第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-4] 一般演題:地域 4

Sat. Sep 17, 2022 11:20 AM - 12:20 PM 第3会場 (Annex2)

座長:中本 久之(帝京平成大学)

[ON-4-3] 口述発表:地域 4病棟に勤務する若手作業療法士が訪問リハビリテーションに抱く認識

~計量テキスト分析による構造の把握~

若松 來夢12石橋 裕2齊藤 雄一郎3坂本 泰平24 (1IMS(イムス)グループ 西八王子病院リハビリテーション科,2東京都立大学人間健康科学研究科 作業療法科学域,3IMS(イムス)グループ イムス札幌内科リハビリテーション病院リハビリテーション科,4医療法人社団哺育会 浅草病院リハビリテーション科)

【はじめに】地域での作業療法展開に向けて,日本作業療法士協会(2013,2018)はまず5割の作業療法士(以下,OT)を地域へ配置し,次にそのOTを地域への参加に向け育成することを第二次・第三次作業療法5カ年戦略に明示している.しかし介護保険領域で働くOTは現状2割程度に留まっている.(日本作業療法士協会,作業療法白書,2015)臨床場面でも地域や介護保険領域に従事するために,経験年数を積むことが必要という声を耳にすることは少なくないが,実際に若手OTが訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)にどのような認識を抱いているか明らかにした報告は見当たらない.本研究は,病棟に勤務する若手の作業療法士(経験年数1~2年)が訪問リハに抱く認識をインタビュー調査し,計量テキスト分析(KH-coder)を用い訪問リハに抱く認識について明らかにすることを目的とする.本研究により,若手OTが抱く認識を明らかにすることで,地域連携や地域に若手作業療法士が参加するための課題の示唆を得て今後の訪問リハの一助となることを期待する.尚,対象者には事前に説明し書面にて同意を得た.またイムス札幌内科リハビリテーション病院倫理審査委員会にて承認を得た
【方法】2020年11月10,17日に臨床経験1〜2年目の若手作業療法士に対し,半構造化面接を実施した.質問内容は1.院内の訪問リハを依頼する際に難しいと感じたことがあるか,2.訪問リハの対象となる人はどの様な人だと思うか,3.訪問リハを依頼する際の流れについて説明できるか,4.地域で生活するために必要な支援はどういうことか,また訪問リハで支援して欲しいことはどのようなことかという内容とした.インタビュー内容の分析はテキストマイニング手法を採用し,データの分析にはKH-Coder Ver.3を使用した.手順としてインタビュー内容をExcelデータ化し,前処理を行った.強制抽出語は「訪問リハビリ」とし,感嘆詞は使用しない設定とした.各質問毎に語の共起性を中心に主題を抽出しカテゴリー化した.さらに階層的クラスター分析を補足的に用いOT2名でカテゴリーの区分けを行なった
【結果】13名(1年目8名,2年目5名)の若手OTに対し,インタビューを実施した.共起ネットワークの分析では質問1は3つ,質問2は6つ,質問3は2つ,質問4は5つのカテゴリーに分類された.主な内容として,質問1:訪問リハスタッフへの申し送りで伝える部分,訪問リハスタッフとのコミュニケーション,担当を申し送る難しさ,質問2:実際の環境で発見する課題の多さ,ADLの未評価の部分,外出訓練での評価,実際の環境での評価,自宅退院する患者の課題,家事などI ADLの支援,質問3:患者や家族への訪問リハの説明,訪問リハ利用開始までの院内の流れ,質問4:院内では評価できない課題,患者が不安を感じる課題,生活に対するOTの思い,リハの課題や目標,終了の可否.前述のような内容が具体的な内容として挙げられた.
【考察】経験年数の浅い若手OTは訪問リハの利用や依頼に関して,システムなどのハード面の難しさや,対象者選定や申し送りなどソフト面の難しさの両面を抱えていることが示唆された.相談相手として,挙げられていた相手も様々であったことから,経験年数が浅いOTであっても訪問リハなどの地域資源につなげることができるような仕組みを作っていく必要性がある.