第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-2] 一般演題:地域 2

Fri. Sep 16, 2022 3:40 PM - 4:50 PM 第4会場 (RoomA)

座長:石井 清志(国際医療福祉大学)

[ON-2-4] 口述発表:地域 2作業療法士の視点から見た多職種連携における良い共通目標に関する質的検討

久世 慎太郎1寺岡 睦2京極 真2 (1吉備国際大学大学院(通信制)保健科学研究科作業療法学専攻修士課程,2吉備国際大学大学院保健科学研究科)

背景と目的
 医療・介護においては,疾病などが複雑化したことにより,多様なニーズに応じる必要がある.そのため,多職種連携が必須である.多職種連携は,専門性を前提に目標を共有し対象者を支援することである.その効果は多岐に渡り,その質を高めることは重要な課題であり,良いリハビリテーションのために重要である.良いリハビリテーションの実践のために,作業療法士は共通目標への貢献が求められる.しかし,作業療法士から見た多職種連携における良い共通目標が成立する条件は明確ではなく,作業療法士が多職種連携における共通目標を設定する方法や,どのような共通目標を良いと捉えるのかは明らかになっていない.
 本研究の目的は,作業療法士が経験する多職種連携における良い共通目標が成立する条件と方法を質的に検討することである.それにより,多職種連携における共通目標の理解が得られやすくなり,良い実践が可能になると期待される.
方法
 本研究のデザインは構造構成的質的研究法,データ分析は事例コードマトリックスを採用した.協力者の3名を関心相関的サンプリング,他2名はスノーボールサンプリングで募った.選定条件は,多職種連携を重視した実践に関連した内容で学会発表,論文執筆の経験がある作業療法士とした.本研究は吉備国際大学の倫理審査承認された(受理番号:20-27).
結果
 協力者は5名であった.インタビュー時間の平均は89.4±14.9分であった.参加者の語りから318の小コードを作成し,その後の分析から35の中コード,12の大コード,4の概念化コードが作成された.4個の概念化コードのうち,【良い共通目標の条件】の大コードは,<チームの方向性の統一>,<日常生活に関連した目標の設定>,<目標の適宜修正>の3つで構成された.中コードは『方向性の統一』などの7で構成された.【多職種連携上の工夫】の大コードは,<連携しやすい多職種の特徴>,<連携促進する環境>,<連携促進するコミュニケーションスキル>の3つで構成された.中コードは,『チーム全体の相互了解』など10で構成された.【作業療法士の工夫】の大コードは,<作業を目標に取り入れる工夫>,<作業療法士による水面下での調整>,<関連した知識>の3つで構成された.中コードは『作業に関連した評価』,など7つで構成された.【共通目標設定時の困難】の大コードは,<共通目標実践上の難しさ>,<機能不全に陥った共通目標>,<作業療法士が感じる共通目標との関わりの難しさ>の3つで構成された.中コードは,『理想的目標設定の難しさ』など11で構成された.
考察
 本研究の目的は,作業療法士の経験する多職種連携における良い共通目標が成立する条件と方法を質的に検討することであった.本研究では,良い共通目標の条件が3つの概念で構成され,方法として作業療法ならびに多職種連携上の工夫が行われていた.また,共通目標設定時に特有の困難さがあった.【良い共通目標の条件】として作業療法士は,条件に合致する形で作業療法理論に沿い,生活に関連し,柔軟に修正できる共通目標の設定することで良い共通目標が成立していると判断していた.そのために作業療法士は,相互了解が進むような【多職種連携の工夫】と,共通目標に対象者の思いと役割を組み込む【作業療法士の工夫】を方法としておこなっていた.しかし,その成立には多くの【共通目標設定時の困難】があり,対象者と作業療法士,多職種との相互了解の難しさを感じていたと考えられた.