第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-2] 一般演題:地域 2

Fri. Sep 16, 2022 3:40 PM - 4:50 PM 第4会場 (RoomA)

座長:石井 清志(国際医療福祉大学)

[ON-2-5] 口述発表:地域 2作業療法士による地域における支援の展望

~OTコンサルテーション参加者の声から~

藤崎 咲子1 (1社会福祉法人翔の会 児童発達支援センターうーたん)

【はじめに】「第三次作業療法5カ年戦略」の重点項目に「共生社会の実現に向けた,地域を基盤とする包括的ケアにおける作業療法の活用促進」と定められている通り,作業療法士には地域における支援への積極的な参画が求められている.2016年にA県学童保育連絡協議会の発信で始まった放課後児童クラブ(以下,学童保育)と作業療法士の連携事業(以下,OTコンサル)は急速に全国へ展開し,感染症拡大による制限の中でも様々な工夫で歩みが進められている.地域支援を行う上では地域のニーズを適切に把握することが重要である.そこで,OTコンサルの実践について作業療法士が地域のどのようなニーズに対応していたのかを分析したところ,若干の知見を得られたので報告する.なお,本研究は2021年度日本社会事業大学専門職大学院実践課題研究報告を再度まとめたものである.報告者はOTコンサルの場に参加しておらず,開示すべきCOIはない.
【目的】OTコンサルにおける作業療法士の視点とアプローチ実態を調査し,その構造と効果の分析から地域における支援の展望について考察する.
【方法】OTコンサルに参加経験のある学童保育支援員等(以下,支援者)4名と作業療法士8名に対し,個別またはグループでのオンラインインタビューを実施した.インタビュー内容を逐語化し,コードに分類して質的に分析した.研究に協力しない場合や中止による不利益を受けないこと,個人情報の取り扱いについて,同意の撤回について,録音すること,オンライン利用についてPDFを提示し口頭で承諾を得た.
【結果】支援者インタビューからは3個の大カテゴリ,10個の小カテゴリ,47個のコードが抽出された.また作業療法士インタビューからは,4個の大カテゴリ,11個の小カテゴリ,74個のコードが抽出された.以下に,小カテゴリを<>,コードを[]で示す.支援者のニーズは<児のニーズ>に加え[支援のスキルアップ]などののニーズ>,[集団保育の中で個別性を出すこと]という<環境が抱えるニーズ>,<学童保育全体のニーズ>の4個に分類された.作業療法士の視点は<児に対する専門的視点>に加え[支援者の実践の振り返りと言語化を促す]などの<支援者支援の視点>と[クラブが抱える問題への対処を検討する]などの<学童保育全体への視点>に分類された.作業療法士が行なったこととして<[対等な関係性で接する/支援者の気持ちに共感する態度を取る/支援者に伝わるように表現や方法を工夫して伝える]などの<姿勢と態度>が抽出された.
【考察】OTコンサルが行われる第一の目的は,学童保育を利用する児童の困った行動に対する医療専門職としてのアプローチである.しかし実際には人的・物的な環境と,学童保育で行われる作業である「生活と遊び」を含めた環境因子全体に関する多角的なアセスメントが行われ,作業療法士の職能のひとつである<姿勢と態度>を活用して支援者のニーズを受け止めていた.そして環境因子を通じた間接的なアプローチの効果が,学童保育の場に存在する各因子をつなぐ役割になったことが事業の効果につながっていたと考えられた.OTコンサルは,既存の知識や制度では解決できなかった支援者のニーズを作業療法士の視点で受け止めて行われた包括的アプローチであり,地域生活の場には潜在的に,作業療法士が関わる必要性,つまり作業療法ニーズが存在していたことが示唆された.今後は地域の他領域においても同様の構造がみられるかどうかを調査し,作業療法士が地域のニーズを把握した上でその専門性を発揮し,人々のwell-beingへ寄与していく方法を示していけるよう取り組んでいきたい.