[ON-4-1] 口述発表:地域 4介護者の抑うつ症状を誘発する高い介護負担感と関連する要因の組み合わせ
【序論】
訪問リハビリテーションでは対象者のみならず,家族介護者の介護負担や精神状態に気を配ることも非常に重要となる.介護者の抑うつ症状を誘発する介護負担感について,Araiらは日本語版Zarit介護負担尺度短縮版(J-ZBI_8)13点が基準になることを報告している(Arai et al, 2014).演者らはこれまでに同基準を超える負担感と関連するADL項目を調査し,対象者の移乗,移動,更衣,排便自制,排尿自制の自立度が関連すること,そしてそのなかでも排尿自制項目は,介護者のJ-ZBI_8が13点以上であるケースと12点以下であるケースの鑑別能が最も高く,Barthel indexで10点/5点がカットオフ値になることを報告してきた(大橋ら,第54・55回日本作業療法学会).しかし,これまでの報告は主に高い介護負担感と関連する独立した要因の検出およびその影響力の算出に焦点が当てられ,複数要因が重なる影響を検討した報告はほとんど見当たらない.
【目的】
本研究の目的は,介護者の抑うつ症状を誘発する高い介護負担感と関連要因の組み合わせを明らかにすることである.本研究結果は,作業療法士が介護者の介護負担感を考慮して,どのADLを優先して介入すべきかという判断を下す際の有用な知見とともに,抑うつリスクのある介護者の検出に役立つと考えられる.
【方法】
本研究は後方視的観察研究である.対象は訪問リハビリテーションの利用者(要介護者)とその主介護者50組とした.要介護者の情報として年齢,性別,基礎疾患,ADL自立度(Barthel Indexの各項目と総得点)を収集した.主介護者からはJ-ZBI_8の得点を収集した.評価は理学療法士または作業療法士が実施した.なお本研究は演者の所属機関の倫理審査委員会において承認されている.
分析は高負担感と関連する要因の組み合わせを明らかにするため決定木分析を行った.独立変数は要介護者の年齢,性別,基礎疾患,要介護度,Barthel Index(BI),従属変数は高負担感(J-ZBI_8が13点以上)/低負担感(J-ZBI_8が12点以下)とした.決定木の分類の基準にはGini Indexを用いた.決定木の過学習を防止するため,コスト複雑度枝刈り(±1SE)を行い,分析前の群(親ノード)の最小の事例数を10,分析後の群(子ノード)の最小の事例数を3と定めた.統計ソフトはSPSS Statistics version 25(IBM)を用い,有意水準は5%未満とした.
【結果】
決定木分析では,第一層にBI排尿自制(5点以下と10点)が選択された.第二層ではBI排尿自制5点以下のグループで,要介護者年齢(78歳以下と79歳以上)が選択され,BI排尿自制5点以下かつ要介護者年齢78歳以下の介護者の85.7%が高負担感であった.決定木の正分類率は90.0%であった.
【考察】
本研究から,要介護者のBI排尿自制が5点以下かつ年齢が78歳以下の2つの要因を満たした場合に,介護者は抑うつ症状が誘発される水準の介護負担感を抱えている割合が非常に高いことが明らかになった(本研究では85.9%).本研究で作成された決定木は一定の精度で抑うつリスクの高い介護者を検出できる可能性がある.一方,本研究では介護者側の要因(年齢,性別,要介護者との続柄や関係性,健康状態,介護時間など)を考慮できていないこととサンプルサイズが不十分であることから,結果の一般化のためには今後の検討が必要である.
訪問リハビリテーションでは対象者のみならず,家族介護者の介護負担や精神状態に気を配ることも非常に重要となる.介護者の抑うつ症状を誘発する介護負担感について,Araiらは日本語版Zarit介護負担尺度短縮版(J-ZBI_8)13点が基準になることを報告している(Arai et al, 2014).演者らはこれまでに同基準を超える負担感と関連するADL項目を調査し,対象者の移乗,移動,更衣,排便自制,排尿自制の自立度が関連すること,そしてそのなかでも排尿自制項目は,介護者のJ-ZBI_8が13点以上であるケースと12点以下であるケースの鑑別能が最も高く,Barthel indexで10点/5点がカットオフ値になることを報告してきた(大橋ら,第54・55回日本作業療法学会).しかし,これまでの報告は主に高い介護負担感と関連する独立した要因の検出およびその影響力の算出に焦点が当てられ,複数要因が重なる影響を検討した報告はほとんど見当たらない.
【目的】
本研究の目的は,介護者の抑うつ症状を誘発する高い介護負担感と関連要因の組み合わせを明らかにすることである.本研究結果は,作業療法士が介護者の介護負担感を考慮して,どのADLを優先して介入すべきかという判断を下す際の有用な知見とともに,抑うつリスクのある介護者の検出に役立つと考えられる.
【方法】
本研究は後方視的観察研究である.対象は訪問リハビリテーションの利用者(要介護者)とその主介護者50組とした.要介護者の情報として年齢,性別,基礎疾患,ADL自立度(Barthel Indexの各項目と総得点)を収集した.主介護者からはJ-ZBI_8の得点を収集した.評価は理学療法士または作業療法士が実施した.なお本研究は演者の所属機関の倫理審査委員会において承認されている.
分析は高負担感と関連する要因の組み合わせを明らかにするため決定木分析を行った.独立変数は要介護者の年齢,性別,基礎疾患,要介護度,Barthel Index(BI),従属変数は高負担感(J-ZBI_8が13点以上)/低負担感(J-ZBI_8が12点以下)とした.決定木の分類の基準にはGini Indexを用いた.決定木の過学習を防止するため,コスト複雑度枝刈り(±1SE)を行い,分析前の群(親ノード)の最小の事例数を10,分析後の群(子ノード)の最小の事例数を3と定めた.統計ソフトはSPSS Statistics version 25(IBM)を用い,有意水準は5%未満とした.
【結果】
決定木分析では,第一層にBI排尿自制(5点以下と10点)が選択された.第二層ではBI排尿自制5点以下のグループで,要介護者年齢(78歳以下と79歳以上)が選択され,BI排尿自制5点以下かつ要介護者年齢78歳以下の介護者の85.7%が高負担感であった.決定木の正分類率は90.0%であった.
【考察】
本研究から,要介護者のBI排尿自制が5点以下かつ年齢が78歳以下の2つの要因を満たした場合に,介護者は抑うつ症状が誘発される水準の介護負担感を抱えている割合が非常に高いことが明らかになった(本研究では85.9%).本研究で作成された決定木は一定の精度で抑うつリスクの高い介護者を検出できる可能性がある.一方,本研究では介護者側の要因(年齢,性別,要介護者との続柄や関係性,健康状態,介護時間など)を考慮できていないこととサンプルサイズが不十分であることから,結果の一般化のためには今後の検討が必要である.