,腰椎圧迫骨折を呈しており,症例の介助は困難な状態.
【作業療法評価】初回に症例・妻に対しインテークを行った所,症例は「家族と温泉旅行に行きたい」,妻は「家の中を安全に歩けるようになってほしい」と話し,生活目標に相違があった.妻は「また転んだらどうしよう」「今度は支えきれない」と不安を感じており,症例の目標に対して「まだ先でしょう」と話していた.症例は左下肢の深部感覚が重度鈍麻(膝関節位置覚0/5,母趾運動覚1/5)しており,Berg Balance Scale(以下,BBS) 37点.自宅内移動は感覚障害によるふらつきに加え,短距離移動で疲労があったため歩行器歩行見守り.入浴は浴室内移動時の見守りや浴槽跨ぎに介助が必要であった.その他身辺動作は自立.合意目標は症例・妻と相談し,「自宅内の生活が自立し,娘夫婦の運転で温泉旅行に行くことができる(6か月)」とした.実行度/満足度は1/1.
【経過】生活行為課題分析シートを用いて合意目標達成に向けた課題を抽出し,段階的に目標を設定.症例・妻と共有しながら介入を行う方針とした.X月,自宅内歩行器歩行と入浴動作自立を短期目標に設定.ADL練習と下肢感覚障害に対して視覚フィードバックを用いた機能訓練を行い,症例に自主練習を指導.妻には不安の軽減を目的にリハビリへの同席を依頼し,安全に動作が行えることを確認した.また,ケアマネジャーと協力し自宅内の環境調整を実施.X+1月,短期目標達成.自宅内の生活が自立したことで妻の不安は軽減し「一生懸命頑張ってます」と症例の目標を応援するようになった.X+2月,旅行先の環境を想定し,歩行距離の延長(500m),坂道歩行獲得を目標に設定.不整地歩行練習や温泉内を想定した模擬訓練を行い,見守りが必要な場面を妻・長女夫婦と共有した.リハビリ以外の時間には症例と妻で散歩をするようになり,X+3月には坂道のある河川敷(1km)まで移動が可能となった.
【結果】自宅内独歩でADL自立,屋外はT字杖歩行見守りで1.5kmの移動が可能.左下肢の深部感覚は軽度鈍麻(膝関節位置覚4/5,母趾運動覚5/5),BBS 55点.X+5月,家族と旅行先近くの道の駅まで出かけ,買い物を楽しむことができた.X+6月に旅行へ行く計画だったが,緑内障の手術があり今後再計画することとなった.しかし,症例からは「温泉には行けそうです.また計画します.」と前向きな発言があり,妻も外出できたことを喜んでいた.実行度/満足度は7/9.
【考察】MTDLPを活用し,家族との外出が可能となった.症例と妻の間に生じていた目標の相違を合意目標という形で統合できたこと,生活行為課題分析シートを用いて温泉旅行に焦点を当てた目標設定と課題の共有を行い,家族の協力を得ながら介入を進められたことが要因であったと考える.