[ON-6-2] 口述発表:地域 6COVID-19流行下における地域高齢者の余暇活動の制限と生きがいとの関連
~横断研究(後方視調査)~
【背景と目的】コロナ禍の自粛生活により高齢者の余暇活動は制限されている(著者ら,2022予定).余暇活動は「作業」の大領域であり(CAOT,1997),余暇活動や社会活動は高齢者の健康や幸福に影響を与え(Iwasaら,2018/木村ら,2020),その適切な実現は作業療法の重要な役割である.しかし,コロナ禍における活動制限と精神健康との関連は十分に明らかにはなっていない.そこで本研究では,コロナ禍の自粛生活により引き起こされた地域高齢者の余暇活動の制限と生きがい感にはどのような関係があるのかを明らかにすることを目的とした.
【方法】茨城県の地域高齢者498名を対象に郵送法調査を実施し,本人回答の365部を分析対象とした(回収率73.3%).調査時期は2021年10月1日から約2週間で,日本でのコロナ第5波がほぼ終息した時期であった.「現代高齢者版余暇活動尺度」を使用し,現在に加えて,コロナ禍以前(2020年2月以前)の状況について後方視的に回答を求めた.11種の活動について各4件法で回答したものを集計し,現在と以前の値から変化量を算出した(-1以下=活動制限あり).生きがいの測定は生きがい意識尺度(Ikigai-9)を使用し,余暇活動の各変化量とIkigai-9の相関分析を行った.本研究は所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.倫理規定に則り,個人情報の保護や研究同意手続きを行った.
【結果】研究参加者は365名(女性280名,76.7%),平均年齢77.1±4.6歳,範囲64-90歳であった.以前からその活動を行っていない者を除いた各活動状況の変化とIkigai-9の相関(Spearmanの順位相関)は以下の通りであった.注)女前=女性65-74歳(n=96),女後=女性75歳以上(n=183),男後=男性75歳以上(n=79)
①電子機器の利用 :女前(rs=-.081, p=.486), 女後(rs= .136, p=.138), 男後(rs= .248, p=.046)
②地域・社会活動 :女前(rs= .010, p=.925), 女後(rs= .044, p=.593), 男後(rs= .334, p=.006)
③友人との交流 :女前(rs=-.046, p=.668), 女後(rs= .132, p=.101), 男後(rs= .254, p=.034)
④運動 :女前(rs=-.011, p=.921), 女後(rs=-.117, p=.149), 男後(rs= .080, p=.516)
⑤学習活動 :女前(rs=-.042, p=.697), 女後(rs= .094, p=.248), 男後(rs= .226, p=.060)
⑥文化的活動 :女前(rs=-.215, p=.070), 女後(rs= .020, p=.811), 男後(rs= .300, p=.019)
⑦旅行 :女前(rs= .054, p=.625), 女後(rs=-.003, p=.966), 男後(rs= .298, p=.014)
⑧創作芸術活動 :女前(rs= .127, p=.312), 女後(rs= .174, p=.055), 男後(rs= .157, p=.252)
⑨植物の世話 :女前(rs= .209, p=.054), 女後(rs= .050, p=.536), 男後(rs= .287, p=.018)
⑩独りで行うゲーム:女前(rs=-.156, p=.204), 女後(rs=-.025, p=.774), 男後(rs= .307, p=.017)
⑪対人で行うゲーム:女前(rs=-.033, p=.851), 女後(rs=-.017, p=.885), 男後(rs= .181, p=.181)
【考察・結論】余暇活動の変化量とIkigai-9は全般的に正の相関関係であった.つまり,活動制限が強い人ほど,生きがい感は不良な傾向にあることが明らかとなった.また,その程度(影響)は男性の方が女性よりも強い傾向にあった.男性は女性よりも,余暇活動の制限に対して適応的・代償的な対処が上手く行えていない可能性が示唆される.本知見は感染症流行下における地域高齢者の余暇活動の制限に対して,その適切な実現を図るOT介入の基礎疫学的根拠の一つとなる.
【方法】茨城県の地域高齢者498名を対象に郵送法調査を実施し,本人回答の365部を分析対象とした(回収率73.3%).調査時期は2021年10月1日から約2週間で,日本でのコロナ第5波がほぼ終息した時期であった.「現代高齢者版余暇活動尺度」を使用し,現在に加えて,コロナ禍以前(2020年2月以前)の状況について後方視的に回答を求めた.11種の活動について各4件法で回答したものを集計し,現在と以前の値から変化量を算出した(-1以下=活動制限あり).生きがいの測定は生きがい意識尺度(Ikigai-9)を使用し,余暇活動の各変化量とIkigai-9の相関分析を行った.本研究は所属機関の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した.倫理規定に則り,個人情報の保護や研究同意手続きを行った.
【結果】研究参加者は365名(女性280名,76.7%),平均年齢77.1±4.6歳,範囲64-90歳であった.以前からその活動を行っていない者を除いた各活動状況の変化とIkigai-9の相関(Spearmanの順位相関)は以下の通りであった.注)女前=女性65-74歳(n=96),女後=女性75歳以上(n=183),男後=男性75歳以上(n=79)
①電子機器の利用 :女前(rs=-.081, p=.486), 女後(rs= .136, p=.138), 男後(rs= .248, p=.046)
②地域・社会活動 :女前(rs= .010, p=.925), 女後(rs= .044, p=.593), 男後(rs= .334, p=.006)
③友人との交流 :女前(rs=-.046, p=.668), 女後(rs= .132, p=.101), 男後(rs= .254, p=.034)
④運動 :女前(rs=-.011, p=.921), 女後(rs=-.117, p=.149), 男後(rs= .080, p=.516)
⑤学習活動 :女前(rs=-.042, p=.697), 女後(rs= .094, p=.248), 男後(rs= .226, p=.060)
⑥文化的活動 :女前(rs=-.215, p=.070), 女後(rs= .020, p=.811), 男後(rs= .300, p=.019)
⑦旅行 :女前(rs= .054, p=.625), 女後(rs=-.003, p=.966), 男後(rs= .298, p=.014)
⑧創作芸術活動 :女前(rs= .127, p=.312), 女後(rs= .174, p=.055), 男後(rs= .157, p=.252)
⑨植物の世話 :女前(rs= .209, p=.054), 女後(rs= .050, p=.536), 男後(rs= .287, p=.018)
⑩独りで行うゲーム:女前(rs=-.156, p=.204), 女後(rs=-.025, p=.774), 男後(rs= .307, p=.017)
⑪対人で行うゲーム:女前(rs=-.033, p=.851), 女後(rs=-.017, p=.885), 男後(rs= .181, p=.181)
【考察・結論】余暇活動の変化量とIkigai-9は全般的に正の相関関係であった.つまり,活動制限が強い人ほど,生きがい感は不良な傾向にあることが明らかとなった.また,その程度(影響)は男性の方が女性よりも強い傾向にあった.男性は女性よりも,余暇活動の制限に対して適応的・代償的な対処が上手く行えていない可能性が示唆される.本知見は感染症流行下における地域高齢者の余暇活動の制限に対して,その適切な実現を図るOT介入の基礎疫学的根拠の一つとなる.