第56回日本作業療法学会

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一般演題

地域

[ON-6] 一般演題:地域 6

Sat. Sep 17, 2022 1:50 PM - 3:00 PM 第3会場 (Annex2)

座長:河野 眞(国際医療福祉大学)

[ON-6-4] 口述発表:地域 6長期化するCOVID-19パンデミック下における精神的健康状態と生活満足度の関連

~第1回と第3回緊急事態宣言下での横断的調査~

田原 正俊12猿爪 優輝1高橋 香代子13 (1北里大学大学院医療系研究科感覚・運動統御医科学群リハビリテーション科学,2済生会東神奈川リハビリテーション病院リハビリテーションセラピスト科,3北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【はじめに】2019年12月よりCOVID-19は感染者の増減を繰り返しており,人々の生活は長期的に制限を受け,精神的健康状態への影響が懸念される.その長期的な制限による影響や危険因子は経時的に変化していくと考えられ,それらの検証はまだ十分ではない.本研究では医療従事者を対象に第1回目の緊急事態宣言中と1年後の第3回目の緊急事態宣言中に横断的な調査を実施し,感染症蔓延下での精神的健康状態と生活満足度の長期的な影響を検証したため報告する.
【方法】Webアンケート(Google form)を用いたスノーボールサンプリングによる連続的横断調査であり,期間1が2021年4月30日から7日間,期間2が2022年4月29日から21日間とした.取り込み基準は常勤の医療従事者とした.北里大学医療衛生学部の倫理員会での承認(#2020-026)を受けている.調査項目は,年齢,性別,婚姻歴,同居する子供の人数,同居人数,居住地,職種,雇用形態,職業領域,家族及び友人とのコミュニケーションの頻度,経済状況とした.加えて,精神的健康状態の項目として,General Health Questionnaire-12(GHQ-12)を用い,4点をカットオフ値(Goldberg DP, 1998)とした.また,健康状態について“全く健康ではない:1点”〜“とても健康である:10点”,COVID-19への感染に対する不安感を“全く不安ではない:1点”〜“とても不安である:10点”の10件法で調査した.さらに,日常生活の満足度について仕事,余暇,日常生活,自粛期間中に新たに始めた活動の各項目に関して“全く満足ではない:1点”〜“とても満足である:10点”の10件法で調査した.分析方法は,一般情報とGHQ-12,健康状態,COVID-19への感染に対する不安感,生活の満足度の各調査項目の記述統計量を算出し,GHQ-12のカットオフ値以上を精神的健康状態悪化群としてその割合を算出した.また期間1と期間2の各項目をマンホイットニーのU検定を用いてその差を検証した.加えて,GHQ-12のカットオフ値をもとに期間2の各調査項目の変数を投入したロジスティック回帰分析を用い,オッズ比と95%信頼区間を算出した.いずれも危険率は5%(p<0.05)とした.
【結果】期間1は661/801名,期間2は216/221名の有効回答を得た.記述統計は期間1と期間2それぞれの平均年齢は31.6±7.9歳,33.0±8.6歳,女性が354名,122名,平均経験年数は9.0±6.8年,9.8±7.0年,作業療法士が507名,162名であった.また,期間1でのGHQ-12のカットオフ値以上は440/661名,期間2では139/216名であった.各調査項目の比較はCOVID-19への不安感,仕事の満足度,余暇の満足度,日常生活の満足度に統計学的有意差を認め,期間2が期間1と比べて改善していた.
 期間2でのロジスティック回帰分析の結果,保護因子は“健康状態が良好”(odds ratio (OR),0.79: 95% confidence interval (CI). 0.63-0.98; p=0.03),“余暇の満足度が高い”(OR, 0.73;95% CI, 0.61-0.88; p=0.001),“仕事の満足度が高い”(OR, 0.71; 95% CI, 0.58-0.87;p=0.001),”経済的に余裕がある” (OR, 0.53; 95% CI, 0.29-0.95; p=0.034)であり,リスク因子は ”COVID-19 への感染の不安感が高い ” ( OR, 1.22; 95% CI, 1.03-1.44;p=0.019),”婚姻していること” (OR, 2.13; 95% CI, 1.05-4.33; p=0.037)であった.
【考察】第1回目の緊急事態宣言と比較し,第3回目では生活の満足度や不安感は改善しており,初回の宣言発出時は内的,外的な行動自粛の効力が強かったと考えられる.また,経済状況の悪化や婚姻がリスク要因に上がったことから,長期的下することでのリスク要因があることが示唆された.