[ON-1-1] 口述発表:地域 1訪問リハビリテーションにおける脳卒中上肢麻痺に対する家族実施型の自主練習と介護負担感について
~1症例での検討~
【はじめに】 脳卒中上肢麻痺に対する,家族参加型の自主練習の有効性についての報告は散見される.その中でも自主練習に関する家族の介護負担について検討している報告は少ない.今回は,要介護認定を受けた生活期脳卒中患者1名に対し,上肢麻痺に対する目標設定および家族参加型の自主練習の提案を実施した.その経過で介護負担感の増大を認めたため,負担感を考慮したアプローチ内容へと変更した.その結果,介護負担感の軽減,上肢機能の改善や目標達成に繋がったため報告する.なお,本発表に際し患者から書面同意を得た.
【症例紹介】 70歳代男性,病前生活は自立.X年Y月Z日脳梗塞発症,Z+166日に回復期病院を退院し,Z+177日に訪問リハビリテーションでの理学療法,Z+236日に作業療法が開始.病前ADLは自立しており,妻と2人で暮らしであった.要介護3であり,週2回,1回60分の訪問リハビリテーションを利用され,理学療法・作業療法が1回ずつであった.
【作業療法評価】 作業療法開始時のBarthel Index(BI)は80点,右上肢の運動麻痺はFugl Meyer Assessment(FMA) 上肢項目は28点,Motor Activity Log(MAL)のAOU 0.2点,QOM 0.2点であった.本人の右上肢に対する希望として「少しでも右手で食事がしたい」が挙げられた.Canadian Occupational Performance Measure(COPM)での遂行度,満足度ともに0点であった.また在宅生活の介護負担について,妻にZalit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)を測定し,22点であった.
【経過】
食事動作獲得に向けて,作業療法時間内に課題指向型練習の実施,また自身で行えるストレッチを指導した.先行研究を参考にし,家族と行える自主練習の指導も行った.2ヶ月後,FMA上肢項目は31点に向上し,徐々に口元へのリーチが可能となり,パンなどのフィンガーフードを毎日の朝食で食べる練習を開始した.一方で,日常生活動作の介助量は軽減したものの,J-ZBIの点数は36点であり,妻の介護負担感が増大し,体調の崩れもみられた.自主練習の協力に関する負担感についてVisual Analogue Scale(VAS) 65㎜であった.症例の自主練習に対する意欲は高く,家族は1日1時間弱,週5回の自主練習にて物品の準備や動作への声かけ,実施回数の管理などを行っていた.以上から日常生活での介護に加え,自主練習の協力が妻の介護負担感の増大に影響したと考察した.介護負担感を軽減できるよう,症例本人が1人で準備や運動を行える環境と練習内容に変更し,妻には食事練習のためのパンを千切るなどの協力のみを依頼した.
【結果】
介入開始から4ヶ月後,フィンガーフードの摂取量は増大し,徐々にフォーク練習などに移行できた.FMAは33点,MALのAOU0.6点,QOM 0.7点と変化し,COPMでの食事動作の遂行度は3点,満足度は2点となった.J-ZBIは21点,自主練習の協力に関する負担感はVAS 10㎜となった. 上肢機能の改善とともに,わずかではあるが食事動作獲得に繋がり,また自主練習の工夫が介護負担感の軽減に関与したと考えられた.一方でMALについては大きな改善が得られず,今後は様々な場面で使用を促す必要性が示唆された.
【考察】
生活期において,要介護者の在宅生活継続にあたり主介護者の身体的・精神的な負担にも配慮が必要であるとされている.本症例においても,家族実施型の自主練習の導入などを行い,上肢機能の向上がみられ,目標達成に近づいたが,アプローチの中で家族の負担感が増大した.そのため在宅での練習を家族に協力を得る際は,家族の介護負担感にも注目する必要性が示唆された.
【症例紹介】 70歳代男性,病前生活は自立.X年Y月Z日脳梗塞発症,Z+166日に回復期病院を退院し,Z+177日に訪問リハビリテーションでの理学療法,Z+236日に作業療法が開始.病前ADLは自立しており,妻と2人で暮らしであった.要介護3であり,週2回,1回60分の訪問リハビリテーションを利用され,理学療法・作業療法が1回ずつであった.
【作業療法評価】 作業療法開始時のBarthel Index(BI)は80点,右上肢の運動麻痺はFugl Meyer Assessment(FMA) 上肢項目は28点,Motor Activity Log(MAL)のAOU 0.2点,QOM 0.2点であった.本人の右上肢に対する希望として「少しでも右手で食事がしたい」が挙げられた.Canadian Occupational Performance Measure(COPM)での遂行度,満足度ともに0点であった.また在宅生活の介護負担について,妻にZalit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)を測定し,22点であった.
【経過】
食事動作獲得に向けて,作業療法時間内に課題指向型練習の実施,また自身で行えるストレッチを指導した.先行研究を参考にし,家族と行える自主練習の指導も行った.2ヶ月後,FMA上肢項目は31点に向上し,徐々に口元へのリーチが可能となり,パンなどのフィンガーフードを毎日の朝食で食べる練習を開始した.一方で,日常生活動作の介助量は軽減したものの,J-ZBIの点数は36点であり,妻の介護負担感が増大し,体調の崩れもみられた.自主練習の協力に関する負担感についてVisual Analogue Scale(VAS) 65㎜であった.症例の自主練習に対する意欲は高く,家族は1日1時間弱,週5回の自主練習にて物品の準備や動作への声かけ,実施回数の管理などを行っていた.以上から日常生活での介護に加え,自主練習の協力が妻の介護負担感の増大に影響したと考察した.介護負担感を軽減できるよう,症例本人が1人で準備や運動を行える環境と練習内容に変更し,妻には食事練習のためのパンを千切るなどの協力のみを依頼した.
【結果】
介入開始から4ヶ月後,フィンガーフードの摂取量は増大し,徐々にフォーク練習などに移行できた.FMAは33点,MALのAOU0.6点,QOM 0.7点と変化し,COPMでの食事動作の遂行度は3点,満足度は2点となった.J-ZBIは21点,自主練習の協力に関する負担感はVAS 10㎜となった. 上肢機能の改善とともに,わずかではあるが食事動作獲得に繋がり,また自主練習の工夫が介護負担感の軽減に関与したと考えられた.一方でMALについては大きな改善が得られず,今後は様々な場面で使用を促す必要性が示唆された.
【考察】
生活期において,要介護者の在宅生活継続にあたり主介護者の身体的・精神的な負担にも配慮が必要であるとされている.本症例においても,家族実施型の自主練習の導入などを行い,上肢機能の向上がみられ,目標達成に近づいたが,アプローチの中で家族の負担感が増大した.そのため在宅での練習を家族に協力を得る際は,家族の介護負担感にも注目する必要性が示唆された.