第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-4] 一般演題:地域 4

2022年9月17日(土) 11:20 〜 12:20 第3会場 (Annex2)

座長:中本 久之(帝京平成大学)

[ON-4-2] 口述発表:地域 4訪問作業療法で作業療法学生が作製した自助具を活用し活動性の向上を認めた事例

大津留 幸代1五十嵐 千代子2下田 晴美1 (1大泉訪問看護ステーション,2日本リハビリテーション専門学校)

【はじめに】今回訪問看護ステーションにおける訪問作業療法(以下訪問OT)にて利用者に生活行為向上マネジメント(以下;MTDLP)の一部である興味・関心チェックシート,生活行為聞き取りシートを実施した.また,新型コロナウィルス感染症の影響による実習代替授業の一つとして,訪問OT利用者に作業療法学生(以下;学生)がzoomでのインタビュー等を通して自助具の作製を行った.その結果,利用者の目標達成と満足度の向上を認めたので報告する.
【倫理的配慮,説明と同意】個人が特定できないよう配慮した.本研究において家族と本人に説明と同意を得た.
【目的】MTDLPの活用を考える.学生と訪問OTの関わり方を考える.
【方法】MTDLPの興味・関心チェックシート,生活行為聞き取りシートを実施し,生活行為の目標,合意目標を設定した.目標達成には自助具が必要であり,学生に作製を依頼した.学生にはオンライン授業にて症例紹介をした後,訪問OT時に学生と利用者がzoomで対談した.学生が作製した自助具を職場に郵送してもらい,30個程度の自助具を訪問OT時にOTRと利用者・その家族と一緒に使用・検討した.生活行為目標の再評価を実施した.
【事例紹介】A氏60歳代男性,妻,息子と3人暮らし.性格はおおらか.X年原付バイクを運転中転倒,A病院にて頚髄不全損傷(C3/4)・痙性四肢麻痺と診断され保存的加療となる.B病院回復期リハを経て自宅退院,現在X+6年が経過,訪問PT,OT,マッサージ,ヘルパー(散歩)各1回/週,訪問看護1回/月介入中である.基本動作は左側の寝返りは困難,起居・立ち上がり・屋内外フリーハンド歩行自立.屋外歩行は15分程度自立,動作時痙性が強くなり,感覚はTh10以下での鈍麻,過敏さなどを認める.FIM105点,食事・排泄自立,更衣・入浴介助.
【結果】興味チェックリストはX+1年に実施しており,今回再度実施した.今回は「している」「興味がある」と答えた項目が増えた一方で,「してみたい」と答えた項目は著しく減少した.生活行為聞き取りシートでは,目標1「ポジティブ思考で生活すること」実行度5/10,満足度6/10 目標2「楽しい生活を見つけ出すこと」実行度5/10,満足度3-4/10であった.合意目標は①缶飲料やペットボトルを好きなときに開けて飲むことができる②歯磨き粉を口で舐めることなく歯磨きができる とした.①②の達成方法として学生に自助具作製を依頼し,それをA氏が評価することが学生教育になることを説明すると「そういうふうに社会の役に立つこともできるんだね」と発言があった.作製された自助具にコメントをしたいというご家族の希望を受け,丁寧に評価を実施し,目標①②とも達成した.再評価では生活行為目標1:実行度7/10満足度7/10,目標2:実行度8/10満足度6/10と向上を認めた.その後,レスパイト入院で以前は看護師に開けてもらっていた缶コーヒーを自助具を利用し自分で開けて飲むことができた.
【考察】興味チェックリストの結果からは,今の身体では自分のやりたいことをあきらめざるを得ないことが推測された.普段は遠出ができず,人との交流も少なめだがzoomを利用することで学生と交流することができた.また,学生教育に貢献するという社会に役立つ体験につながった.MTDLP一部シートを利用することで利用者・家族から生活についての具体的な要望を聞き取ることができ,できる活動を増やすことにつながった.