[OM-1-4] 口述発表:MTDLP 1/ 理論 1訪問看護利用者に対する生活行為向上マネジメントを活用した作業療法の介入効果
【背景と目的】生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)を用いた介入研究では,訪問リハビリテーションにおいて,自己効力感の改善により転倒恐怖感を軽減した報告(伊藤ら,2020)などがあるが,訪問看護利用者におけるMTDLPを活用した作業療法の効果については検証されていない.そこで,本研究の目的は,訪問看護利用者に対するMTDLPを活用した作業療法の介入効果を明らかにすることにした.良好な介入効果は,応用的・社会適応プログラムの構築につながり,要介護者の自立支援に寄与することが期待できる.なお,本研究は吉備国際大学倫理審査委員会の承認を得て実施された.
【対象と方法】本研究の研究デザインは,シングルシステムデザインのAB法を採用した.対象はA訪問看護事業所に登録している要介護認定者7名とした.分析方法として,まず各期の目標とプログラムの特徴について検証した.次に,各調査時期における調査項目の平均値を比較するため,1元配置の線形混合モデルにて分析し,さらに多重比較としてBonferroni法を用い各期の介入効果を検証した.最後に,MTDLP介入前後の実行度・満足度を比較するため,対応のあるt検定を使用しB期の介入効果を検証した.統計ソフトはIBM SPSS Statistics 28 for windowsを用い,有意水準は5%とした.
【結果】各期の目標について,A期は歩行機能に着目した目標が立案されていたのに対し,B期はA期の目標を具体化した目標が立案されていた.また,プログラムでは,A期は機能訓練を中心に行われていたのに対し,B期は機能訓練だけでなく対象者の希望する生活行為やその一連の行為を中心に計画した日常生活動作(以下,ADL)及び手段的日常生活動作(以下,IADL)練習,環境調整が行われていた.各調査時期における調査項目の比較では,Barthel Index(以下,BI)やEuro QOLのEQ-5D-5LはMTDLP介入前調査と事後調査は事後調査の値が有意に高かった.改訂版Frenchy Activities Indexや老研式活動能力指標,Euro QOLの視覚評価法では有意差はみられなかった.また,MTDLP介入前後の実行度・満足度の比較では,生活目標の実行度はMTDLP介入前調査と事後調査は事後調査の値が有意に高かったが,満足度では有意差はみられなかった.
【考察】訪問看護利用者におけるMTDLPのプログラムの特徴について,機能訓練,応用練習,社会適応練習が万遍なく行われており,訪問看護利用者におけるMTDLPの介入は有効な手段であった.MTDLPの介入効果について,ADLはMTDLP介入から3ヵ月後に有意な得点の向上を認めたが,その値は小さかった.その要因として,合意目標やその達成状況の違い,BIの採点方法では対象者の細かな変化を把握することは困難であったことが影響したと考えらえる.IADLでは,有意な改善は認められなかったため,今後は対象者のADL能力に応じて段階的に生活目標を設定していく必要がある.健康関連QOLでは,MTDLP介入から3ヵ月後に有意な得点の向上を認めたが,その値は小さかった.本研究の対象である訪問看護利用者は居宅において継続して療養を受ける状態にある者のため,健康関連QOLが変化しにくい状況下であったと推測される.生活目標では,実行度のみ有意な改善がみられた.MTDLPを活用した作業療法を提供することで生活目標が具体化され,それに対し多職種連携で介入したことで生活目標の達成につながった.満足度については,対象者の価値観の違いが改善に至らなかった要因であると思われる.今後は他事業所での実施やサンプルサイズを増やし,対象者の特性や調査内容を踏まえて検証していくことで,MTDLPの更なる発展に寄与することが期待される.
【対象と方法】本研究の研究デザインは,シングルシステムデザインのAB法を採用した.対象はA訪問看護事業所に登録している要介護認定者7名とした.分析方法として,まず各期の目標とプログラムの特徴について検証した.次に,各調査時期における調査項目の平均値を比較するため,1元配置の線形混合モデルにて分析し,さらに多重比較としてBonferroni法を用い各期の介入効果を検証した.最後に,MTDLP介入前後の実行度・満足度を比較するため,対応のあるt検定を使用しB期の介入効果を検証した.統計ソフトはIBM SPSS Statistics 28 for windowsを用い,有意水準は5%とした.
【結果】各期の目標について,A期は歩行機能に着目した目標が立案されていたのに対し,B期はA期の目標を具体化した目標が立案されていた.また,プログラムでは,A期は機能訓練を中心に行われていたのに対し,B期は機能訓練だけでなく対象者の希望する生活行為やその一連の行為を中心に計画した日常生活動作(以下,ADL)及び手段的日常生活動作(以下,IADL)練習,環境調整が行われていた.各調査時期における調査項目の比較では,Barthel Index(以下,BI)やEuro QOLのEQ-5D-5LはMTDLP介入前調査と事後調査は事後調査の値が有意に高かった.改訂版Frenchy Activities Indexや老研式活動能力指標,Euro QOLの視覚評価法では有意差はみられなかった.また,MTDLP介入前後の実行度・満足度の比較では,生活目標の実行度はMTDLP介入前調査と事後調査は事後調査の値が有意に高かったが,満足度では有意差はみられなかった.
【考察】訪問看護利用者におけるMTDLPのプログラムの特徴について,機能訓練,応用練習,社会適応練習が万遍なく行われており,訪問看護利用者におけるMTDLPの介入は有効な手段であった.MTDLPの介入効果について,ADLはMTDLP介入から3ヵ月後に有意な得点の向上を認めたが,その値は小さかった.その要因として,合意目標やその達成状況の違い,BIの採点方法では対象者の細かな変化を把握することは困難であったことが影響したと考えらえる.IADLでは,有意な改善は認められなかったため,今後は対象者のADL能力に応じて段階的に生活目標を設定していく必要がある.健康関連QOLでは,MTDLP介入から3ヵ月後に有意な得点の向上を認めたが,その値は小さかった.本研究の対象である訪問看護利用者は居宅において継続して療養を受ける状態にある者のため,健康関連QOLが変化しにくい状況下であったと推測される.生活目標では,実行度のみ有意な改善がみられた.MTDLPを活用した作業療法を提供することで生活目標が具体化され,それに対し多職種連携で介入したことで生活目標の達成につながった.満足度については,対象者の価値観の違いが改善に至らなかった要因であると思われる.今後は他事業所での実施やサンプルサイズを増やし,対象者の特性や調査内容を踏まえて検証していくことで,MTDLPの更なる発展に寄与することが期待される.